32話 惨劇! 我が家の晩ごはん
ブックマーク、評価もよろしくお願いします!
「よし、今から晩御飯を作ります。ヒトラー隊員」
「らじゃーです、隊長!」
スイーツ店から帰ってきた私達は、再びお料理探検隊を結成し、晩御飯の準備を始めていた。
エプロンと頭巾を装備する私たちの後ろでは、たわわな胸の下で腕を組む沖田さんが、私たちを監視していた。
くそっ、これではあまりふざけられない。
ギリギリなラインを見極めながらやっていかねば。
私はエプロンを装着し終えると、ヒトラー隊員に今日の献立を発表した。
「ヒトラー隊員、今から牛丼を作ります。まずはお肉を用意してください」
私がヒトラー隊員に指令を出すと、隊員は顎に手を当てて考え込んだ。
「隊長……もしかすると、私達はお肉を準備していないかもしれません……こうなったら、野菜だけで牛丼を作るしか……」
頭を抱えてウンウン唸り出したヒトラー隊員の肩に手を置くと、私はコンロの横にとあるものを建築した。
「ヒトラー隊員、肉が無ければ作ればいいじゃない。見て、今私が建築したこれは、牧場よ。北海道の緑に囲まれた大地を想像して建築したから、本物そっくりよ」
50センチ四方の土台に細かい芝を生やし、木製の柵で覆って、中には小さな小さな牛のフィギュアを幾つか配置。
完全に牧場を再現した私は、それをヒトラー隊員に見せつけた。
「なるほど、これで新鮮なお肉が手に入りますね! でも……牛さんたちの大切な命が………」
肉が手に入ることを喜んだ隊員は、直ぐに泣きそうな顔に変わった。
「大丈夫です、ヒトラー隊員。『いただきます』と言って、牛さんに感謝しながら食べることで、彼らは報われます」
私はヒトラー隊員を抱擁し、涙をふいてあげた。
「そうですね……美味しく頂いてあげましょう! それで、新鮮なお肉を使うなら、私はご飯にも拘りたいです!」
ヨダレを垂らし出したヒトラー隊員が、まさかの発言をしてきた。
私が先程買ってきた、コンビニの白飯は嫌だと言うのだ。
いや、しかし、美味しいご飯には、美味しいお米が必要だろう。
私は牧場の隣に、同じサイズで畑を建築し……。
「それではヒトラー隊員。畑を耕し、品種改良で新しいお米を作ります。まずはこの鍬で耕しますよ」
私はヒトラー隊員にミニサイズの鍬を建築して持たせると、2人で箱庭のような畑を耕し始めた。
なんだかT○KIOの気分だ。
私たちで最高の牛丼を作るのだ。
今は沖田さんに監視されているということを、ふと思い出した私は、ゆっくりと振り返った。
少し遅れてヒトラー隊員も、私と同じように恐る恐る振り返った。
「……ん? なんだ、茶番は終わったか? ならさっさと夜ご飯を作ってくれ」
終始黙って私たちの遊びを見ていた沖田さんが、表情を変えずに言ってきた。
「「あ、はい。すみません」」
私たちが冷蔵庫から材料を取り出し始めると、沖田さんの方から、ぐ〜〜とお腹がなる音がした。
まさかと思って振り返ると、沖田さんが若干顔を赤くして私たちから目を逸らした。
「ヒトラー隊員、今の聞いた!? 録音してない!?」
「すみません隊長! 録音してませんでした!」
「俺の腹の音を録音してどうするつもりだ! いいからさっさと作れ!」
真っ赤な顔で恥ずかしそうに叫ぶ沖田さんが、柄に手をかけると、私達は慌てて料理を始めようとした。
したのだが……。
私は材料だけ並べて、固まっていた。
隣のヒトラー隊員の方を見てみると……。
目が合ったヒトラー隊員は、私の思考を読み取ったのか、フルフルとかぶりをふった。
私とヒトラー隊員は、未だに赤い顔で不思議そうにする沖田さんの方を振り返り。
「すみません、私たち全く料理できないです!」
「ないです!」
バッと頭を下げる私たちに、沖田さんは驚いた顔で叫んだ。
「なっ、なぜそれを今まで言わなかった!? 言ってくれれば俺が変わりに作ってやったのに!」
その後、料理係を沖田さんに変わってもらい、美味しい夜ご飯を食べることが出来た。
平和は剣によってのみまもられる
(アドルフ・ヒトラー)




