45話 里帰り
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ゴールデンウィーク中盤、人の多い電車に乗って、私は実家に戻っていた。
ほぼ1ヶ月ぶりの家族との対面に若干緊張しながら、私は実家の扉を開けた。
「ただいまー」
事前に帰るという連絡は済ませているため、今日は何も連絡を入れずに帰ってきたのだが……。
私が扉を開けてリビングに入ると、お父さんとお母さんが迎えてくれた。
「よく帰ってきたなあ、史愛! 大きくなったんじゃないか? でも胸はまだ小さいな、ははは!」
「おかえりなさい史愛。あら、髪を茶色に染めちゃってえ。目も水色になってるじゃない。カラコンでもつけてるの?」
常日頃ガウディ、ガウディと呼ばれているからか、自分の本名が斎藤史愛だということを今の今まで忘れかけていたが……私の両親が人の話を聞かずに喋り続けるめんどくさい人だということは忘れていなかった。
私は頭からソファにダイブすると、顔だけ2人に向けて。
「まだ帰ってきたばっかりで疲れてるんだよ。それより2人ともお酒飲んでるの? いつもよりだいぶめんどくさくなってるよ」
私が無視している間にもずっと何かを話していた2人は一瞬だけ喋るのを止めると。
「まさか、昼間っからお酒なんて飲んでないさ! それよりその髪はどうしたんだ? 茶色じゃないか、はっはっは! なあ母さん見ろよ! 史愛がチャラくなってるぞ!」
「昨日5本飲んだけど今日はまだ飲んでないわよ。それより史愛はまだAカップ? 大きくなってないわね? 一体誰に似て胸が小さくったのかしらね? お父さんに似たのかしら?」
シラフでこれか。
留まることを知らない二人のおしゃべりな口は、こうなったらいつも1時間近くは止まらない。
私に久しぶりに会ったということもあって、今日は2人とも止まらないかもしれない。
私はふとテーブルの上に目が行き、そこにある空けられた缶ビール10数本を見つけてしまった。
飲んでんじゃねぇか。
昼間からガブガブお酒を飲むところが、ニュートン先生に少し似ていると思いながら、私は学校の購買で買ってきたお土産を両親に渡した。
「はいこれお土産。偉人学園限定の、偉人饅頭だよ。期間限定のニュートンのりんご味だって」
私が紙袋を渡すと、2人はすぐさまそれを開けて。
「おお! これは美味そうじゃないか! よく買ってきてくれたなぁ! ご褒美のギューだ!」
「ほんと美味しいそうな饅頭ねえ。ワインでも飲みながら頂きましょうか」
お父さんが私の顔に顎髭をジョリジョリと擦り付けながら、ハグしてきた。
私の腰に何か硬いものを当ててきたクソ親父を押しのけていると、お母さんが冷蔵庫から缶ビールを持ち出してきた。
まだ飲むのか……。
「ほら、史愛も食べましょう? このお饅頭美味しいわよ?」
何個も口に饅頭を頬張りながら、更に酔っ払った母さんが言ってきた。
私も椅子に座り、饅頭を1つ手に取りパクリと食べた。
ん、ニュートンをりんご味とかいうふざけた名前の割には、意外と美味しい。
私が2つ目に手を伸ばしていると、お父さんも椅子に座って。
「それにしても、史愛の胸は全然成長しないなあ。ちゃんとご飯食べてるのか? マシュマロとか食べたらどうだ?」
さりげなく私の胸を触ろうとしてきたお父さんの腕を強く握りながら、沖田さんにセクハラしてボコボコにされたせいで最近大人しくなっていたノーベルにこの変態は似ているなと思った。
先程から胸についてイジり続ける2人に呆れながら、私は才能を行使した。
私のブラの中に大量のパッドを建築し、私は胸を張った。
「じゃじゃーん、どう? 実はこんなに大きくなったんだよ? Eカップくらいあるでしょ?」
再び触ろうとしてくるお父さんの手を払い、私はドヤ顔で誇った。
「まあ、そんなに大きくなって! 今夜は赤飯でも炊こうかしら!」
娘の突然すぎる胸の成長を、赤飯を炊いて祝おうとするお母さん。
私は調子に乗って、さらに胸を張ると……。
ブラのホックがちぎれ、服の隙間からブラとパッドが滑り落ちてきた。
饒舌だった2人も口を閉じて固まり、リビングが静寂に包まれた。
…………もう実家には帰らないぃ!
チョウはモグラではない。
しかし、その事を残念がるチョウはいないだろう。
(アルバート・アインシュタイン)




