49話 鉄
潔く陣地を飛び出し、あてもなくフィールドを歩いて十分近く。
私とヒトラーは他のクラスメイトからはぐれて無為に歩き続けていた。
地図もなく、自分たちがどこに向かえばいいのかも分からず、4キロメートル四方という広大な空間を散歩していた。
「結構広いんだねぇ。これなら敵ともすぐには遭遇しないかな」
「遭遇しても撃退してやりましょう!」
ヒトラーがシュッシュッと拳を放ちながら、私のあとをついてくる。
撃退するといっても、攻撃手段の持たないヒトラーと、近距離線しか出来ない私では厳しいと思うのだが……。
私は敵に遭遇しないことを祈りつつ森の中を歩き、二人の男が茂みの中から急に目の前に現れた。
相手側も急な接敵に驚いたようで、一瞬動きが止まった。
ここは逃げるべきか?
いや、ヒトラーの掌握術で相手の偉人と才能を見抜いてもらおう。
それまでは、私が時間稼ぎをすれば……!
私はヒトラーの方をチラリと見て、気持ちよさそうに眠る姿を見て絶望した。
どうしていつもヒトラーは、寝て欲しくない状況で寝てしまうんだ!
私はヒトラーを庇いながら2人の前に立ち、身構えた。
「やっと敵さんにあたったか。さっさと倒しちまおうぜ」
黒髪の男が眼鏡の男にそう言うと、眼鏡の男は頷いて。
前に突き出した右手に鉄剣が現れたかと思うと、全身が鋼鉄の鎧に包まれた。
「なっ!」
一瞬にして変身した敵に驚いた私は、すぐさま斬りかかってきた敵から後ろに飛んでそれを躱した。
ふぅ……。
一人は鉄か鎧に関する偉人か。
もう一人の男は何もしてこないし、攻撃手段を持っていないのかも知れない。
鎧の男だけなら、近接攻撃しかしないだろうし、私だけでも何とかなるかもしれないな。
私も同じく手に鉄剣を建築すると、剣道の本で読んだとおりに構え、敵を見据えた。
私が鉄剣を生み出したことに若干の驚きを見せる鎧男。
「私もアンタと似たような才能を持ってんのよ。さあ、斬り合おうじゃない?」
私は微笑みながらそう告げると、強く踏み出して鎧の隙間、首元に突きを入れた。
しかし、捉えたと思った私の剣は、鎧男が顕現させた鉄の盾によって弾かれた。
なるほど……鉄または装備に関する偉人か。
鉄に関する偉人の方が多いし、おそらく前者だろう。
そして才能は、鉄製品を生み出せるといった感じだろうか。
私はおおよそのあたりをつけると、再び身構えて。
膝がガクンと揺れた。
驚く私の体が、鎧男の方に引き寄せられていた。
これがもう一人の敵の才能か?
引力? 誘導?
考える間もなく鎧男との距離は縮まり、敵が斬りかかってきた。
私は敵と自分との間にコンクリート壁を建築し、それを防いだ。
こちらは動けないヒトラーを連れ、謎の引力により逃げることも出来ない。
なかなか不利な状況じゃないか。
燃えてきた!
私は敵の引力に耐えながら、次の策を考えた。




