60話 完敗
ポルポトがその右手を私に向けて伸ばしてくる。
その手に触れられた対象は腐ってしまうと、孔明からは聞いている。
私は目の前にコンクリート壁を建築して、その攻撃を防いだ。
壁にとめられた手は、触れたそれをみるみるうちに腐食していった。
触れて数秒で崩れ落ちる壁を見て、私はこの戦いの不利を悟った。
私がいくら建築しようとも、全てはポルポトに崩される。
つまりは防戦一方となる。
ポルポトの才能はある程度把握出来たし、次の敵に移るか?
私は追撃してきたポルポトの手を躱しながら、逃げる準備をした。
しかし、ポルポトも身体能力が高いのか、なかなか引き離すことが出来ず、雷雨の中追いかけっこが始まった。
「うおおおおおお! 建築建築建築!」
「…………待て…………!」
壁を建築しながら全速力で逃げる私を、障害物を全て腐食で崩しながらポルポトが追ってくる。
くそっ、このままじゃいつ追いつかれるか分からない。
反撃に出てみるか?
私は踵で地面を踏みしめ急ブレーキをかけた。
そしてそのまま振り向きざまに建築を……しようとして、ポルポトの手が私の薄い胸を捉えた。
「しまっ……!」
ポルポトの腕から腐食が伝播していき、それが指先から私の胸にまで伝わっていく。
私の目はスローでその光景を捉え、攻撃をくらった私は後ろに倒れ込んだ。
私の胸からは腐食が広がっていき、体を蝕んでいく。
HPはグングンと削られていき、もう半分もない。
これは……負けちゃったか……。
腐食の才能は攻防一体でかなり強いし、仕方ないか……。ん、あれ?
そもそもどうしてポルポトの才能は腐食なんだ?
確かに、史実のポルポトは『腐ったリンゴは、箱ごと捨てなければならない』と唱えている。
しかし、原始共産主義を掲げ、大昔のような生活に回帰することを目標としたポルポトなら……もっと別の才能になるんじゃあ…………。
……回帰?
まさか……腕から生まれる腐食……腐った制服の袖……いつの間にか健全な状態に戻る腕…………つまり、ポルポトの才能は1つじゃなくて……!
残りHPが僅かな私は、上体だけ起こしてポルポトを探した。
もしもポルポトにあれをされたら……まずい!
私が見つけたポルポトは、本多光太郎によって強化されたビスマルクに握られ、大空の孔明に向かって投げられようとしていた。
これは完敗だな……。
アダムと決戦を繰り広げる孔明に向けて投擲されたポルポトを目で追いながら、私は敗北を悟った。
HPが0になった私は、光となり消えゆく瞬間、ポルポトのもう1つの才能、回帰の才能により孔明の洗脳状態が過去の状態に戻される、つまり解除される瞬間を目撃した。
これは……まずい展開になったなあ……。
私の意識が途絶える間際、投げられていたポルポトが落下死した。
……私の頑張りはいったいなんだったんだ!
【偉人紹介20 ポル・ポト】
〈作中〉
彫りが深い顔に、チリチリの銀髪をもったガタイのいい男。
大人しい性格で、寡黙。
背が高い上に顔が怖いため、小さい子共からは怖がられるが、本人は小さい子が好き。
ロリコン。
〈才能〉
①腕から腐食を発生させ、触れた対象を腐らせることが出来る。
②半径10メートル以内の対象物の状態を戻すことが出来る。
これで①の才能で腐食した腕を回帰し、ダメージを無くしている。
〈史実〉1928~1998
赤色クメールの指導者で、民主カンプチアの独裁者。
本名はサロット・サル。
原始共産主義を唱え、有識者など国民の3分の1を虐殺した。
「腐ったリンゴは、箱ごと捨てなければならない」




