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ミアの事情

 部屋に入った二人と最初からいたミアとルルは、一つのテーブルを囲むように座った。そのテーブルにも豪華な装飾がされており、一般人の烈としては食器を置くことさえためらわれた。


「さて、何が聞きたい?」


 ルルが一生懸命用意してくれた、酒やつまみを堪能すると、ミアが切り出した。ミア以外の三人は目を見合わせて、烈が代表して口を開いた。


「じゃあ、聞くけど、殿下というのはミアのことでいいんだよな?」


「そうだな」


「ミネビアなんたらという長い名前も?」


「ああ、間違いなく私だ。ドイエベルン王国の第一王女、現国王の妹---ミネビア・アーハイム・キャンベル・ロンバルトだ」


「......お姫様なのか?」


 その瞬間、ミアはぷっと吹き出した。


「おまえっ......お姫さまって......私がそいうものに見えるか?」


「いや、見えないから驚いている」


「まあ、だろうな。物心ついたときには父に連れられて戦場に出ていた。世間一般の()()()ができることとは無縁だったな」


 ミアはどこか遠くを見る目をした。いつかの日を思い出しているのだろうか。


「なるほど......なら、もう一つ。ミアの敵は誰だ?」


 ミアはきょとんとした顔をした。


「それを聞くのか? 私がどうして隣国で一人でいたのかを聞かなくていいのか?」


「そこは今更聞いてもな。ミアの信念がぶれることはないだろうし、俺はミアの()()()だろ? なら、ミアに味方して、ミアの敵を打ち滅ぼすさ」


 ミアはそれを聞いてくっくっと笑った。


「やはり......レツとの出会いは正しかったな。私も意を決そう」


「......」


「もうみなまで言うことはないと思うが、私の敵はドネル・オーランド・グレイス・ロンバルト---ドイエベルン国王とその側近のペルセウス侯爵だ」


 ラングとルルがごくりと喉を鳴らす。予想していたとはいえ、相手は一国の国王だ。明確な言葉で敵と言われるとさすがに緊張する。


「わかった」


 唯一、烈だけが頷いた。


「それで? ゴードウィン男爵は敵か?」


「わからん。あれは小狡い男だ。私の首を手土産にと考えていても全く不思議ではない」


「この国では王族が配下に殺されるのが普通なのか?」


 その問いに対しては、ラングが答えた。


「レツ。流石にそれは普通じゃねえよ。臣下が王家筋を殺すなんてよほどの大義名分がなければ、周りから非難されるのがおちだ」


「なるほど......だが、ミアはゴードウィン男爵がしてくると考えているんだろう?」


「......そうだな。先ほどの分からんという言葉は訂正する。恐らくそうする気だろう」


「となると、どうやって大義名分を手に入れる気なのか? というところだな」


「あ......あの」


 そこでルルがおずおずと手を挙げた。


 三人がルルの方を向く。


「例えば......なんですけれども、ミアさんの評判を落とすというのはどうでしょうか? 例えば、少女とか無頼の男たちを連れ込んで、その......色々励むのが日課だったとか?」


 そう言いながら、ルルは先ほどのネグリジェを目の前にかざす。


「そう言えば、部屋にあった、パイプや酒もそう言ったものが多いような?」


 烈が疑問を口に出すのと、ミアとラングが外に飛び出るのは同時だった。扉の外からごおっと熱風が飛び込んでくる。烈とルルも続いてすぐに家を飛び出した。目の前には蛇のようにのたうち回る、火の手が映った。


「やられたな......」


 ミアが苦虫を潰したような顔をして、この危機をどう乗り越えるか、汗を垂らしながら考えていた。

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