25話 フルダイブ
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校舎の端に作られた一室。
昨日ノーベルが校舎を爆破し、その後始末として私が再建した時、この部屋の存在は知っていたのだが……。
私が建築した後に運び込まれたのであろう、フラットなカーブを描き、マッサージチェアのような、人間ひとりが入るスペースのある機械が10台。
また、それらから伸びるコードが、ゴチャゴチャと絡み合って、さらに大きなゴテゴテの機械へと繋がっている。
コードは絡まないよう、もう少し綺麗に繋いだ方が……。
私がコードを引っこ抜きたい衝動に駆られていると、クラスメイト全員が集まったことを確認したノイマン先生が手を叩いて注目を集めた。
「はい、それでは、今からVRシステムの説明を始めます。まずはそちらの機械をご覧下さい」
ノイマン先生が手を向けた方向には、先程の人が入れる機械が並んでいる。
マッサージチェアのような椅子を、よく分からない黒色の金属やガラスが囲っている。
ここに入って、仮想現実の世界へと潜るのだろうか。
これってあれだよね?
現実世界に戻ってこれるよね?
戻ってこれずに100階層クリアしなさい、とかじゃないよね?
「この機械は技術科のエジソン先生が作った……『超簡単! 誰でも使えるVRマシーン☆』…………です……」
ホワイトボードに書きながら、そのダッサイ名前を読み上げた先生の顔が、みるみる赤くなっていった。
名前ダッセェ……。
ほかのクラスメイトからも、ヒソヒソと話し声が上がる。
「この機会の名前、めっちゃカッコイイね」
「☆がついてるのが、またいいよな」
「私、エジソン先生のファンかも……」
どうやら、このクラスでおかしいのは私の方らしい。
「そ、それでは皆さん、この超簡…………マシーン……に座ってください」
フルネームで呼ぶのが恥ずかしいのか、先生が小声になりながら、私たちに促した。
クラスメイト全員が機械に座ったことを確認すると、ダサい名前の機械からコードが伸びる、より大きな機械を先生がいじり出した。
その母機のような機械のタッチパネルを先生がいじると、私たちが座る機械をカラーグラスが蓋をした。
おぉ!
なんか近未来っぽい!
アニメなんかでよく見る感じのやつだ!
隔離された世界で私がひとりで感動していると、フルダイブ用の機械に内蔵されたスピーカーから、先生の声が聞こえた。
『これで皆さんを仮想空間へと送り出す準備は完了しました。あとは私の指示で、皆さんの目の前のタッチパネルにある、赤色のボタンを押せばフルダイブすることが出来ますが、まだ触らないでくださいね』
先生がそう言って母機のタッチパネルをいじると、私たちの目の前にタッチパネルが現れ、そこに多くのボタンが表示された。
『赤色のボタンを押す前に、ほかのボタンについて説明しますね。青色のボタンはマッサージ機能です』
「あぁあぁあぁあ……」
存在意義の分からないボタンの説明を先生が始めると、アンリが迷うことなく即座に押した。
なぜ押した。
「あぁあ……ガウディ……これ気持ちいいよぉ……あぁあぁあぁあぁあ……」
アンリが声を震わせながら、私に感想を伝えてくる。
なぜ私に伝えた。
『アンリさん、マッサージ機能は切っておいてくださいね。次に、緑色のボタンは食事ボタンです。押せば食事が出てきます』
やはり必要ない2つ目のボタンの説明を先生がすると、ヒトラーが迷わずポチッと押した。
すると、ヒトラーの頭上に、コップに入ったジュースが現れ……。
ヒトラーは頭からそれを被った。
そのままフリーズした、コーラまみれのヒトラーが入る機械を先生が慌てて開け、タオルで吹き始めた。
なぜ彼女らは説明が終わる前に押すのだろうか。
私はそう思いながら、緑色のボタンを押した。
頭上にオレンジジュースが出現し、ヒトラーと同じく頭から被った。
沈黙するクラスメイトの視線に耐えきれなくなった私は、私の顔の色のように赤いボタンを押して仮想空間へとフルダイブして逃げることにした。
人類はみな、兄弟です。
(アンリ・デュナン)




