57話 蜃気楼
敵陣地に着いて間もなく、孔明が真下の敵陣地に雷の嵐を降らせた。
それは私たちに当たることはなく、全てが地面に向けて落ちていく。
私は下を覗いてみると、地を穿つ落雷を避けるように、何人かが逃げ惑っているのが見えた。
「それじゃ孔明、あとは任せたよ。全力で潰していいからね」
私にそう言われた孔明は、こくりと頷いて落雷だけでなく、幾つもの竜巻まで出現させた。
ほんと……チート才能だな……。
私たちが快適な空の旅を楽しんでいる中、孔明はただひたすらに元味方の陣地を攻撃していた。
ノートンを愛しているだけでここまでさせることが出来るのか……。
私は愛の力の恐ろしさを思い知りながら、弓矢を建築して適当に真下を射っていた。
「ガウディさん、ガウディさん、何してるんですか?」
「ん? 暇だからただ撃ってるだけだよ」
私の隣まで動いてきたヒトラーが、私の全く命中しない狙撃を楽しそうに見ている。
そんなホンワカした状況の私たちに、敵が反撃してきた。
その反撃の直前、敵の動きに違和感を感じた私は双眼鏡を建築して覗き込んだ。
敵陣地には数本の避雷針が建てられており、恐らく鉄製品を生成できる本多光太郎が居るからだろうと窺えた。
避雷針がその役割を果たす中、地面に大量の鉄製品が現れ……次の瞬間、その全てが敵の一人に吸収された。
私は双眼鏡から目を外し、肉眼で大地を蹴り空に飛ぶ男を見た。
鉄を吸収し自己を強化する才能を持つビスマルクか……!
地を蹴ったビスマルクは猛スピードで孔明の元に飛び、握った拳を振り抜いた。
しかし、その拳は孔明の像をすり抜け、空を切る音が響く中、先程まで孔明が見えていた場所から少し離れたところに、彼女は現れた。
「あなたがたの攻撃は全て通らないと存じます。ダウンバースト」
「クソっ、蜃気楼かっ!」
ビスマルクはそう叫びながら、猛烈な下降気流によって地面に叩きつけられた。
私は涼しい顔で味方を攻撃し、すぐノートンの元に寄る孔明を見て戦慄した。
蜃気楼まで使えるのか……。
あの時まともに戦っていたら、勝ち目はなかったかもしれないな。
一切の攻撃を受けることは無いが、孔明にのみ矛先が向けられているということは、敵に見向きもされない私たちは蜃気楼で遠くに像が作られているのだろう。
圧倒的な実力を見せつける孔明による蹂躙が続き、下から放たれる衝撃波のような攻撃すらも蜃気楼で躱す孔明。
圧勝が確定したと思われたその瞬間、1人の敵が私たちと同じ高さまで浮遊してきた。
ん……敵の空を飛べる偉人……?
孔明から聞いた情報では……あれは恐らく……!
4組の中で孔明に次ぐ強敵を目にした私は、すぐさま孔明に私を下まで送るよう指示した。
地面付近に降ろされた私は、一瞬で避雷針を建築した。
すると、その浮遊している敵が放った雷撃が、その避雷針を直撃し、私は吹き飛ばされた。
今日はよく飛ばされるなあ。
私はそんなことを思いながら孔明が操る風によってアンリのところまで運ばれた。
敵の姿はよく見えないが、孔明とその敵は睨み合っていた。
奴はおそらくアダム。
才能は相手の模倣をするというもの。
相手が強ければ強いほど、自身もまた強くなる才能だ。
「おい、孔明! どうして私たちを裏切ったのだ!」
アダムの方から聞こえてきた女性の声に……女性の声?
全人類の父、アダムが……女なん?




