52話 判明
お互い、相手の偉人が誰かということを把握した状況で、私とビスマルクは対峙していた。
頭の悪いヒトラーが、何故か私の名前を暴露してしまったが……まあ仕方ない、あとでお仕置をするとして、今は勝つことを考えよう。
「なあ、だからガウディって誰だよ。何した偉人だよ」
「言うわけないでしょ。バカじゃないの?」
頭が残念なビスマルクが、敵である私に何故か情報を求めてくる。
この学園にはこんな奴らしかいないのか。
しかし……2対1で数的有利なのはこちらとはいえ、まるで鋼鉄のような肉体のビスマルクに勝てるのかな……?
もう一人の鎧男は閉じ込めているとはいえ、いつか出てくるかもしれない。
ここで負けたら、私たちは1分後に拠点でリスポーンか……。
だとしたら………………。
その時、私が鎧男を閉じ込めておいた部屋の壁が、音を立てて砕け散った。
見れば、鎧男は鉄製のハンマーを手に持っており、それを使って壊したのだろう。
これで圧倒的に不利な状況か……。
やはり、あの作戦で行くしかないな。
なら、あとは鎧男の情報を……!
「…………戦略的撤退!」
私は踵を返すと、ヒトラーの元へ走って逃げた。
「ヒトラー、逃げるよ!」
私はヒトラーの耳元で相手に聞こえないよう言うと、手を取って一緒に逃げ出した。
突然背を向ける私にポカンとしていた敵は、すぐに私たちを追いかけてきた。
そうだ、それでいい。
あとはそれで手の内を全て出してくれればいい。
「ガ、ガウディさん、どうして逃げるんですか? 怖くなったんですか?」
私に手を引っ張られながら、走るヒトラーが聞いてきた。
「怖いわけじゃないわよ。考えてみて。今はまだ試験の序盤でしょ? そんな所であいつらを倒すと、奴らは1分後に拠点に湧くの。そしたら、そこで私の情報が漏れちゃうの。それなら、敵の情報をもつ私たちが倒されて、拠点で情報共有した方がこの先有利になるのよ」
私は早口で言い終わると、後ろを肩越しにチラリを覗いた。
やはり敵はまだ追ってきている。
あとは自然を装って敵を拠点から離しつつ、情報を抜き取れば……!
あとはあの鎧男の才能だけか。
ビスマルクの才能で鉄製品が消されていたことは分かったから……鎧男の才能は……。
引力や斥力を働かせる、鉄製品の生成。
この2つだな。
引力と斥力か……離れている物体間で働く力は……重力と磁力と静電気力だったはず。
重力は引力のみだから違うとして、磁力か静電気力。
鉄に関する偉人かつ、磁気か電気に関わる偉人で、あの才能を使えそうな人物は……。
鉄と磁気……鉄と電気…………まさか?
恐らくは、あの鎧男は……!
私は鎧男の正体に目星がついたため、足を止めて振り返った。
他の3人も足を止め、睨み合いの状態になった。
私は息を整えながら、鎧男を指さして言った。
「あなた達2人の正体がわかったわよ。ビスマルクはさっき判明して、そっちの鎧男は本多光太郎でしょ?」
「なっ!」
私に本多光太郎と呼ばれた鎧男は、図星なのを隠さずに顔に全て出した。
やはり本多光太郎か。
鉄の神様と呼ばれ、KS鋼などの永久磁石を発明した偉人なら、あの才能でも納得だ。
「おいビスマルク、あいつはなんなんだ! どうして俺の名前がバレた!?」
「奴らの才能は分からん。だが、あの茶髪の貧乳はガウディと呼ばれていたぞ」
だっ、だれが貧乳だ!
ぶっ殺してやる!
相手のバカ2人の会話に、私は頭に血を昇らせた。
「ガウディって誰だよ。ガリバルディのことか?」
「ガリバルディ? ああ、それは聞いたことあるぞ」
「ならガリバルディじゃね?」
「そうだな。ガリバルディだな。おい、そこの貧乳のガリバルディ!」
貧乳だと煽られることによる怒りと、相手の悪すぎる頭への同情とで、私の感情は複雑なものになっていった。
「ガウディさんって……ガリバルディって名前だったんですか?」
「えっとね。ヒトラー、違う」
【偉人紹介17 オットー・フォン・ビスマルク】
〈作中〉
黒髪の冴えない男。
才能の相性ゆえ、本多光太郎とよく一緒に行動している。
落ち着いた性格で、主人公になれないタイプの男。
準モブキャラなので、特筆することは無い。
〈才能〉
鉄や血を消費することで、自身の肉体を強化できる才能。
本多光太郎の才能で生成された鉄や、自身が攻撃され飛び散った血などで使用する。
肉体を強化し続けることで、鋼鉄のような硬さを持つ体に変質することも。
〈史実〉1815~1898
プロイセン、ドイツの政治家。
プロイセン王国やドイツ帝国の首相であり、ドイツ統一の中心人物である。
鉄血政策と呼ばれる富国強兵策で有名。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」




