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後編 その花の花言葉は

花言葉と世界を創る者 後編

白詰草

 

白い波(以下ナミ):あらすじと解説コーナー! どんどんぱふぱふ~(シャララーんという効果音)

トリフォリウム(以下トリ):……これは?

ナミ:見ての通りタンバリンだよ~。

トリ:いや、そうじゃなくて。この空間はなにかってこと。

ナミ:最初にいったじゃーん、前編のあらすじ紹介だよ。ついでに本編ではやりきれなかった魔法についての説明を、こうして文芸部員である白い波がわかりやすく行っていきま〜す。こちらは補足に呼んだトリフォリウムさんです。

トリ:ぜんぺん?

ナミ:細かいことは気にしない。それではさっそくいってみよ~

わたしたちが通うのは魔法を学ぶ学校なんだけど、まずはこの魔法について説明しようかな。

トリ:魔法なんてみんな知ってるんじゃないの?

ナミ:トリフォは身近かもだけど、あまり触れてこなかった人もいるの。現にるりちゃんもそうだったしね。そうだ、トリフォは魔法の無いファンタジーとかよく書いてるし、そこの人に説明するみたいにやってみてよ。

トリ:ええと、魔法とは、普通ならできないことを、想像力で具体化する力。その人が求めていること、得意なことによって、使える魔法は変わってくる。

ナミ:つまり自身の個性や、やってることによって決まるってわけだね~。じゃあ次は特権魔法かな。

トリ:あのとき(あたし)がやってたやつ。

ナミ:そうそう。文芸部の特権魔法『舞台(フィールド)創造(クリエイト)』は空間を作り出す魔法だよ。物語の世界を創造する文芸部らしい魔法だね。それ以外には部活ごとの魔法はないけど、活動が同じだから、魔法のタイプも似てくるよ~。

トリ:部長特権があるとも言われているけど、知らされていない。

ナミ:たぶんトリフォが部長になるから、そのときは教えてね

トリ:……まだわかんないでしょ。

ナミ:そうかな~?

トリ:そんなことより、つぎは部員の紹介にいくんでしょ。

ナミ:あ、うん、そうだけど、

トリ:文芸部員は文章、文字とかいう概念的なものを扱うから、具現化よりも精神系が多い。その魔法も、小説の書き方によって違う。

ナミ:触れるものを出すより、幻覚を見せたり精神に影響したりってほうが多いってわけだね~。まずは部長の『道明寺(どうみょうじ)明羅(あきら)』先輩。あ、部内ではペンネームで呼び合ってて、わたしたちのもそう。で、部長はよく詩を書くんだけど、書けるときと書けない時の差が激しくて、それは文章が降りてくるか降りてこないかなんだって。魔法も、アイデアが突然降ってくるとかそういうものらしくて、本人は「神託」って呼んでるよ。

トリ:その魔法については、私は詳しくないです

ナミ:わたしも~。で、副部長の『(あや)』先輩は細かに作り上げた登場人物の動きを予測するっていう小説の書き方。それで書かれた先輩の恋愛、リアリティあっていいなって思う。先輩の魔法は現実の人物の動きを予測できるもの。

トリ:ただし、その人物について詳しく知っていないと正しい予測はできない。(あたし)のことも予測できるのかな……(ボソッ)

ナミ: 今のが三年生で、次はわたしたち二年生ね。『白い波』ことわたしは写真部と兼部してて、意識して見た景色を写真のように記憶に取っておけるっていう魔法を使うよ。それを他の人に見せることもできるけど、残せるのはあくまで景色だけで、会話や出来事は取っておけないから、それを補うために、文章として残したいなって思って文芸部に入ったってわけだね

トリ:その日常を切り取ったものが、ナミの主な作品。

ナミ:写真部の人にも協力してもらってるんだ。

トリ:楽し気な雰囲気、小説から伝わるもんね。

ナミ:ありがと~。そういうトリフォは?

トリ:『トリフォリウム』こと私は、現実の人物などの性質を取り込み再構築した物語を書いている。取り込みのことをコピーって呼んでいるけど、コピーした人の魔法などの特性を使える。だから得意って魔法はないよ。

ナミ:爆発系得意じゃん、あれうまいと思うよ~。

トリ:うん、そうだね。

ナミ:そしたら前編で入部した一年生なんだけど、まだ魔法ははっきりしていないみたいだね~。『物語を展開する者(ロキ)』くん、呼び方はロキでもモノでもどちらでもいいって言われたから、わたしはモノくんて呼んでるよ。厨二病なペンネームだよね〜。

トリ:そう?

ナミ:あーうん、変だとは言ってないよ。この子はどうやらガラケーを使うみたいだけど、見たことはないな。

トリ:『るり』ちゃんに関しては、部長が夢系の才能があるかもって言ってた。自分を主人公として世界を見るタイプかな

ナミ:かなぁ……でも、ちゃんとあいさつできる子が入ってくれて嬉しいよ。部室でるりちゃんは返してくれたし、呼び込みで返してくれたのはモノくんだけだったし……

トリ:(根に持ってる、というか挨拶返されないのが心にきたんだろうな)

ナミ:とまぁ、説明できるのはここまでってことで~。楽しかったからまたやりたいな~。

トリ:また、があればね。

ナミ:なんか言った~?

トリ:ううん。なんでも。

ナミ:そっか。それじゃあ、本編をどうぞ!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『もう、生きにくくて仕方がないんだ』

 つぶやいた彼女は、疲れたように笑った。いつもは束ねている髪が、屋上の風に吹かれて揺れていた。

『もう、十分経つ。終わりの時間だよ』

 そして彼女は、フェンスの向こうへと――

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 はっ、と目をあける。同じようにうつむいている頭と、その上には壇上で話をする校長先生。原稿のどこを読んでいたか見失ったように、えー、とつぶやいていた。

 入学してから五ヶ月が経った。文芸部に入部して以来、先輩と小説を書いたり本を読んだり、部誌の作り方を教わったりと、慣れない日常を過ごしていた。夏休み後半は締め切りに追われた日々だったので、疲れが取れてないのかな、と眠気を飛ばすように頭を軽く振る。

 どうしてトリフォ先輩のあんな夢を見たのだろう。そう考えていると、最新の部誌を思い出した。そう言えば、先輩の小説に出てきたシーン、あんな感じだったような。確か、ビルの屋上のフェンスで、十分たっても落ちなかったからまだ死ぬ運命じゃないんだって思う少女の話。

 まるで、自分の想いを小説にぶつけているみたいだ。

 なんの根拠もなく、そう感じた。いや、まさか。トリフォ先輩が無表情に見えてその実楽しく部活をしていることを、部員なら知っている。そんな先輩が死のうとしているわけがない。

 今日の部活で、何か聞いてみようか。でもどうやって、と考えていると時間が過ぎ、放課後。部室のドアをあけて、こんにちはーとあいさつをする。

「やあ、るりくん。あとは二年生の二人だが、」

 部長がそう言ったところで、うしろのドアがバン、と開いた。

「トリフォが消えたんです!」

 振り返ると、いつになく急いで鬼気迫る勢いで、肩で息をしながらナミちゃん先輩が入ってきた。

「落ち着いてくれ、ナミくん。何があった?」

「それが」


話を聞くと、トリフォ先輩の存在(・・)が消えていたらしい。


「朝会わなくてあれ、って思ってたら席も消えてて、クラスメイトも覚えてなくて」

「いじめではないのよね」

 アヤ先輩に聞かれ、自分を落ち着かせるようにイスに座ったナミちゃん先輩は首をふった。

「意図してるというより、本当に知らない感じで……先生にも聞いたし、何より名簿に名前がなかったんです」

ナミちゃん先輩が、魔法で写真を空中に映す。数が決まっているはずの机が一つ少ない教室。一クラス四十人のはずが、一人足りない名簿。

「どうやら事実のようだな」

 道明寺先輩が、言いながら部室内を歩く。上履きのはずなのに、コツコツという靴音が聞こえてきそうだ。

「この中の人間は覚えているな?」

 それぞれうなずいた。

「学校内でトリフォくんが消え、それを覚えているのは文芸部員のみ」

 わたしたちを見まわす。

「これは、魔法が絡んだ事態に違いない」

 静かにそう言った後、「文くん」「はいはい」とアヤ先輩とやりとりをする部長。アヤ先輩は手元から魔方陣を描いた。予測を使うのだろう。

「今すぐ探しに、」

「闇雲に探すより、確実な方法を探すほうが賢明だろう。で、文くん。なにかわかったことはあるか?」

 道明寺先輩にそう手で制されて、立ち上がったナミちゃん先輩は座る。アヤ先輩は魔方陣から顔を上げると、

「今の時点で予測できていることを話すわ」

 そう言い、話し始めた。その内容は、トリフォ先輩が死ぬつもりでいる、というものだった。

「私の魔法だから、確実ではない。でも、彼女の性格からして、消えたならやる行動はこれである可能性が高い。ただ、方法もわからない……」

 アヤ先輩の生み出す魔法は、小説と同じようにリアリティがある。少なくとも今はその情報を元に進むしかない。すると、今まで黙っていたナミちゃん先輩が言う。

「トリフォの戦闘、見たことありますか」

「ないけど……」

「爆発が得意なんです」

 それを聞いて、はっとするアヤ先輩。すぐに魔方陣を展開した。

「校舎を爆発させる……? そんなまさか」

「確かにこういう部類の人が一回は考えることっすけど、トリフォリウム先輩が人を直接傷付けるようなことしないと思います」

「だが、今はそう仮定して進めるしかないだろう。他に情報を持っている者は?」

 さっき見た夢を話すべきか悩む。確実な情報じゃないから、黙っておくべきだろうか。でも、無いよりかはましかもしれない。

「さっき見た夢なんですけど――」


「なるほどな」

 説明し終えると、三年生の二人は納得したようにうなずいた。

「なら、トリフォちゃんは屋上にいるのかも」

「あの、夢なのに信じるんですか」

「君の夢だから信じるのさ、るりくん。君の魔法は恐らく、人の感情や想いを受け取ることができるのだろう。それを自分視点で見ているから、夢という形で現れるのだ。今回の夢も、トリフォくんの願望が夢に現れたと考えるなら、彼女はそこにいるはずさ」

 それを聞いて、アヤ先輩とナミちゃん先輩がイスから立ち上がる。

「屋上に向かいましょう」

「そうしてくれ。ロキくんとるりくんも行くだろう?」

「はい、道明寺先輩は?」

「俺はここに残る。神託を待ってみようと思う」


 そうして、屋上。あるのは青空と、それをさえぎる緑の金属フェンスだけ。先輩の姿はなかった。

「やっぱり、あの夢はあてにならなかったんでしょうか」

「もう情報はないのに、どうしたら……」

「本人に、直接聞けばいいんじゃないっすか?」

「モノくん? どうやって……」

 彼はいつかの帰り道のように、ポケットからガラケーを取り出した。

「電話するんすよ」

「電話したけど、使われてない番号だって」

「大丈夫っす。きっと繋がります。オレの魔法なんで」

 呼び出し音が鳴っている。先輩のケータイにかかっているということだけど、どれくらい鳴っているだろう。まるで出るかどうか悩んでいるみたいで。

 

 一時だったのか、ずっと長い間だったのかもしれない。

 ピ、と音がした。

『もしもし』

 スピーカーモードにしたガラケーから声がした。それは確かにトリフォ先輩のもの。わたしたちは口々に名前を呼んだ。

『はい、トリフォリウムです。あーあ、見つかっちゃったか。でもノーカンかなぁ』

 そう返事をした先輩に、ナミちゃん先輩が「どういうこと?」と聞いた。

(あたし)が死ぬのと、皆に見つかるの。どっちが早いか賭けていたんだよ。私の力じゃ、文芸部員には効果が薄いってわかってたから』

 金属だろうか、がたがたと音がする。あの夢のように、フェンスに腰かけているのかもしれない。

「ねぇトリフォ、本当に校舎を爆発するつもりなの?」

『あぁ、文先輩の魔法か。警戒してたんだけどな。うん。そうだよ』

 そんなことしたら、わたしたちは……。そう思っていることがわかったのか、先輩は言った。

『安心して。今みんながいるのは物語の世界。学校と全く同じ世界を作り出したんだ。現実の校舎が爆発しても、何も関係がない。誰の身体にも影響しないよ』

 文芸部特権魔法。今わたしがいる世界は、想像の世界なんだ。こんなに広くて、学校そっくりの世界をつくることができるなんて……

『私が死んでも、舞台(フィールド)は消えないようになっているから』

 トリフォ先輩が屋上から落ちれば、魔方陣が完成し、現実の校舎全体が爆発するのだという。

『こんな|世界(校舎)の未来を私が握っていると思ったら、悩みなんてちっぽけなものだって思ったよ』

「どうしてそんなこと」

『そうだなぁ』

 どこから説明するか、迷っているように。少しの間をおいて、返ってきたのは問いかけだった。

『ロキくん。クローバーの花言葉、知ってる?』

「幸運、私を思って、約束、そして復讐。でも、どうして急に」

『トリフォリウムはね、クローバーを指す車軸層(しゃじくそう)属の学名』

 復讐。自分のペンネームは、そういう意味を持っていたのだと。

「どうして復讐なんて」

『誰でも一回くらいは思うでしょう』

 確かにモノくんもそう言っていた。

「そのためにトリフォも死ぬんだよ?」

『あ、そっちじゃないよ、ナミ。え、一回くらい死にたいって思ったことないの』

 考えたこともなかった。そう思ったのが電話の向こうの先輩に伝わったのか、『ふーん、』というあいづちが聞こえる。

「文章読むのも書くのも楽しそうじゃん。どうして」

『好きなことがあったって、自分に絶望することはあるでしょう』

 どうして死にたいのか。わたしにはわからない。そのとき、まばたきしたまぶたの裏に、感情が流れ込んできた。

――ただただ、私が私自身に絶望した。この学校は向上心を持っていないと入れない。私にだってそれはあった。でも日に日にそれが薄れていくんだ。私には何もない、目的も目標も。得意な魔法だって、小説に書いたから得たもので、私のものじゃない。

 先輩の魔法を考えて、はっとした。トリフォ先輩の魔法は、人物の性質を模倣して、自分の中に取り込んで、それを物語の中で自在に操るものだった。

――わかってる。こんなに苦しいのは、今まで自分に真摯に向き合ってこなかったから。でもそんなこと言われたって今の私はどうしたらいいの。

『逃げないほうが偉いなんて知ってる』

 トリフォ先輩の声で、はっと目を開けた。

『それでも、私は死にたい。だから最後に、こんな世界に復讐をすることにしたんです』

 ただじゃ死なない。そんな感情が伝わってきた。

『止められるまでに死ななかったら、こんな復讐やめて、何もなかったように元に戻そうと思ってたんですけど。タイムオーバーです』

 聞こえたのは、ビュオ、という強い風。

 電話越しにも聞こえた風の音の後、通話が切れた。

 ナミちゃん先輩が名前を呼んでいる。もう伝わらないのに。



 私は、この世界に閉じ込められてしまったのだろうか。



 コンクリートの地面だけを見ていたわたしより、異変に早く気付いたのはアヤ先輩だった。

「眩しっ……」

 説明会のときと同じ、あの眩しさ。

 目を開けると、さっきと同じ学校の屋上。

 そして、さっきと違うのは、そこに道明寺先輩とトリフォ先輩がいたこと。


 今まで見ていた世界よりも、濃い青空が広がっていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 文化祭を終えて、三年の先輩が卒部した。

 秋にしては青の主調の強い空を見上げて、わたしはあのときのことを思い出す。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 あのとき、屋上から落ちるトリフォ先輩を、道明寺先輩が助けたのだという。

「色々と訊きたいことはあるのだけれど、とりあえずは道明寺くん、どうしてここにいるの?」

「文芸部特権を使えという神託の導きさ。本来使わないだろう魔法だから、文くんにも伏せておいたのだが、これは想像の世界から、現実の世界に干渉することができるのだよ」

 乗っていたピンクのクッションのようなものから降りる道明寺先輩。同じように降りようとしたトリフォ先輩はがくりとひざをついた。そこへ手を伸ばすナミちゃん先輩。差し出された手を握って、トリフォ先輩は立ち上がった。

 ナミちゃん先輩は何も言わない。

「止めてほしかったんでしょう」

 そう言ったアヤ先輩に、トリフォ先輩は「そうかもしれません」と答えた。隣にいた部長は、肩をぽん、と叩いた。

「本当にごめんなさい」

 先輩は頭を下げた。


「責任を取って辞めるつもりです」

「だめだよトリフォ! そしたら部長誰がやるの」

「あなたがやればいいじゃない」

「わたし来れないときあるし、トリフォのが適任だよ。慣れてきたばかりの一年生には大変だろうし、責任取るなら部長やって!」

 ね、と顔の前で手のひらを合わせて、ナミちゃん先輩はトリフォ先輩を見る。

 考え込んだトリフォ先輩を見かねて、部長が言った。

「さて、今後のことだが――」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 結論から言うと、わたしたちは、このことを公表しないことにした。体育館で眠っていたはずの学生や教師は、想像の世界で活動していた場所にいたらしく、舞台(フィールド)を意識していなかったため、何事もなかったように時が過ぎていて、誰も不思議に思わなかった、というのもあるけれど。

 あの日の表立った損害は、トリフォ先輩のスマホが壊れたことくらいだろう。


 道明寺先輩の言った通り、わたしは夢を見るようになった。今ではそれを元に小説を書いている。影響されやすいから文芸部らしい魔法を得たのでは、とクラスメイトにいわれたけど、わたしはこの部活に入ったことを後悔していない。自分を表現できる、小説を書くということを楽しく感じているから。もちろん、仲間と部誌をつくっていく部活も楽しい。だからよかったんだと思っている。

 三年生の先輩たちが卒部してから、トリフォ先輩は説得の通り部長になった。今でも静かで、頼れる先輩だ。この前の小説の続編では、少女は屋上から落ちても、死ななかった。「まだ生きる運命なんだよ」とは、先輩の言葉だ。

 ナミちゃん先輩は写真部が忙しいらしく、こっちに来ることが減ったけど、とても楽しそうにしている。今でもトリフォ先輩とは仲が良い。

 モノくんは変わらない、と思ったけど「厨二病って恥ずかしいものか……?」なんてつぶやいていた。

道明寺先輩とアヤ先輩は本当にたまにだけど、様子を見に来たり差し入れをしたりしてくれる。部誌も読んでくれているようで、緊張するけど見守られているのは安心する。


「ねぇモノくん」

「ん?」

「文芸部の知名度、上げたいよね」

「そうだな」

「企画やろうよ!」


 文芸部はこれからも続くだろう。

 あなたが忘れない限り、あなたの中でこの物語は続くのだから。

Fin.


後書き

この作品は私が高校の文芸部で一番最後に書いた小説です。いかがだったでしょうか。

書いてから一年と半年が経ちました。善悪はわかりませんが、今も白詰草は生きています。これからも、書くことは続けていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。



以下あとがきから一部引用

前後編となりましたが、これで完結です。最後の作品、いかがだったでしょうか。

このテーマは私がペンネームを白詰草に決めたときから、ずっと書こうと考えていたテーマです。つまりは最初から。好きな花だからというのも嘘ではないです。幸福に約束だなんて、素敵な花でしょう? でも、復讐という花言葉は話していなかった。言ったらネタバレになるからね。ずっと、この日を楽しみにしていた。最後はこれしかないなって。

私が小説を書き始めたのは、ファンタジーとか魔法の世界とかを思いついたからでした。それが自分を知ってもらうためになったのはいつのことだったか。良かったのか悪かったのかわかりませんが、この小説では、自分を表現できてよかったんじゃないかなと思います。

私に優しくない全てのものへ。まぁ平たく言えばあてつけ?

悲観的だし、典型的なNOを言えない日本人だし、メンタル弱い自分がいけないんだとはわかっているけど、それでも世界を恨まざるをえなかった。そんな気持ちを込めて、トリフォリウムというキャラをつくりました。彼女が作中で書いている小説、あれはもろ彼女及び私の肩代わりの作品。

生きにくい人もいることを知ってほしい。生きにくいのはあなただけじゃない、心配することないと知ってほしい。それも同時に言いたかったことです。色々詰め込んだ感も否めないけど。


初期案のオチでは文芸部は廃部させるつもりでした。でも現実の文芸部がどうにか存続させてもらえることになって、救いを見せても良いかなと思ったんです。もともと私はハピエン厨なのでこれで良かったと思う反面、復讐をしたくて私だけが楽しくて、周りには妙な心の残り方をすればいい、というようなオチもよかったんではないかと思っています。まぁどうせそんな高尚なもの書けないのですが。


とまぁ、私の書きたいものを優先したこと、力量が足りなかったことなど、足りなかったこともありますが、今までで一番良く書けたのではないかと思っています。キャラも愛着湧いてるし。



終わりと別れへの感傷はおまけ本で思いっきりやったので。こっちは、ハッピーエンドとは言ったけど綺麗な終わりとは言えないこの空気で、終わりにします。これも復讐だね!

でも、白詰草は終わらない予定なので。またどこかでお会い出来たらと思います。


私の部活はこれで本当に終わりです。おまけ本と重なりますが、今までお世話になりました。

これからも文芸部のことを、どうぞよろしくお願いします。


それでは。ありがとうございました。


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