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シバ将軍

 鋭い視線が辺り一帯を威圧する。ミアの押し潰れそうなプレッシャーとも違う、まるで氷の刃を首元に突き付けられているような感覚にさせられた。何を言われずとも、背筋をただしてしまいそうになる。


(いや、気のせいじゃないな。第三軍の連中はみんな、気を付けの姿勢をさせられている......もしかして?)


 烈が目の前の少女の素性を推測しようとしていると、少女はこちらをキッと睨みつけ、つかつかと歩いてきた。そして、烈には目もくれず、グッチの目の前に立った。


(遠くで見たときは分からなかったが、少し小柄なんだな)


「所属を言いなさい」


「はい! 第三軍第二師団第四大隊所属のグッチ・ロアネスです!」


「よろしい。グッチ。この騒ぎの経緯を説明なさい」


「そいつがそこの少女にぶつかって因縁をつけていたのを、俺が止めたら、騒ぎになったんだ」


「てめっ!?」


 グッチが何か言う前に、烈は事の顛末を話してしまった。グッチの顔に脂汗が浮かぶ。


「おい......」


「いや、将軍、それは」


「この大男の言ったことは本当か?」


「は......その......」


「どうなのか? と聞いているのだが?」


「いえ......解釈次第ではそう見えるかもしれませんが......」


「......もういい......貴様らの指示は追ってする。さがれ」


「ははっ!!」


 グッチたちは烈のことを殺気のこもった目で見つつ、すごすごと帰っていった。


 そして、将軍と言われた少女が烈をを振り向いた。


「私はバリ王国第三軍軍団長、キョウカ・シバだ。どうやら、部下が失礼したようだ。変わって謝罪させていただく」


「俺はいい。それより、彼女に謝まってくれ」


「貴様!!? 無礼な!」


 キョウカの傍らにいた男が吠えた。だが、烈に言われて、キョウカは奴隷の少女を向いた。視線を向けられて、少女はびくっと肩をすくめる。キョウカはにっこりとほほ笑んで、少女の頭を撫でた。


「私の部下が申し訳なかった。私の責任だ。すまなかった」


 異様な光景だった。一国の将軍が奴隷の少女に頭を下げていた。


「あ......あの......」


 少女は声を上げられないようだった。最後にキョウカは少女の頭をポンポンと叩いて、そして烈に一つ頭を下げた。烈は溜飲が下がったのか、肩をすくめただけだった。


 その光景を外から見ていた、ミアは笑っていた。ラングはジト目でミアを睨む。


「あんた、烈の実力がわかっていたのか?」


「当たり前だ。わからなかったのか?」


「ここまでとは思わなかったよ」


「まだまだだな」


「あんたら強すぎだぜ」


「ふふっ。だが、惜しいな。やはり武術大会は私も出ればよかった」


「ああ、烈にシバ将軍。他にも両脇の副官や、物陰で見ていた野良の連中も相当やるな」


「そうだな。だが、おそらく烈ともっともやりあえそうなのは......」


「ん? 他にいたのか?」


「いや、そうだな......本番に取っておこうか」


「なんだよ。気になるじゃないか」


「ははっ!」


 ミアは楽しそうに笑っていた。明日が待ちきれない子供のように。

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