16話 女子会
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夜の学校に潜入したことで、明日は先生に咎められるかもしれない。
そこで、風邪をひいて学校を休もうとした私だったのだが……風邪をひきかけたところでアンリに治療されてしまった──。
──その後、お風呂から上がった私はというと。
自室の机の上に教科書を広げ、授業の予習を始めていた。
明日のことは考えたってしょうがないからね。
優等生である私は、得意な数学の勉強をすることにした。
私が教科書を読もうとしたところで、ノックの音がした。
ここは寮の女子エリアなので、クソ爆弾たち男子が訪ねてくることはない。
「だれー?」
私が施錠してあるドアの向こうに呼びかけると。
「アンリだよー」
アンリが応え、再びノックしてきた。
アンリか……。
先程は私の風邪をひいてズル休みする計画を邪魔してきたからな……。
ここは……。
「私、悪いけどもうすぐ寝るからさ。ごめんね」
教科書を読みながら、それっぽく演技して嘘をついた。
アンリのことだ。
どうせ碌でもない用事か、あの変な性癖に付き合わされるだけだろう。
「えぇーまだ寝るには早いよー。せっかくヒトラーもいるのにさぁ……」
私は迷わずドアの鍵を開けた。
「ねぇ……それはなんか傷つくんだけど……」
少しだけ開いた扉から、顔だけ出したアンリが睨んできた。
そしてその後ろには、眠たげな目をしたヒトラーが居た。
「ごめんごめん。ちょっとした意地悪だよ。アンリこういうの好きでしょ?」
ちょっと罪悪感に包まれた私は苦笑しながら、アンリを揶揄った。
流石にドMのアンリといえど、今のは嬉しくなかったのだろう……。
本当に申し訳ないことをしたなと思っていると……。
「いや……正直ちょっとゾクッとした……」
頬を染めたアンリが、身震いしながら言った。
私はアンリにドン引きし、部屋から追い出そうかと悩んでいると。
「ガウディさん、今は何していたんですか?」
パジャマ姿のヒトラーが可愛い笑顔で私に尋ねてきた。
「んと……今は予習してたよ。高校の勉強は難しいらしいからさ」
私が机の上を指さして答えると。
「ひゃー、やっぱり優等生は違うねぇ。私なら遊んで過ごすのに」
アンリがハッハッハと笑いながら揶揄ってきた。
「うるさいわね。それで、2人は何しに来たの?」
床のマットの上に座る2人に、私も腰を下ろして尋ねた。
「なんてことは無いよ。ただ遊びに来たんだよ。なんかガウディの部屋は楽しそうだし」
「どういう意味よ」
アンリがわたしのベッドに頭からダイブして、顔だけこちらに向けながら言った。
「私はお菓子を持ってきました! ガウディさんもどうですか?」
ヒトラーが笑顔で、背中の後ろからたくさんのお菓子を出してきた。
私はそれらを一瞥して……。
「……太るわよ……?」
「あ、大丈夫です! 私はいくら食べても太らなくて……いひゃい!」
私はヒトラーの頬を引っ張って黙らせた。
私は高校受験のあいだに……キロ太ったっていうのに!
春休みで更に……キロ太ったっていうのに!
「いひゃいでひゅ! いひゃいでひゅ! なんでひっぴゃるんでひゅか!?」
私が引っ張っていた手を離すと、ヒトラーは目に涙を浮かべ、自身の頬を手で抑えてほぐしだした。
「いや、ちょっとね……。アンリ、何よその顔は! 何か言いたいことあんの!?」
私は、ニヤニヤと見てきていたアンリに突っかかった。
「まぁまぁ、そんなすぐには太らないって。例え体重が増えたとしても、それは胸が成長したってことで…………あっ……」
「何よ! 今なに見て言うのやめたのよ! 言ってみなさいよ!」
私の断崖絶壁に視線が向いたアンリの頬を、私は引っ張った。
「ちょっ、いひゃっ!」
痛いとは言いながらも、どこか嬉しそうな顔のアンリから手を離すと、私は。
「それで、本当の要件は何なのよ? ただ私を煽りにに来ただけ?」
私はヒトラーの隣に腰を下ろし、アンリに尋ねた。
「うんにゃ、タベりに来ただけじゃないよ。1つ、ガウディに頼みたいことって言うかさ……建築して欲しいものがあってさ……」
アンリが言いにくそうにもじもじしながら、私の方をちらちら見てくる。
いったい何を建てて欲しいのだろうか。
いつの間にかウトウトし始め、私の肩に頭を預けたヒトラーを横目に、私はアンリに尋ねた。
「それで、何を建築して欲しいの?」
「えと……三角木馬を……」
「寝るわ」
私は、ヒトラーと同じように頭を預け合い寝ようと目を瞑った。
「ねぇ待ってよ! お願いだよ! ただ建ててくれるだけでいいんだよ!? なんで建ててくんないのさ!」
アンリが私の耳元で喚き散らすが、ヒトラーが起きてしまうのでやめて欲しい。
私は渋々、あまり痛くなさそうな三角木馬を、部屋の真ん中に建築した。
これでアンリも少しは大人しくなってくれることだろう。
私が薄目でアンリの様子を眺めていると。
「よっこらセッ○ス。よしっ、乗れた!」
思春期の男子が使うような下ネタを言いながら、アンリが自力でお馬さんの上に乗っかった。
乗馬したアンリは、今日一番のホクホク顔で、熱い息を吐いていた。
ふくくっ。
今こそ、アンリに絶望を与える時!
「解体っ!」
私は、アンリが乗ったままの三角木馬を解体した。
私の才能で建築したものは、私の一存で解体できる。
これを利用してアンリに不意打ちの攻撃をお見舞してやるのだ。
私に変なものを建築させた罰として、だ。
アンリが跨っていた木馬が消滅すると同時に、彼女の体は重力に引っ張られた。
木馬の首筋を嬉しそうに撫でていたアンリは、突然自身の体重を支えていた物が無くなり、自由落下したことで……。
足を床に強打した。
「ッっっっ────!!」
両足の裏を抑え、床をのたうちまわるアンリに、私は勝利の笑みを浮かべた。
「ちょっとぉ、痛いじゃん! 何してくれんのさ! 土踏まずを強打しちゃったんだけど!? 痛いのは好きだけど急過ぎるよ! いったぁ……」
未だに足を抑えながら、アンリが抗議してきた。
アンリが叫んだことで、眠っていたヒトラーが起きそうになる。
私はヒトラーの頭を撫でて寝かしつけ、アンリに嘲笑いながら答えた。
「私に変なものを建築させた罰よね。でもまあ、アンリは痛いの好きだし別にどうってこと…………土踏まずを強打した? それどうやったの?」
アンリの言ったことが引っかかった私は、嘲笑うことをやめて尋ねた。
どう足掻こうが地に付かせようのない、土踏まずを強打したと言い張るアンリ。
アンリの体は……どんな構造をしているのだろうか……。
「ねぇ! もっかい建ててよ! 今度は解体せずにさ!」
私は、アンリの願いに耳を貸すことなく、ヒトラーと一緒に眠ることにした。




