19話 死の商人
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台所でふざけていたところを、沖田さんに見つかった。
私とヒトラーはすぐさま床を額でこすり、謝る気は無いけどポーズだけとっておいた。
沖田さんが、無言で佩刀をカチャリと揺らした。
やはり謝る気は無いが、私は命を奪われないよう、床に穴があかんとばかりに額を押し付けた。
誰も口を開かない、気まずい空気の中。
汗ダラダラな私に、沖田さんが優しい口調で話しかけてきた。
「謝らなくていいさ。今日の分の朝ごはんは今から俺が作るから、リビングで遊んでおけ。話はそのあとだ」
優しい沖田さんに私は感謝し頭を上げ、ヒトラーと共に台所を出ようとすると。
「すかー」
まじか。
この娘はもう寝ちゃったのか。
私はヒトラーをおんぶすると、心の中で沖田さんに謝りながら、急ぎ足でリビングへと向かった──。
──リビングに着き、ヒトラーをソファに寝かすと、私は適当な話し相手を探し始めた。
アンリはリビングに居ない。
まだ起きていないのだろうか。
起きていても、あの性癖に付き合わされるだけだし、構わないのだが。
私がキョロキョロと首を回していると。
「おっ、建築娘。このノーベル様を探していたのかな? 料理もできない君は俺とイチャイチャしてようぜ」
いちいち腹立つノーベルが、料理できないのか、と私を煽ってきた。
「私は別に料理ができないわけじゃないのよ。今日はたまたま、ふざけたい気分だっただけ。私が本気を出せば、五つ星シェフくらいの料理はできるわよ」
「星は3つまでだぞ」
「……………………うるさいわね。死になさいよ、クソ雑魚爆弾野郎」
「その暴言は理不尽すぎないか、おい!? 八つ当たりか!? ……ってか俺は雑魚じゃねぇし! お前の方が雑魚だろ! 違法建築娘!」
私がらしくないミスを犯し、そこを攻めてくる卑怯なノーベル。
私は若干耳を赤くしながら、悪口を叫び続けた。
「だいたい、才能が『ダイナマイトの生成』っていうだけの能無しのくせに、よくも私を雑魚扱いしたわね! 今すぐ地に還してやるから、抵抗せずにぶん殴られなさい!」
才能が弱いと、私に言われたノーベルは。
ブチ切れるかと思ったが、意外にも高笑いを上げた。
「フハハハハッ! ハハハッ! お前は本当に馬鹿だな!」
こいつはどうしたのだろうか。
ついに0だった知力が、マイナスに到達してしまったのだろうか。
私が憐憫の視線を、ノーベルの頭の薄汚いダイナマイトにぶつけていると。
「お前は俺の真の才能を知らないから、そんなことが言えるんだ! やはりお前は馬鹿だな! フハハハハハハハッ! 今から俺の真の才能を教えてやろう、違法建築娘よ!」
建築娘はいいとしても、いや、よくはないが。
違法建築娘と連呼されるのは非常に腹が立つ。
後でこいつは庭に埋めておこう。
……しかし、真の才能か。
昨日聞いた限りでは、クソ爆弾の才能はダイナマイトの生成。
それを昨日言わなかったのは、何故だろうか。
才能を持つ私たちと同じように、自分の才能は記憶にねじ込まれたように、自然とわかる筈なのだが……。
クソ爆弾は拳を握りポーズを決めると。
「昨晩! なにか俺の才能でエッチなことはできないかと模索していた時の事だ! 自分の才能をよくよく顧みてみると、ただ爆弾を作れるだけじゃないということが判明したのだ!」
バカはお前だ。
私をバカ呼ばわりしておきながら、自身の才能の把握漏れとはお前の方がバカじゃないか。
私はノーベルの才能について、若干の興味が生まれたためか。
彼の話を無視して、開いた両手に平等院鳳凰堂を建築していたのをやめ、話を聞くことにした。
「実は俺の才能はな、大きく分けると2つあってだな──」
──ペラペラと自分の才能を暴露しだしたアホ爆弾の話を聞く限り、こいつの才能は。
①ダイナマイトの生成が可能になる。
ライター等で点けた火は、決して消えることは無い。
また、点火しなかった場合は、時間経過で自然に点火される。
②半径20メートル以内に限り、任意の威力で爆発を起こすことが可能。
話を聞き終えた私は、アホ爆弾の才能を脳内で纏めながら、クラス対抗戦で上手く使い道はないかと模索していた。
クラス対抗戦で勝てば、良い成績が貰えるのだ。
ならば、たとえ嫌いな奴でもその才能を上手く使って勝利したい。
半径20メートル以内では爆発、以外ではダイナマイトによる攻撃がセオリーだろうか。
それにしても、生成したダイナマイトは、点火せずとも時間経過で自然点火か…………。
あれ?
あれれ?
昨日、私たちがグラウンドで体力測定をしていた時のこと。
先生に説教をされて、授業に遅刻したクソ爆弾が、教室にダイナマイトを放棄してきたことを暴露してきた。
よりにもよって、それは教室で寝ているヒトラーの目の前に。
そしてなぜかそのダイナマイトは爆発し、校舎は爆発四散。
ヒトラーは彼女の無敵才能により、事なきを得たのだが…………。
クソ爆弾が教室に置いたダイナマイトが、なぜ何も無いところで爆発したのかやっとわかった。
私は右手にハマった形でメリケンサックを建築すると。
「アンタってばホントにねぇ! 一歩間違えれば死傷者が出てたのよ!? アンタはバカだけど、バカはバカなりにそれくらいの自覚を持ちなさいよ!」
ヒトラーに危害を及ぼしかねなかった男の顔、もといダイナマイトを何度も殴りつけながら、私は怒鳴った。
「な、何を急に殴り出すんだ違法建築娘! だからSMプレイをしたいなら、部屋に戻ってベッドの上でじっくりとだな……! ぐほっ!」
反省する色を見せないクソ爆弾のお腹を蹴り上げながら、私が説教をしていると。
「みんな、今日の朝食が出来たぞ、テーブルについてくれ。……そこのうるさい2人を除いて、8人分だけ作っておいた。冷めないうちに頂いてくれ」
台所から、8人分のトーストと目玉焼きをトレイに乗せて運ぶ沖田さんが、私たちには見向きもせずにクラスメイトに優しく呼びかけた。
私とノーベルは沖田さんの元に近づき、ゆっくりと膝をついて……。
「「お願いします! 朝ごはんを作ってください!」」
料理の苦手な私たちは、クラスの真の支配者である、沖田総司様に土下座した。
【アルフレッド・ノーベル 才能情報・改】
①ダイナマイトの生成が可能になる。
性能、威力においては任意の精度で生成可能。
ダイナマイトの最大生成質量は1kgだが、連続生成が可能。
ライター等で点けた火は、水に触れるなどしても決して消えることは無いため、生成されたものは必ず起爆する。
また、点火しなかった場合は、時間経過で自然に点火される。
ライター等を用いずとも、任意のタイミングで着火されることも可能。
②半径20メートル以内に限り、任意の威力で爆発を起こすことが可能。
ただ、爆発や爆風、瓦礫などによるダメージは、近ければ才能発動者も被ることになる。
近距離は爆発、遠距離はダイナマイトと使い分けが可能。




