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近衛第三軍

 シーバス軍団長は歴戦の戦士である。ペルセウス侯爵に引き上げられたとはいえ、その実力は一軍の将として見劣りのするものではなかった。ゆえに今の異変にもすぐに気が付いていた。


「軽い......」


 シーバスはぼそりと呟いた。


「は?」


 隣にいた参謀が思わず聞き返した。


「軽いといったのだ」


「と? 言いますと?」


「わからんか?」


「はあ......」


 参謀の気のない返事にシーバスは思わず頭が痛くなってしまう。


(新参の、しかもコネの軍団長......やはり士気は上がらんか......)


 シーバスはごほんっと咳払い一つ、自分の意図を話し始めた。


「相手は歴戦の将、シリウス公爵だ。全盛期を過ぎたとはいえ、将としての実力はわが国でも10指に入る。にもかかわらず攻勢が弱すぎるということだ」


「こちらの方が数が多いのですから、慎重になっているのでは? それに同郷同士の戦いということもありますし」


 参謀の皮肉にシーバスは眉をピクリとひそめる。だが、ここで何か言っても仕方がなかった。シーバスたちが前軍団長と比べて実力が劣るのも、正規の手段ではない方法で今の地位にいるのも事実なのだから。シーバスは気を取り直して説明を続けた。


「序盤の、数の差が少ない今だからこそ、差を縮めておく必要がある。妃殿下もシリウス公爵もそこに気付いていないはずがない。何か策があるはずだ......」


「と、言われましても、我々第三軍が突撃屋なのはご存じでしょう? 細かいことを気にすることのできる連中ではないですよ?」


「分かっている......だが......」


「急報ー-! 急報ー---!」


 シーバスが敵の狙いについて考え込もうとした瞬間、その一報はもたらされた。


「何事か?」


 シーバスが聞くと、伝令は肩で息をしながら報告した。


「はっ! 敵最前線にミネビア第一王女、並びにシリウス公爵の姿在り! 縦横無尽に剣を振るっているため、我が軍の損害は甚大です!」


「なに!? そんな馬鹿な!? こんな序盤で総大将が最前線で戦うはずがあるか!? 影武者ではないのか?」


「し......しかし、公爵はともかく、あのような大剣を戦場で振るう女性が妃殿下の他にそう多くいるとは.......」


「う......ううむ......」


 シーバスは珍しく考えがまとまらなかった。このような状況は完全に想定外だった。


(これが策か罠には違いない。だがその真意は測りかねる。他に何か動きがあるのか、それともこうやって考え込んでいる間になるべく我が軍の兵数を減らすのが目的か......)


 シーバスの決意を固めさせたのも、また別の伝令からの一報であった。


「伝令! アメリア軍団長! 兵3千を残し、兵2千でもって我らとともに挟撃を行う構えです!」


「ぬう......アメリアめ。手柄に貪欲な女だ......このままではいい所をすべてあの女に取られてしまうか......よしっ!」


 シーバスは意を決して立ち上がった。軍団長のマントを翻し、手を前方に突き出して本陣の将軍たちに号令した。


「全軍突撃だ! 本陣に300の兵を残し、予備兵も含めて攻勢に転じる。妃殿下は殺すなよ? 必ず捕えて陛下にお渡しするのだ!」


 例えいけ好かない軍団長であろうと、正式に認められた上官である。職業軍人である近衛兵たちは「はっ!」と命令を受けて突撃の準備をし始めた。


 戦が序盤で動き出し、慌しく第三軍が準備に入ったころ、それを見守るものたちがいた。第三軍の本陣の真横にある小さな森から、烈たちが注意深くその様子を伺っていたのであった。

登場人物紹介


★立花烈 (レツ・タチバナ)

本作の主人公。ある日、亡き妹の姿を追って、異世界に迷い込んだ少年。齢は18。黒い髪に、高い身長が特徴。実家が古流剣術の道場であり、そこで厳しく育てられたため、剣術の腕は比類なきものとなっている。なにやら暗い過去があるようだが、それについては口を閉ざしている。


★ミア・キャンベル

烈が異世界で目覚めてから初めて出会った少女。齢は18。赤髪に金色の眼、烈と同じくらいの高身長で、身の丈もある、幅広のバスターソードを軽々と振るう。その正体はドイエベルンの王女『ミネビア・アーハイム・キャンベル・ロンバルト』。実兄である現国王と、その腹心のペルセウス侯爵の専横を打倒するために奮闘している。『紅雌虎』の異名を持つ。


★ラング

烈とミアがバリ王国の山賊を退治した時に出会った男。齢は20。金髪で小麦色の肌を持ち、ノリもよく、いわゆるモテる男なのだが、何か秘密があり謎めいている姿も持つ。剣の腕は我流だが一流。


★ルル

モニカ王国の元王女。齢は13~14くらい褐色、黒髪の美少女。モニカ王国がバリ王国に滅ぼされ、奴隷に身をやつしていたところを、烈に解放されたため、その恩返しのために共に旅をしている。元々は『軍破弓』の異名を持つほどの弓の達人で、200m先の敵将を正確に射抜くことができる実力の持ち主。

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