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道中

 鬱蒼とした森を抜け、烈とミアは整備された道まで出てきた。とはいえ整備された道といっても、人が通れるようにならしてあるだけであり、烈の知っている、アスファルトや街灯で固められた。都会の歩きやすい道とは違う。


(やはり、ここは俺の住んでいる時代......いや、もしかしたら......)


 先ほどの命のやり取りを見てから薄々察していたことが、烈の中で確信となってきていた。


「さて、村はここから東に3アージュほどで着く。ついて来い」


 ミアが意気揚々と烈を先導して行こうとした。


「待ってくれ。3アージュとはどれくらいだ?」


「ん? それも知らんのか? そうさな。1アージュは千歩分くらいだ」


(とすると、1アージュは1kmくらいか?)


 烈は()()()()の常識に早く馴染まなければいけないことを痛烈に実感していた。そういう意味でもミアのような、初対面でも信頼できそうな人と知り合えたのは僥倖だったといえよう。たとえ何か()()()()()()()があったとしてもだ。


「そろそろ、いいか?」


「ああ、すまん。行こうか」


「うむ!」


 ミアはにかっと笑って烈を促す。烈もミアの隣を歩くことにした。


「それにしても、すごい剣だな?」


「ん? これか?」


「ああ、だいぶ重たいんじゃないか? 女性でそれを軽々と振ることのできる人はいないだろう? それとも、この辺では普通なのか?」


「いや、私も私しか知らんな」


「だとしたらやはりすごい剣だ。普通のサイズのものではだめだったのか?」


「普通のだと私の力ではすぐに壊れてしまってな。何本もの名刀を使いつぶすうちにこれに落ち着いてしまった」


 そういってミアは呵々と笑った。ミアは烈の方を向いて聞く。


「烈は剣に興味があるのか?」


「......いや、そういうわけではないのだが......」


「そうなのか? だが相当使えるであろう?」


 烈はぎくりとした。


「どうして......そう思うんだ?」


「そうだな......足運びに体のさばき方、目線の追い方もそうだし、何より!」


 その瞬間、ミアは烈の手をがっと握って自らの方へ引き寄せ、顔を鼻先が当たる寸前まで近づける。ミアは金色の目を爛々と輝かせて、烈の目をじっと見た。ミアの吐息を感じ、烈はどぎまぎしてしまった。


「この手の剣ダコは誤魔化せんだろう?」


 ミアは烈の手のひらをぐっと押す。烈の手にできた固いゴツゴツしたタコは、持ち主の意思を裏切って、彼の人生を物語っていた。


「!?」


 烈はばっとミアの手を振り解いて離れる。それを見てミアはくすくすと笑った。


「ふふっ。すまんすまん。悪戯が過ぎたかな? 許せ」


 ミアの邪気のない顔は、烈を落ち着かせた。カリスマという奴だろうか。それともさばさばとした彼女の性格のせいだろうか。ミアのやることは許せてしまうのだ。なんとなく、妹に似ていると、烈は思った。


「まあ、無理に詮索する気はないさ。ただその尖った雰囲気だけはどうにかならんものか? 一緒に歩いていてなんとなく居心地が悪い」


 ミアの言葉に烈は、はっとなった。どうやら知らずのうちに彼女に警戒心を持ってしまっていたらしい。烈はミアに向かって頭を下げた。


「すまない。見知らぬ土地にいたせいで過敏になっていたみたいだ」


「ははっ。わからんでもないがな。見知らぬ土地というならばそれこそ今を楽しむべきではないか?」


「......すまん、今は......」


「ふむ? まあいいさ。それよりも、ほら。あそこだ」


 そうしてミアの指さす方を見ると、遠くに家々がまばらに建つ集落が、烈の視界にも捉えることができた。

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