御三家の陣形
「さて、シリウス。あの陣形どうみる?」
ミアが眼前に広がる御三家の軍の陣形を見ながら問いかけた。御三家の陣形は不思議な形をしていたのだ。まず逆Vの字型の陣が敷かれていた。そして、V字の股の下とVの頂点の上に推定五千の横陣が二つ敷かれていた。
「ふむ。狙いはむしろ明白かと。まず中央の横陣は誘いで、そこを攻め込めば、周りを囲む陣が我らを取り囲み、逆に左右の頂点を攻めれば、中央の横陣が挟撃に走るのでしょう」
「後方の横陣は?」
「恐らくあそこにはダッフワーズ候が配置されているはずです。彼の方の後方支援は天才的ですからな。兵を削った端から補充を続ける気でしょう」
「となると奴らの狙いは......」
「ええ、持久戦でしょうな。今ここで勝つ気はないのでしょう」
「『紫鷹団』とハイデッカー公が到着するまでということですな」
「だが、あながち間違いではないか。クリスの怪我が敵に伝わっているのだろうな」
「間違いないですな。『鉄百合団』と『紫鷹団』の力は互角。ならば総大将の状態の差で『紫鷹団』が勝ち、彼らと合わせて我らを挟撃すると。理に適っていますな」
「この堅実な作戦はラートンだろうな。あいつらしい」
「まさに。彼と持久戦を戦うなど考えたくもないのですが、まあ今回は問題ないでしょう。問題は......」
「ああ、少数の兵をどう先に進めるかだ。ロザリーのところまで兵を進めなければいかん」
「一戦交えないわけにいかないでしょうな。だが、両側の丘が邪魔して、兵を差し向けることができない。さらに大回りをすれば時間がかかりすぎる。さてどうしたものか......」
二人とも考え込んだ。敵も戦上手である。少し揺さぶったくらいでは勝てはしないが、かといって殲滅するまで戦って自国の兵を減らすわけにもいかなかった。
アイデアが煮詰まったミアたちの前に、烈が通りかかった。ミアは烈の近衛兵たちとの、見事な作戦立案を思い出していた。
「レツ!」
ミアは烈を呼び止めて今の状況を説明した。烈は少し考えた後に口を開いた。
「ようするに、逆側に通るための道を作らなきゃいけないってことだよな?」
「そうだ。少しの穴でいい。だが、後方のダッフワーズ含めて邪魔されないようにしなければいけない」
「なるほど。ならまずあの陣形の形を変えさせなければいけないな」
「ほう? 形を変えさせるというと?」
「例えば、両側に広がるようになっている陣形を片方に寄せてしまうとかかな? 後方の陣が気になるなら、何か策があると思わせて動けなくするのがいいかもしれない」
烈の提案にミアもシリウスも考え込んだ。妙案に思えたからだ。ミアは一つ策を思いついて、ふっと烈に笑いかけた。
「さすがだ。レツがいればすべてうまくいく気がしてくる」
「買い被りだろ? 用が済んだなら俺は行くぜ?」
烈はくるりと踵を返して先に行こうとする。頼もしくなって帰ってきた相棒を見ながら、ミアは直ちに軍勢に戦いの準備をさせ始めた。




