59話 腐食
着陸してすぐに眠ったヒトラーを近くにいたアンリに任せ、私は敵陣地に突入した。
落下する時に建築したパラシュートは解体してあるので、潜入していることは気付かれていないだろう。
暴れ回ったあと隙を見て脱出しようとは思ったが……ここで倒された方が楽に拠点に戻れるし、こちらの情報を与えないようにして戦って情報を手に入れることにしようか。
私はそんなことを考えながら、曇天ゆえに暗い敵拠点内の壁を伝って進んで行った。
相変わらず、拠点の外では孔明とアダムが超決戦を繰り広げている。
いくつもの落雷が地を穿ち、豪雨と竜巻がフィールドを荒らしている。
孔明を味方にしている今はいいが、味方にできていなければアダムの才能で孔明2人分を相手にすることになっていた。
ノートンには感謝しなきゃなあ。
私が初めてノートンに感謝していると、目の前にうっすらと人の姿が現れた。
味方は潜入していないだろうし、おそらく敵だろう。
それでも私は一応様子見として、無言のままつっ立っていた。
「……オマエ……敵か?」
目の前の影が発した男の声で、そいつは敵だと判明した。
「味方だよー」
私は棒読みでそう答えると走り出し、建築した日本刀で胴を横から斬り裂……こうとして、敵の手に止められた。
止められただけでなく、敵の手に触れた刀の歯がボロボロと崩れていった。
「なっ!」
私は反撃を警戒して後ろに飛んで下がり、相手の出方を伺った。
「……味方なのに…………攻撃したのか……?」
しょんぼりした声で目の前の敵は聞いてきて……まさか、本気で信じてたの?
「い、いや、本当は敵だよ……。ごめん……」
「……敵、か………………」
寡黙な性格なのかポツポツとしか喋らない敵が、悲しそうに呟いた。
なんか可哀想になってくるな……。
私は気を削がれ、どうするべきか思考していると。
「……敵……なら…………倒さないと……」
男は無感情にそう呟き、壁に手を置いた。
すると、その壁はみるみるうちにボロボロと崩れていき、間もなく天井まで崩落した。
屋内から室外へと変わったその場で、幾分か明るくなったため敵の顔が見えるようになった。
彫りの深い顔に、チリチリの銀髪。
制服を着用し、シャツの袖は肘から先が無くなっている。
ジロジロと敵を観察していた私は、鼻を突く悪臭により、地面が泡立っていることに気が付いた。
先程崩れた壁も、経年劣化したように見える。
これは…………腐食……?
腐食ということは……孔明から聞き出した情報ではこの敵は……。
「……私は……ポルポト。…………参る」
ポルポトが私に手を向け突っ込んできた。




