31話 イジンスタグラム
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魔王軍との戦いが終わったあと、放課後を迎えた私達は、夕日で赤く染る教室にいた。
仮想空間での授業が終わり、直ぐに教室に戻った10人の生徒たちだが、学校に残っても特にやることは無いので、適当にだべったら後は寮に帰るだけである。
私がカバンに荷物を収め終えると、ヒトラーとアンリが私の元へやって来た。
「ガウディさん、わたし、甘いもの食べたいです!」
拳を握り、キラキラした目で見あげてくるヒトラーを私は見つめると……。
「甘いもの……? はい、飴ちゃん」
ポケットからビニールに包まれた飴ちゃんを取り出し、ヒトラーに差し出した。
「違います! 今から3人でお店に食べに行きたいんです!」
あぁ、そういうことか。
ヒトラーは頬をふくらませながら、私の手から飴ちゃんを奪った。
ちゃっかり飴ちゃんを貰ったヒトラーは、それを口の中に入れて。
「ガウディさんは昨日、JKらしく生きたいと言ってましたよね! なので、今から私たちで世のJKみたいに、お店で美味しいスイーツを食べましょう!」
私、そんなこと言ったかな?
それより、JKみたいにというか、私達は現在進行形でJKなのだが。
しかし、甘いものか……。
また太るかもしれないが……少しはくらいはいいだろう。
「甘いものもいいね。それじゃ、アンリの奢りで行きますか!」
「しゅっぱーつ!」
「ねぇ待って!? なんで私のおごり!? でもなんかヒモ男に集られてる感じでちょっと嬉しい!」
──道中、アンリの下ネタ発言で道行く人から変な目で見られながら、やっと目当てのスイーツ店に到着した。
校門を出て、寮に戻るまでに唯一あるスイーツ店だ。
制服のまま寄り道して帰るという、初めての体験に私は興奮しながら、店の中に入った。
席に座り注文し終えて暫くすると、店員さんがスイーツを運んできた。
私は、いちごケーキ。
スイーツだとイチゴは絶対に譲らない。
アンリは、スイーツタルト。
ヒトラーは、タピオカミルクティー、ホワイトパフェ、パンケーキ、シフォンケーキ。
さすがに太りそうだなぁ……。
ヒトラーの前に次々と運ばれてくるスイーツを眺めながら、私は太ったヒトラーのお腹をぷにぷにする妄想をしていた。
「それじゃ、アンリの奢りでいただきまーす」
「ごっつぁんでーす♪」
「ねぇ、だから待ってって! 私そんなにお金ないよ!?」
アンリがぎゃあぎゃあと叫ぶ中、私とヒトラーは食べ始めた。
「まったく……いくら私が喜ぶからって、そんなに集ろうとしなくても……」
アンリは訳の分からないことをブツブツと呟きながら、スマホを取り出して……。
スイーツタルトの写真をパシャリと撮った。
「…………?」
「もぐもぐ…………うまうま…………?」
なぜか急に写真を撮り出したアンリを、私とヒトラーが手を止めて不思議そうに眺めていると、アンリは手を肩まで上げてやれやれといった表情で。
「二人とも、それだからJKになれないんだよ。スイーツを食べに来たら、まずは写真を撮らなきゃ。そして、あとでイジンスタグラムにアップするんだよ」
イジンスタグラム。
それは、写真を他人と共有できるSNS。
略して「イジンスタ」とも呼ばれるそれは、陽キャなどが自分の写真を乗せるなどしていると聞いた事はあるが……。
「え、なに? アンリってイジンスタやってんの? 自分の自撮り上げて陽キャアピールしたり、モラルに反することした動画上げて炎上したりしてんの?」
「ちょっとガウディ、イジンスタやってる人にどんな印象抱いてんの!? それこ炎上するよ!? 私はただ行った場所とか、食べるものの写真上げてるだけだよ!」
そう主張するアンリからスマホを受け取ると、彼女のアカウントに上げられた写真を眺めて……。
「何これ……『今日の昼ごはーん!』……なんでカップ麺の写真乗っけてんの? 何これ面白いの?」
「ちょっ、ちょっ、あまり見ないで! さすがにこれは私も気持ち良くない恥ずかしさだから!」
顔を真っ赤にしたアンリが私の手からスマホを奪い取ると、ポケットにしまってスイーツを頬張り始めた。
フォークを手にしたまま眠るヒトラーを目の端に映しながら、私はケーキを頬張るアンリを見据え……。
「ねぇ、それ楽しいの? なんでカップ麺の写真なんか投稿してんの?」
「ねぇもうやめよ! ね!? さすがに恥ずかしいんだってば! 羞恥攻めじゃなくて、もっと身体的にキツイのをちょーだい! 例えばムチで叩くとか!」
「あの……お客様……。他のお客様の迷惑となりますので、店内でそのようなことを大声で叫ばないでいただけると……」
静かな店内で叫ぶアンリの元へ、申し訳なさそうな顔をした店員がやってきた。
戦いの場にも、愛があることを信じます。
兵士たちが戦う力と意志を捨てた時、人間はみな同じ人間です。
(ジャン・アンリ・デュナン)




