7話 20世紀の天才アインシュタイン
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長かった高校入学初日がやっと終わり、放課後の私は帰ろうとして──。
「ガウディ、今から体力測定ですよね? 私のせいで居残りになってしまった訳ですし、手伝いますよ」
ヒトラーに呼び止められた。
そういえば放課後に、授業中全ての種目を出来なかった人は体力測定をやるんだった。
「なんだか面白そうだし、私も手伝うよ」
ニヤニヤしてそう言いながら近づいてきたのは、クラスで一番背の低いアンリ。
この2人は、私が校舎の建築を任された時に走って逃げたので、無理矢理付き合わせようとしていたが、自分たちから来てくれるとは。
アンリの動機が少し気になるが、心の広い私はその程度の事では動じない。
私たち3人は体操服に着替えると、夕焼けに染まるグラウンドに出て、舩坂弘先生の元に集まった。
ノーベルは未だ説教中なので、明日居残りになるだろう。
私たちの他には、女子生徒1人のみ。
体操服に着替えているため、服装から誰かを確かめることは出来ない。
相手は他クラスの生徒。
クラス対抗戦に向けて、ここで諜報活動を行うのも悪くないが……。
両目に鉤十字を浮かべるヒトラー。
額に赤十字を浮かべるアンリ。
目の前の相手が世界史に疎く無ければ、すぐにでもこちらの正体はバレるだろう。
アンリはともかく、ヒトラーなんて誰でも勘づける特徴がある。
私が建築してサングラスでも掛けてもらおうか。
私は、建築したサングラスをヒトラーに、ハチマキをアンリに渡し、着用させようとすると。
「ガウディ、これはなんですか? 夕焼けもそこまで眩しくないですし、これを掛けたら寝そうなのですが……」
「なんでハチマキ? え、なに? これで縛って欲しいの?」
馬鹿なことを言う2人に、私はそれらを無理やり着用させた。
「ヒトラーはサングラスで眼の鉤十字を隠して。アンリはハチマキで額の赤十字を隠して。いいね? 私たちの情報が他クラスにバレるかも知れないんだから」
私は不服そうな2人にそう言い付けると、今度は逆に相手の正体を見破るために、彼女の観察を始めた。
相手の女の子は肩口までの銀髪。
おっぱいはノーマルサイズ。
まだ許せる。
さらに、琥珀色に輝く両目と、彼女の周りを取り巻く無数の公式。
光り輝くそれらの公式が、ゆっくりと彼女の身体の周りを旋回していた。
私はそのうちの一つを凝視してみると……。
『E=mc²』
あ、分かった。
彼女はアインシュタインだ。
エネルギー=質量×光速度の二乗の関係式を1905年に論文内で発表した、アルバート・アインシュタインだろう。
ささくれを弄っている彼女の容姿を、私が凝視していると。
「それでは、1組アインシュタイン殿、2組ガウディ殿2名の再体力測定を始めるであります。それでは、まずは50m走から始めるでありますよ」
先生が敬礼しながら体力測定開始を宣言した。
なるほど、アインシュタインは1組の生徒らしい。
「「了解であります」」
先生の真似で敬礼して返事した私たちに、先生が何か言いたげな目を向ける中。
「そういえば、アインシュタイン殿。授業中に行った、ワームホールによる空間転移でズルをするのは禁止でありますよ?」
先生がアインシュタインに冷たく言い放った。
どうやら彼女は、授業に出席はしたものの、才能を使ってズルをしたらしい。
そしてその才能がワームホールだとか。
ワームホールの時空構造モデルをローゼンと共に発表し、アインシュタイン・ローゼン橋とそれが呼称された事が、彼女の才能の由来だろう。
彼女の才能を暴くことには、期せずして成功したが……ワームホールなんて最強の部類ではないだろうか。
負けそうになったら即退散、遠距離からの不意打ちなど、使い勝手が良すぎる。
試験で彼女を倒せるビジョンを、私が浮かべられずにいると。
「もぉ〜先生っ、そんな硬いこと言わずにさぁ! いいじゃんっ、私だけ50メートル走のタイムが0秒でもさぁ! ねっ?」
体をクネクネと動かしながら、先生に詰め寄るアインシュタイン。
だが、JKに詰め寄られるにも関わらず、普段と変わらぬ仏頂面で。
「それはダメであります。さあ、真面目に走るでありますよ」
「あぁん、もぉいけずぅ!」
アインシュタインが指を咥えて上目遣いで先生に誘惑を続ける中、私はコースについた──。
「────7.9秒!」
私が走り終えて肩で息をしていると、アンリがタイムの報告をしてくれた。
我ながらなかなかに早いんじゃないだろうか。
私が自身のタイムに満足していると。
「……あれっ、いつの間にゴールしたんですか!?」
アインシュタインのタイムを測っていたヒトラーが叫んだ。
「アイン殿、才能の使用は禁止してるでありますよ」
先生に注意されてやり直しを要求されるも、懲りずにワームホールを使い続けるアイン。
ヒトラーが合図をすると同時にワームホールを開き、スタート地点とゴール地点を結ぶ。
走り出してすぐに穴に突入し、ノータイムでゴールする。
…………アインは体力測定の意味がわから分かっていないのだろうか。
私は溜息をつき、アンリと共に歩き出した。
懲りないアインのおもりは先生とヒトラーに任せ、私とアンリは次の種目に移行した。
【偉人紹介7 アルバート・アインシュタイン】
〈作中〉
銀髪と琥珀色の目を持った、明るく元気な性格。
常に白衣を羽織り、黒い手袋を付けているビッチ。
どんな些細な距離でも、才能を使って移動する横着な人。
光り輝く多くの公式が、常に体の周りを回っている。
この公式は物理的なものでは無いので、触れることは出来ない、エフェクトみたいなもの。
〈才能〉
自身を含め、全ての物体を通すことが出来るワームホールを開くことが出来る。
ワームホールの直径は30cmから10m。
同時展開できるワームホールは1ペアのみ。
距離による制限はないため、作中最強クラスの才能。
〈史実〉1879~1955
ドイツ生まれの物理学者。
舌を出して映る写真はあまりにも有名。
特殊相対性理論、一般相対性理論相対性宇宙論などなど、数多くの理論を提唱した、歴史上最も優れた人物の一人。
「20世紀最高の物理学者」、「現代物理学の父」と評される。