55話 溺愛
ノートンの才能によって無力化された敵が、ナルシスト皇帝にベッタリくっついて離れない。
そんな光景を私たちは眺め、状況を理解出来ずにいた。
「いーなーノートンは。おい変われよ。俺も女の子に抱きつかれてぇよ」
空気を読めず馬鹿な発言をするクソ爆弾が、女性の肩に触れようとして彼女の手に弾かれた。
「なんの活躍もしてないくせに、しゃしゃってんじゃないわよ」
手を弾かれて固まるクソ爆弾に私がボソッと呟いた一言に、ノーベルが鋭く反応してこちらを向いた。
「おいおい聞き捨てならねぇなぁ、建築娘さんよぉ? おめぇさんだって活躍してないじゃーん?」
くねくねと体をよじらせて煽ってくるクソ爆弾に、私はドヤ顔で煽り返した。
「はっ、どこ見て言ってんのかしら、あんたは。私は避雷針をたくさん建築して、みんなの被弾を減らしたのよ? あんたが今生きてるのも私のおかげ。分かったら感謝しなさい?」
舌をべっと出して煽る私に、ノーベルは無言のまま……。
右手にダイナマイトを生産して投げつけてきた。
「なっ!?」
私は慌てて後ろに飛び、目の前に鉛の壁を建築した。
防壁を建築してノータイムで爆発し、私は衝撃で軽く飛ばされた。
「あっぶねぇ! なにしやがるクソ爆弾! これでも喰らえ!」
私は今回の試験のために練習してきた、投げナイフともう1つの遠距離攻撃手段、弓を建築した。
それに建築した矢を番えて、ノーベルの頭をめがけて放った。
ノーベルはダイナマイトを生産し、それを投げて矢に当てて被弾を防いだ。
「ちっ、惜しいっ! もう一回!」
「へいへーい! 当たってないよぉ? これでも喰らえ☆」
互いに攻撃し合う私たちに、アンリとヒトラーが呟いた。
「なんで敵との戦闘が終わって、すぐ同士討ちを始めるかなー」
「あの、ガウディさん……声が怖いのですが……」
荒ぶっていた私は2人に毒気を抜かれ、弓矢を解体した。
そして放置していたノートンと抱きつき、ピンクのハートが見えるくらいにイチャイチャする女に目を向けて。
「どうすんのこれ……」
「さあ……とりあえず、ノートンには忠実だろうし情報を抜き出してもらわない?」
私のボヤキにアンリが反応したが、そもそもどしうてノートンは敵に惚れるよう命じたのだろうか。
ただ単に才能の行使を禁ずれば勝てたと思うのだが……。
見れば、ノートンは鼻の下を伸ばして、体にくっつけられている巨乳をチラチラと見ている。
…………クソッタレが!
私は自分の胸に手を置き、敵によって焼け焦がされた地面を踏み締めた。
だが、大人な私は気持ちを落ち着け、敵から情報を抜き出すことにした。
「で、あなたは何者? 他の仲間の情報も教えてもらおうかしら?」
私に尋ねられた女は、こちらを肩越しにチラッと見て。
「あなたに答える義理はないと存じます」
そう答えると再びノートンの体に顔を埋めた。
「おいノートン。このクソ女から敵の情報を抜き出すわよ。色々聞いて」
「か、顔が怖いぞ……。よし、それでは我の質問に答えてもらうぞ?」
私の顔に怯えたノートンが、巨乳クソ女を見下ろして質問を出した。
「まずは君の名前から教えてもらおうか! 勅令である、我に自身の名を教えたまえ!」
あー、なるほど……ノートンも考え無しに惚れさせたわけじゃ無いのかもなあ。
惚れさせて溺愛状態ならば、どんな命令だって聞くだろうって算段だったのかも知れない。
ノートンが再び才能を行使すると、女は顔を赤らめて答えた。
「わ、私は孔明でございます。諸葛孔明です」
孔明か……。
確かに、天気を操ったという逸話も残っているし事実だろう。
私はノートンの才能の効き目を再確認すると、腕まくりをして口元を歪ませた。
これで敵の全ての情報を抜き出せる!
「さーて、それじゃあ、お楽しみタイムの始まりだ!」
「お楽しみタイム!? なんだ!? エッチなことするのか!?」
「黙れノーベル。取り調べよ取り調べ」
【偉人紹介19 孔明】
〈作中〉
桃色の漢服を装い、扇子を手にした女性。
落ち着いた性格で、体を動かすことは苦手。
史実の孔明ほどでは無いが、そこそこ頭が回る。
しかし時々、天然要素を発するので一部の男性に人気がある。
〈才能〉
豪雨や落雷など、ありとあらゆる気象を操ることが出来る。
風を使って人や物を浮かせることも可能であり、空中に逃げることで大規模な範囲攻撃が可能。
生身の人間では耐えきれない大自然の猛威で攻撃することや、攻撃の届きにくい上空に逃げられることなどで、作中最強の実力を誇る。
〈史実〉181~234
言わずと知れた中国後漢、三国時代の軍師。
後に蜀を建国する劉備に仕え、曹操の魏や孫権の呉と戦った。
呉と組んで魏と戦った赤壁の戦いや、死してなお戦線に影響を与えた北伐の戦いなどで有名である。
雨を降らせたり、風向きを変えたりするといった逸話が残っている。
「天下は一人の天下にあらず、すなわち天下の人の天下である」




