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前哨戦

 グッチの剣が鋭く、確実に烈の首筋を捉えようとする。烈は腰の剣を抜くと同時に、仰け反ることでギリギリその刃を躱していた。


「ちいっ!!! てめえ!」


 グッチは烈がひらりと自分の剣を見切ったのが気に入らなかったのか、悪態をつきつつ、二歩目を踏み込み、上段から烈を斬りつける。今度は烈も躱すことなく、剣で受ける。鋼がガキンと打ち付けあう音が練習場に響いた。


「ぐぐっ......」


「......」


 鍔迫り合い(つばぜりあい)の中、最初は烈のことをなめていたぐっちが徐々に押され始め、長身の烈がグッチに覆いかぶさるような体勢になっていった。


「て......てめえ......なんて力してやがる......」


「流石だな......」


「な......なに?」


「この状況でまだおしゃべりする余裕があるとは、流石泣く子も黙る第三軍様だ」


「ふざけんな!」


 グッチは乱暴に剣を払った。


「殺してやる」


「できるといいな」


「糞野郎!!」


 グッチは完全に頭に血が上っていた。最初の鋭い一撃が嘘のように、今は筋力に任せて無茶苦茶に振っている。烈はそれを冷静に見極めて、軽やかに、舞うように躱していた。


「もしかして、烈は怒っているのか?」


 傍から見ていたミアは驚いていた。少し影があるが、それ以外は人の好い男だと思っていた。


「みたいだな。何かの琴線に触れちまったかな?」


 ラングも同様だった。


「切れるならミアが先だと思っていたんだが......」


「どういう意味だ?」


「沸点はあんたの方が低そうって意味さ」


「......私たちもやるか?」


「勘弁してくれ。その大剣で真っ二つにされちまう。それに......」


「それに?」


「あいつが本当に切れていたんだとしたら、止めれるのは俺らくらいだろう?」


「確かにな......」


 二人は軽口を叩きながらも、事態の趨勢を慎重に見守っていた。それぐらい、今の烈は()()()()


「ち......ちくしょう......ぜぇ、はぁ......逃げ回ってんじゃねえよ......」


「どうした? 戦場ではこの程度で息を切らしていいものなのか?」


「どこまでもなめた口を......」


「お前が蔑んだ少女の方がまだ強そうだな」


 その一言がグッチの誇りを砕いた。既にグッチの耳には何も聞こえていない。目の前にいる()()の首を地面に転がすことしか、頭になかった。


「くたばれぇぇぇ!!!」


 グッチは剣を横薙ぎに払おうとした。止めれるものなら止めてみろという勢いだった。しかし、彼の剣はむなしく空を切った。


(消えた!?)


 烈は体を横に回転させて、グッチの剣の下に潜り込むようにした。グッチにはまるで目の前から烈が消えたようにしか見えなかった。


 がきぃんと音がした。烈は潜り込むと同時に、剣を下段から切り上げて、グッチの剣を弾き飛ばしていた。


(立花流---昇竜)


 烈は幼いころから学んだものの一つを思い出して、体をその通りに動かしていた。グッチの剣はひゅんひゅんと回転しながら、ぐさっと遠くの大地に突き刺さる。そしてグッチ自身はバンザイをしたような情けない体勢で固まっていた。


 烈はグッチの首元に剣を突き付ける。誰が見ても文句なしの烈の勝利であった。


 事態に気付いたグッチは顔を真っ赤にする。


「ば......馬鹿な......この俺が......第三軍の俺が......」


「お前なんてこんなもんだ。あまり調子に乗るなよ」


「おもしれえ、これで終わったつもりかよ」


 そう言うと、グッチは小刀を抜いた。それと同時に、後ろで見守っていた仲間たちも剣を抜く。10人はいようか。彼らは烈を包囲するために、少しづつにじり寄ってきた。


「まだやるのか?」


「当たり前だ。第三軍が素人に負けたまま退がれるかよ」


「くだらねえ」


「なにぃ!?」


「同じような鎧と顔が集まっても、力の差は何も変わらねえだろう」


「顔はちげぇだろ!?」


 グッチは興奮していた。他の連中も殺気を醸し出している。これはいかんとミアとラングが加勢しようとしたその時であった。


「それまで!!」


 練習場に鋭い女性の声が響いた。よく通る声だ。何事かとその場にいた全員が振り向いた。たった、一人を除いて......


「どうした? ラング?」


「ミア、お前も顔を隠しな」


「......まさか、あれが?」


「ああ、そのまさかさ」


 叫んだのは凛とした少女であった。歳は烈やミアと同じくらいか。きれいな黒髪を後ろに縛って、颯爽とこちらへ歩いてくる。美しいが、両脇に屈強な男どもを従え、第三軍の鎧を着こみ、鋭く睨むその姿は、彼女が戦場を枕にしていることを悟らせるには充分であった。


 ラングが困ったように言った。


「あれが、第三軍の将軍。シバ将軍さ」

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