本戦
8試合目の予選が終わり、最後の組の勝者の名前が挙がった。観客の歓声とともに、勝者が闘技場から引きあげてくる。
それと同時に、予選に勝ったメンバー一人ずつ呼び出された。
「本戦は誰とぶつかるか、わからないらしいぜ?」
キースが楽しそうに烈に話しかけていた。
「そうなのか?」
「ああ、そっちの方が楽しいからだと」
「今日中に決勝までやるのか?」
「いや、今日は本戦の1回戦までだと」
「そうか」
「奴隷の連中とは当たりたくないかい?」
「まあな、いい人たちだ」
「へー。レツは変わってるな」
「そうなのか?」
「ああ、普通のやつらはそこまで考えないさ♪」
「キース! 来い!」
キースが先に管理官に呼ばれた。
「おっと、じゃあお先に」
そう言って、手を振って予選の控室を出ていく。
「レツ・タチバナ! 来い!」
烈も呼ばれた。案内の管理官の後を追っていくと、小部屋に通された。どうやらここで待機しろということらしい。
烈は小部屋に入って、床に寝転んだ。一人にしてもらうのはありがたかった。色々と考えたいこともあったのだ。
(俺はどうしてこんなことをしているんだろう......このままいていいのだろうか......)
たった数日いただけだが、烈にはこの世界が楽しくなってきていた。過去のしがらみのないこの世界が。ゆえに、まるで光が強ければ、闇もまた濃くなるように、罪科を元の世界においていてしまっていることへの罪悪感も、烈の心に強く感じていた。
「紗矢......」
烈は妹の名を呼んだ。楽しすぎて忘れそうになるからこそ、強く思い出さなければいけなかった。
「レツ・タチバナ! 出番だ」
外から管理官の声が聞こえた。烈はゆっくりと床から起き上がって、部屋を出る。
(今は考えるのはやめよう。残ったのはみんな強者だ。なめてかかれる相手ではない)
烈はしっかりとした足取りで、光さす方へ、細長く伸びた石畳の通路を進む。出口を出ると、太陽の光が目に刺さってきた。烈はとっさに目を腕でかばう。目が慣れてくると、目の前に山のような男がいた。
「お前が相手か。悪いが手加減はできんぞ?」
対戦相手は長剣を携え、仁王立ちになったダストンだった。




