表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/197

赤鹿

 パバルの街はドイエベルン王国でも屈指の城下町である。ゆえに各国から人が集まり、物と金、それに情報が集まる。特に庶民の間で情報が飛び交うのは酒場だ。それは今も昔も変わらない。そして、パバルの街で最も盛況な酒場の一つが、『赤鹿』であった。


「おっとっと、悪いな。おごってもらって」


「な~に、気にするなよ。持ちつ持たれつってやつさ! それでさっきのことなんだけどよ......」


 その赤鹿で二人の男が、酒を飲んでいた。一人はこの街の労働者であろう。無精髭に、ぼろぼろの作業着を着ていた。


「ああ、ちょっと前に来ていた連中だろう? ありゃ間違いなく、『暁の鷲』って名乗ってたぜ?」


「へ~大陸に名を轟かす傭兵団がこの街にねえ。ずいぶん物騒じゃないか」


「ああ、しかも相当横柄な連中だったぜ。 この酒場でも看板娘に手を出そうとするわ、料理にケチつけて、挙句の果てには暴れまわるわ......おっかない限りだったさ」


「なるほどね......でもそんな奴らはこの街に来てから一人も見たことないぜ?」


「それが、数日前からぱったりと見なくなっちまったんだよ。ここは公爵様のお膝元だからな。あ~いう手合いがいれば嫌でも目立つんだが......」


「は~なるほどね? 内戦の影響かこの国も物騒になったもんだ」


「だろ? だけど、実はあいつら、ザネの砦に入ってったんじゃないかって話があるんだよ」


「どういうことだい?」


「実は俺の従妹がここと、ザネの城の間の農民の家に嫁いんだがな。そいつがこの前、俺に手紙をよこしたんだよ」


「ほう? なんて書いてあったんだい?」


「まあ、大体はあっちの暮らしがどうのって話なんだがな、その中に夜、怪しい武装した連中が、そっちの方に向かうのを見たってんだよ」


「そりゃ心配だねえ」


「だろ? この国じゃ陛下派と妃殿下派が争ってるからな。妃殿下は行方不明らしいが、それでもいつ戦争が始まってもおかしくねえって話だ。ザネの城の領主はペルセウス侯爵派だからな。これは何かあるかもって、従妹も心配しているらしい」


「そりゃおっかない。俺も商人の護衛はここまでにして、国に帰ろうかね」


「そうしろそうしろ。俺にたらふく奢ってからな!」


「こいつめ!」


 それから、作業服の男と黒衣の男---ラングは小一時間ほど話した。二人は大いに盛り上がり、いつの間にか作業服の男は酔っぱらって寝てしまった。


 ラングはそれを見届けると、クスリと笑って、酒場を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ