ラングの領分
「ミア、今日はもう遅い。このまま平行線でいるより、お互い少し頭を整理して、明日話す方がいいじゃないか?」
シリウス公爵との交渉が上手くいかないミアに。烈が助け舟を出した。ミアはちらりと、烈をうかがうと、ふうっと息を吐きだした。
「そうだな。このままでは埒が明かない。シリウス、部屋を用意してくれるか?」
「かしこまりました。人数分用意させましょう」
そういって、シリウス公爵は召使を呼び、部屋を整えさせた。
召使から部屋の準備が整ったことを聞かせられると、ミアたちは部屋に案内させられた。ミアは応接室を出る前に、シリウス公爵を振り返った。
「そういえば、レイアはどうした? 姿が見えないようだが」
「ああ、娘は遠方の友人の所へ遊びに行っております。あれも妃殿下に会いたかったと思うので、今度ぜひお声を掛けてあげてください」
「ああ、そうだな」
ミアに聞かれたシリウスの手が、緊張で力が入るのを烈は見逃さなかった。
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シリウス公爵の用意してくれた部屋に案内された、烈たちは早速今後のことを話し合った。
「シリウスは何かを隠しているな」
ミアの発言に、一同が頷いた。
「俺もミアの兄さんやペルセウスは知らん。だが、シリウス公爵は国が乱れていてそれを放置しておくのをよしとする人ではないことはわかる」
「その通りだ。彼こそ真の忠臣というものだろう。いざとなれば、単身王宮に乗り込み、讒言するくらいは平気でやる男だ。それができないというのであれば......」
「それができない事情があるか......さっきミアが言っていたレイアって人が怪しいか?」
「ああ、いつもなら私がいると聞くとすっ飛んでくるはずだからな。それが今日はまったく姿を見せない......」
「人質か?」
烈が言うと、ミアは黙った。とにかく情報がなさ過ぎたのだ。
「俺が探ってこようか?」
そう言って、ニヤッと笑って、親指で自分のことを指したのはラングだった。ミアはラングの方を見てふっと笑う。
「いよいよ、本領発揮か?」
「なんのことやら?」
とぼけるラングに、ミアは「はっはっはっ」と笑った。
「頼む、ラング。情報の精度は問わない。だが、今はとにかく手がかりが欲しい」
「なめるなよ? 絶対確実な情報を取ってきてやるさ」
そう言って、ラングは散歩にでも出て行くかのように、鼻歌交じりに部屋を出て行った。




