22話 リンゴとビール
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目の前の缶ビールを片手に真っ赤な顔をしている男。
私はレッドカードを建築し、条例を破るこの先生を解雇してもらうよう校長に頼もうとすると……。
「ニュートン先生、何してんのさー……。学校でビールは飲まないでって、私言ったじゃーん……。アルコール臭いんだけどぉ……。まじ臭い……」
隣のアインが鼻をつまみ、ビール男をしっしっと手で払った。
なるほど。
先程からずっと私が感じていた匂いは、アルコールの匂いだったのか。
そしてアインにニュートン先生と呼ばれた男は、ポケットから新しい缶ビールを出し、蓋を開けると一気に飲み干した。
「っかーー! うんめぇー!」
うわぁ……アルコール臭ぇ……。
てか、うんめぇー、じゃねぇんだよ。
「初対面の子も多いだろうから、私が紹介するよ。彼はアイザック・ニュートン。1組の担任をしている、物理の先生だよ」
校長が、困り顔で先生の紹介をした。
そりゃこんなの扱いに困りますよね。
アイザック・ニュートン。
万有引力の法則を発見するなど、近代物理学の基礎を作った人物。
そのような人物なら、物理の教師になるのは当然と言えるだろうが……。
「学校でビールはダメでしょ!」
今更ながら私は大きな声で、ニュートン先生にツッコんだ!
私に叫ばれたニュートン先生は、手にしていた缶ビールを落としそうになった。
「なんだお前は?学校でビールを飲もうとも、別にええじゃろう?」
構うんです。
条例で決められている事なんです。
なぜこうも、偉人学園には変人しか居ないのか……。
これでは変人学園ではないか。
常識人は私くらいじゃないか。
「まあまあ、二人とも落ち着きたまえ。説教はこれでお終いだから、もうクラスに戻っても構わないよ。ただ、もうこのようなことはしないようにね」
ダ・ヴィンチ校長は、優しい笑顔で私たちに体質を促した。
後で警察に連絡しといてくださいよ。
──私たちは校長室を出て、問題児3人とニュートン先生のみとなった。
ふぅ……やっと開放された……。
校長が以外にも優しかったため、思ったより疲れはない。
さっさと教室に戻って、ヒトラーと話でもしていよう。
私は教室に戻ろうとして、一つ大事なことを忘れていたことに気がついた。
問題児3人のうち、唯一の男。
唐草紋様の髪を持ち、昨晩は私とアインのパンツを奪ったクズ野郎。
私はそいつの元に近づき、思い切り顔をぶん殴った。
「なっ、何すんだ黒パン娘!」
「何すんだ、じゃないわよ! 忘れてたけど、私のパンツ返しなさい! 代わりにアインのパンツを上げるから!」
「なんで私まで巻き込まれてんのさ! 返すなら私のも返してよ!」
ぎゃあぎゃあと叫び始めた私たちに、ニュートン先生は右の手のひらを向けると……。
「さっきから喧しいのぉ……。少しは静かにせんかい!」
私たちの体が、急に重たくなった。
「こ、これはなんだ!? おい貴様、俺になにしやがった!」
パンツ泥棒が、ニュートン先生に詰め寄ろうとするも、重い体を上手く動かせずに、その場で叫んだ。
「まあ落ち着きけよ、石川五右衛門君。お前たちがやかましいけえ、少しだけ静かにしてもらうためじゃ」
手のひらを向けたまま、ニュートン先生が腹立つドヤ顔で答えた。
これはおそらく重力的な才能だろうか。
いや、史実のニュートンが見つけたのは、万有引力の法則。
ニュートンは重力を発見したわけじゃない。
ならば、この才能は、万有引力を付与するといった才能だろうか?
それで、私たちの地球のあいだに万有引力を……ということだろう。
なんていう才能だ。
一度発動されただけで、相手はもう動けなくなる。
これが先生たちの才能か……!
そういえば、なぜノーベルのように、ニュートン先生の頭がリンゴでは無いのかと思ったが。
実際には、ニュートンはリンゴが木から落ちるのを見て、万有引力の法則を見つけた訳では無いらしいから、そういう事なのだろう。
そして……私と沖田さんの予想通り、やはりこの下着泥棒は石川五右衛門。
盗みの才能をもった偉人か。
「反省したら俺の才能をキャンセルしてやるよ。それじゃあ、先に俺は職員室に帰っとくけえ」
「「「反省してます!」」」
私たち3人は、増大した重力に任せて頭を地面に着けた。
【偉人紹介14 アイザック・ニュートン】
〈作中〉
1組の担任で、物理の教師。
学校で毎日のようにビールを飲むため、顔がリンゴのように赤い。
広島出身なので、広島弁を話す。
〈才能〉
二物体間に、万有引力を付与することが出来る。
例えば、地球と自分に付与すれば、重力が強くなる。
月と自分に付与すれば、宙に浮くことも出来る。
〈史実〉1642~1727
イギリスの物理学者、数学者、天文学者、神学者、自然哲学者。
古典力学の体系化や、万有引力の法則を発見、微積分法の基礎を確立させたことなどが主な業績。
多くの分野で輝かしい功績を残しており、誰もが知っている偉人。




