潜入するネズミ
ザネの砦に出発する前に、城門で烈たちはシリウス公爵から声かけられた。
「ちょっと待ってくれ。君たちはレイアの顔や姿を知っているのか?」
烈とラングとルルの三人は顔を見合わせた。勿論、知っているものなどいるわけがない。シリウス公爵は目を見開いて言った。
「ど......どうやってレイアを救い出す気だったんだ?」
三人を代表して、烈が答えた、
「いや......行けばどうにかなるかな? と」
シリウス公爵の額に冷や汗が流れる。こいつらに任せて大丈夫か?といった感じであった。シリウス公爵は咳ばらいを一つ、こほんっとすると、控えていたものに「彼をここへ」と言って人を呼ばせた。
呼ばれてきたのは小柄な男であった。茶髪に人畜無害そうな雰囲気が特徴の、いたって平凡な男である。シリウス公爵はその男の背に手を回して、三人に紹介した。
「彼の名はラフィ。訳あって、私の下で食客として抱えているものだ。彼なら娘の顔を知っているし、腕も立つから、是非連れて行ってほしい」
そう言われて、ラフィと呼ばれた男はぺこりとお辞儀をした。
「初めまして! ラフィです! お嬢様のことは知ってるから任せてね」
ずいぶんと軽い声だった。ルルは困惑して、烈とラングを交互に見た。どう見ても目の前にいる彼が、腕が立つようには見えなかったからだ。
だが、その二人が動じる様子はなかった。烈は気軽に、ラングは少し警戒した様子で握手に応じた。ラングは笑って、ラフィに話しかけた。
「擬態かい? 見事なものだな?」
「いやいや、君には負けるよ?」
お互いに挨拶しているが目は笑っていない。ラフィがルルに手を差し出すと、ルルも少し緊張した面持ちで握手した。烈が何も言わないなら、ルルはそれ以上何か言うことはなかった。
ラフィは見送りに来ていたミアとも挨拶をして、改めて三人に向き直った。
「それで? 砦に潜入する方法は考えてあるのかい?」
その言葉に、三人は目を見合わせてニヤッと笑った。
「ああ、とっておきのやつがあるぜ?」
ラングはそう言うと、馬に背負せていた大きな袋から、ずるりと鎧や外套を取り出した。それは昨日ラングが撃退した『暁の鷲』のものであった。
ラフィはそれを驚いたように見た後、その意図を察して大声で笑った。
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