37話 スライム
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突如現れたスライムに、才能で私たちを襲うよう命じたノートン。
彼はその白いスライムの後ろに隠れ、ふんぞり返って髭を触っている。
腹立つなあのクソ野郎。
後で絶対ボコしてやる。
私は魔剣を迫り来るスライムに対して身構えた。
私の隣には未だに体調不良のラミレスが車椅子に乗っており、私がこの場から離れてしまうとやられてしまう。
ラミレスを庇いつつスライムを倒さなければならないのか。
「街から来た勇士たち! ボケっとしてないでスライムを倒して!」
ノートンに命じられて急に動かなくなったNPCたちに私が命じるも、まだ彼の才能の効力は切れていないのか動く気配はない。
「さぁスライムよ! そこの女二人の服を溶かしてエロい目に合わせてやるが良い! 触手でも粘液でも出して好きにやるが良い!」
えろ同人の読みすぎで、スライムがエロいことをすると思い込んでいるノートンが、スライムに命じた。
スライムはネチョネチョと地面をヌタヌタに汚しながら、ゆっくりと近づいてくる。
スライムと私たちとの距離はまだまあまああり、ラミレスの元に来る前に私が出向いて捌いてくる作戦もありだ。
しかし、万が一しとめ切れずに退却する場合、近くにラミレスという囮がいれば楽になる。
それでは本末転倒だが……ノートンがあのことに気づく前に、さっさと片付けるべきだろう。
目の前にいるのは白いスライム3匹。
どれも牛くらいの大きさで、あまり強そうには見えない。
ナイフでも建築して投げまくればいいだろうか。
私が手元に投げナイフを建築していると、隣のラミレスが騒ぎ出した。
「大変ですわガウディさん! 今ノートン君は『服を溶かせ』と命令しておりましたわ! つまり、わたくしたちの服が溶かされるわけですわ! わたくし今日は下着を履いておりませんの! 溶かされるとまずいですわ!」
迫り来るスライムに慌て、騒ぐラミレスだが……。
お前が下着を着ていないのはいつもの事だろうが。
私は覚えてるぞ。
入学初日に夜中の学校に侵入したあと、具合の悪いラミレスに『ノーパン主義ですの』と暴露されたことを。
「大丈夫だよ。ラミレスの裸なんて見て得する人はいないから」
「なんて失礼なこと言うんですの!? ガウディさんのつるぺたの方が需要がないですわ!」
宥める私が何故か失礼なことを行ったと冤罪をかけられ、更にはぺちゃぱいだと煽られた。
言ってくれるじゃないか。
そんなに一人がいいならここに置いておいてやろう。
私は車椅子に座るラミレスから少しずつ離れるように、後ろへ歩いていった。
それに対抗してラミレスも、車椅子を必死に後ろ向きに進ませている。
なんだ、やっぱり元気じゃないか。
私とラミレスがくだらないことで張り合っていると。
「勅令である! スライムたちはそこの女二人を囲うように距離を詰めよ!」
ノートンがスライムに命令を出すと、スライムどもはその命令通りに3匹が別れて迫ってくる。
全く役に立たないNPCの傍を通り抜け、どんどん私たちに迫ってくる。
こうして見れば、ノートンの才能は恐ろしいな。
「ほら、まな板のガウディさんが囮になるべきですわ! 私はノーパンノーブラですのよ!? たわわな私は裸を見せたらお嫁に行けなくなるじゃないですの!」
この状況を理解出来ていないらしいラミレスが、まだ私を煽ってくる。
そんなに裸になりたいのか。
いいだろう。
「何度も言うけど、私の体型の方が運動もしやすくて効率的なの。ただの脂肪をぶら下げてるだけの癖に、なに上から目線なの? 私のような体型の方がモテるしいいんですー」
私はラミレスを煽り返すと、彼女が乗る車椅子をスライムの方へ走らせた。
「ちょっ、ガウディさん!? シャレにならないですわ! 本当にお嫁に行けなくなりますわ!」
「大丈夫だって。ここは仮想空間だし。もし行けなくなったらノートンが貰ってくれるよ」
スライムが迫ってくるにも関わらず、なおも言い争いを続ける私たちに、ノートンがスライムの近くまで走ってきて言った。
「我は巨乳も貧乳もこよなく愛する賢帝であるぞ! 胸の大小で人の全ては決まらない。ありのままの君たちを、我は受け入れようとも!」
ポーズを決めながらかっこいいセリフを言うノートンだが、やってることはノーベルレベルのクソ行動なんだよなぁ。
「ガウディさん、わたくしスライムに服を溶かされたくないですわ! 今までのことは謝りますから助けて欲しいですわ! ガウディ様、本当にお願い致しますわー!」
スライムより早く動けず、このままでは確実に捕まってしまうラミレスが、私に助けを要請してきた。
しょうがないなぁ……。
私はラミレスの元まで走って戻っていった。
「ありがとうございますわ、ガウディさん。あとで実家から美味しいお菓子を送ってもらいますわ。……え、ちょっ、ガウディさん、どうしてわたくしの服を脱がせてるんですの!? 何してるんですの!?」
私はラミレスに美味しいお菓子を貰うため、彼女の服を剥ぎ取り始めた。
「何してるって、スライムに服を溶かされたくないって言うから、私が脱がせてあげてるんだよ。この服は私が持っててあげるから、これで溶かされないよね。その後はスライムと触手プレイでも楽しんでな」
私はラミレスのベストを脱がせ、シャツのボタンを外そうとして抵抗された。
「もしかしてまだ怒ってるんですの!? そんなトンチみたいなこと要求してませんの! わたくしも一緒に連れて行って欲しいんですの!」
私とラミレスが掴みあって言い合っていると、背後に影が刺した。
私は振り返ると、そこには触手を伸ばすスライムが。
咄嗟にラミレスを盾にしようと持ち上げた私の目の前で、そのスライムは切り刻まれて崩れ落ちた。
倒されたスライムから飛び散った白いネバネバが大量に降りかかる中、残りの2体も何者かによって切り刻まれた。
スライムが崩れ落ちたあとには、私たちと同じく白いネバネバに包まれた沖田さんが居た。
「なんなんだこの粘液は……」
沖田さんは全身のネバネバを取り払おうとして、それが剥がれず諦めると、不服そうな顔で私たちの方を向いた。
私とラミレスは、ノートンの方を指差して。
「「ノートンのせいです」」
沖田さんが逃げるノートンに斬りかかった。
刀で斬るな。体で斬れ。
(沖田総司)




