レイアお嬢様
地下牢に到着し、最初に感じたのは、湿気と鼻をくすぐるかび臭さだった。薄暗い部屋で物音も聞こえず、冷たい空気が肌をひやりとさせる。あまりいい環境とは言えないようであった。
烈たちは各々柱などの物陰に隠れながら、地下牢の気配を探った。奥の方に三人の気配を感じた。二つは見張りのようだった。強い気配を感じる。そしてその向こうで小さな気配が一つ。恐らくそれがレイアお嬢様だろう。
ラングが指で合図を送ってきていた。ラングも同じ気配を悟ったらしい。呼吸を合わせて、突っ込むぞということらしい。だが、ここでもラフィが意外な動きを見せた。
「あ、おい!」
ラングが小声で制止した時にはもう遅かった。たったったっといつものペースでラフィが見張りの二人に駆け寄っていく。
「すみませ~ん」
「なんだ! てめえは!」
見張りの二人が一瞬で警戒体勢をとった。
「ちょっとちょっと、待ってくださいよ。ゼス様から伝言があるんですよ」
「伝言?」
「はい、これからパバルの城に攻め込むから、そこのお嬢様を殺せって」
「本当か? そんな話はこっちに来てないぞ?」
「そりゃさっき僕らが直接言われたんですから。なんだったら確認しに行ってもいいですよ?」
見張りの一人が訝しげにラフィのことを見つつ、目線でもう片方に合図を送った。もう一人の見張りはこくりと頷くと、確認のために走り出そうとした。
その時であった。ラフィの横を通り過ぎようとした見張りの首を、ラフィは電光の如き速さでナイフを取り出し後ろから突き刺した。もう一人の見張りが慌てて剣を抜こうとした。しかし、ラフィは返す刀でナイフを逆手に持ち、見張りの首筋を掻き切った。見張りは声を上げようとしても、自分の血で溺れて声が出ない。がはっと血を吐き、膝から崩れ落ちて倒れた。
血だまりの中で、ラフィがラングたちに手を振った。
「もういいよ~」
あまりにも早業だったので、烈たちは茫然としていた。
「なあ、早くしなくていいの~」
烈たちはその指摘にはっとさせられた。そして急いで駆け寄り、倒れた見張りの体を改めた。牢屋の鍵を見つけなければいけなかったからだ。
「ラフィ。お前強かったんだな」
「烈にはそんな風に見えなかった?」
「ああ、修行が足りないな。雰囲気に騙されたよ」
「ふっふっふ~、なら大成功かな~」
あっけらかんと笑うラフィに空恐ろしいものを感じつつ、烈たちは鍵を見つけて、ガチャリと地下牢の扉を開けた。
中には憔悴しきっているのか、動けなくなっている女性が一人いた。烈は慎重に抱え起こした。
「ラフィ、この人が?」
「うん、レイアお嬢様だね。式典で見たことある人だよ」
「よし、お嬢様大丈夫か?」
烈が声を掛けると、レイアはうっすらと目を開けた。暴行などの様子はなかったが、劣悪な環境に置かれていたためであろう。きれいな金髪はぼさぼさに乱れ、頬は痩せこけていた。軽い脱水症状も起こしているみたいだった。
「あ、あなたたちは?」
かすれる声でレイアが返事をした。
「俺たちはミアの頼みで君を助けに来たんだ」
「み...あ...?」
「あー、えーっとー、ミネビア?王女だ」
「ミネビア様!?」
先ほどまで憔悴しきっていて、ぐったりとしてた少女が突如としてがばりと起きた。そして、烈の肩をがっしりと掴み鬼気迫る表情で聞いてきた。
「殿下は! 殿下はご無事なの!!?」
「あ、ああ。パバルの城から今こちらへ向かっているところだ」
「ああ、よかった、殿下。ご無事でいると信じていました」
そう言うと、レイアは両手を組んだまま、ぱたりとまた気を失った。烈は慌ててレイアの体を支える羽目になった。
安心したのか、すうすうと寝息を立てる剛胆なレイアの様子に、烈たちは驚いて顔を見合わせるのだった。
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