いざ始まらん
烈は第5試合に呼び出された。周りに見知った顔はいない。
(奴隷の......いや、モニカ王国の人たちとやりあうことはなさそうだな)
烈はどこかほっとしていた。やはり、親しくなった人たちとはなるべくなら当たりたくはなかった。代わりにいたのは......
「よう。クソガキ」
烈は横目で鬱陶しそうに見た。そこにはグッチを始めとした、第三軍の連中がニヤニヤと立っている。
「昨日は世話になったじゃねえか。手前のせいで俺らは罰則を受けたよ」
「それはすまなかった。まさかそんな顔になるまで殴られるなんてな」
「誰もそんなことは言ってねえ!! この顔は生まれつきだ!!」
「鼻息荒くするなよ。弱いんだから」
「調子に乗るなよ? 今日は昨日と違うぜ?」
「それは後ろの愉快な仲間たちのことか?」
「言ってろよ? 開始の合図で俺たちはお前を仕留めにかかる。逃げ場はないぜ?」
「一人を倒すために、大勢でかかるのか? 王の鉞が聞いてあきれるな」
「うるせえ! 覚悟してろよ!」
そう吐き捨てて、グッチは仲間を連れて、のしのしと歩いて行った。烈はふうっとため息をつく。
「ちーす! 早速絡まれてましたね。おにいさん」
その烈へと軽快に声をかけるものがいた。烈はちらりと振り向く。そこには烈ほどではないにしろ、長身で細身の、赤毛の男が立っていた。
「ども! 俺はキースってんだ。よろしく!」
そう言って人懐こい笑顔とともに、烈の手を握りしめてぶんぶんと振る。烈はなすがままにされていたが、流石に腕が疲れてきたので振り解いた。
「どうも。レツ・タチバナだ。あんた、昨日も練習場にいたな?」
「お? 流石だねえ。あの騒動の時でもちゃんと見てたってわけだ」
「それはな。あんたみたいな実力者は特にな」
「おっとっと、流石俺! 黙ってても実力がばれてしまうわけだ」
「それはそうだろ。あの騒動の中で、どこのグループにも属さないで、一人いれば嫌が応にも目立つ。そこから視線の向き方や、隙のない佇まいを見れば簡単さ」
「参ったな。まあばれてるならある意味都合がいいかもしれない」
「というと?」
「手を組まないかって話さ♪」
「......構わんが、なぜだ?」
「おいおい? レツみたいな実力者と手を組めば、それだけで予選突破にぐっと近づけるだろう? そんなに不思議なことか?」
「だが、俺は昨日の騒動のせいで、ほら、あーいうのに狙われてるぞ?」
烈の指し示す方には第三軍の連中がいた。
「ははぁ? どいつもこいつも殺気ばしってやがるな? 特に烈に」
「だろ? 俺の仲間だと思われると、それこそあいつら全員敵に回すことになるぜ?」
「まあ、確かにな。でも構わんさ。俺は烈と組む!」
「だから、どうして?」
「決まってるだろ?」
キースはニヤッとほほ笑んだ。
「あいつらが心底気に入らないからさ♪」
その答えを聞いて、烈もニヤッと笑った。
「ああ、俺もさ」
そして二人はがっと握手を交わしたのた。
「OK! 交渉成立と。ところでレツ。一つだけ聞いていいか?」
「ん? なんだ?」
「レツは何者なんだ?」
その瞬間だけ、キースの目から感情が欠落した気がした。まるでこの質問こそ本当の狙いがあるかのようだ。烈は一瞬だけ考え込み、ふっと笑った。
「俺もそれが知りたいよ」
そして烈が言い終えるかどうかのうちに、予選開始の銅鑼が鳴ったのであった。




