50話 飛び交う刃
祝・50話です!
鎧男と対峙する私は、その後ろで腕を組んで戦いを見守るもう一人の男も警戒しつつ、ヒトラーを足でつついて起こそうとした。
しかし、ヒトラーは起きること無く気持ちよさそうにいびきをかいている。
まさか、ヒトラーが起きないのは相手の才能?
いや、それだと私が眠らせられないのは不自然だ。
相手方の才能は恐らく、鎧男の方が鉄製品の製造で、もう一人が引き寄せるものだろう。
私は手にしていた鉄剣を解体し、両手に小型ナイフを建築した。
お互いのHPはまだ満タンの100。
数では2対1の不利な状況。
相手にできることは恐らく近接戦闘のみ。
そこで私は、スローイングナイフを用いて、遠方から敵を仕留めることにした。
とりあえず双方の間に壁を建築し、敵の視線を遮る。
その隙に私は、役立たずなヒトラーを抱え、適当な茂みに投げておく。
私がある程度距離をとり終えると、鎧男が鉄の槍に持ち替え壁を砕いていた。
「さあ、逃げずにやり合おう。似たもの同士だろう?」
鎧男はそう言うと、私の体は再び前方に引っ張られた。
そこまで強い訳では無いため、耐えることは出来るが少しずつ前進して距離が縮まってしまう。
私は踏ん張りながらナイフを鎧男に投げつけた。
そのナイフは鎧男の腹の辺りに直撃し、HPバーを少しだけ削った。
やはり鎧のせいでダメージが入りにくいか。
だが塵も積もれば山となる、このまま投げ続けてみようか。
私は後退しながら振り向きざまにナイフを投じた。
しかし、そのナイフは鎧男の体に当たる直前に減速し、直撃することなく弾かれた。
…………なに?
どういうことだ?
今のは鎧男が弾いたのか?
それとも、もう一人の男が才能で?
一体、どんな才能で引き寄せたり弾いたりをしているのだろうか。
引力と斥力、この2つを有している才能だろうが……ニュートン先生のような才能だろうか。
いや、それとも……ヒトラーのように一人が複数の才能を所持しているのか?
私は考えがまとまらないままナイフを投げ続けるが、その全てが相手の体に当たらず弾かれるばかりか、鎧男も鉄製ナイフを生み出して投げつけてきた。
私は木の影に隠れ、時折顔を出して牽制すると複数のナイフが木の幹に突き刺さった。
むぅ……これはかなり不利な状況だ。
せめてもう1人味方がいれば……。
ほぼ無心で建築したナイフを投げ続けていた私は、そこであることに気がついた。
私が投げたナイフが、解体されること無く消滅していた。
ナイフどこに消えた?
チーズでもないのに消えるはずが無いだろう。
まさか、私の投げたナイフは鎧男に当たる前に消されている?
全く考察がまとまらない私は焦り始め、汗が吹きでてきた。
このまま膠着するだけでは……何か行動を起こしてみようか。
私は木の影から飛び出し際にナイフを投擲し、相手のナイフを建築したコンクリート壁で防いだ。
そのまま少し先にも壁を建築し、今度はそこまで走る。
遠距離戦では勝利に繋がらないと判断した私は、建築した壁の影に隠れながら、敵に近づいていった。
私の才能の射程範囲内にまで敵と近づいたとき、複数のデコイを建築しながら鎧男の懐に潜り込んだ私は。
鉄剣で腹を斬られながらも、鎧男を閉じ込める小さな部屋を建築した。
厚さ50cmのコンクリート壁で四方と上を覆われた空間に鎧男を閉じ込めた私は、直前の反撃で50近くのダメージを喰らってしまった。
仮想空間なので血が出たり傷がついたりはしないが、回復手段が才能によるもの以外ないので、これはかなりの痛手となる。
私に閉じ込められた鎧男が、暗い部屋の中で何かを叫んでいる中、もう一人の男がやれやれと肩を竦めながら近づいてきた。
「ふう、やっと俺の出番か。お前たちがナイフを投げつけあったお陰で助かったよ」
男は訳の分からないことを言いながらコキコキと首を鳴らすと……身体中の筋肉が盛り上がり、鋼鉄ボディのマッチョとなった。
うわあ、きもちわる…………。
突如体が変質する謎の敵から生理的な理由で距離をとる私のそばで、ヒトラーがやっと目を覚ました。
「ふわわ……ガウディさん、おはようございます。あれ、何してるんですか?」
遅い。
何してるんですか、じゃない。
「さて、金髪女も起きたことだし、さっさと倒して終わらせようか!」
マッチョ男は腕を広げると、私に飛びかかってきた!




