★15話 湯けむりと剣豪
筆者が骨折してしまったため、当分休載させていただきます。
再開は来年になりそうです。
お風呂場に向かった私は、今の時間が女性の入浴時間であることを確認して、更衣室で服を脱いだ。
男女10人しか住まないこの寮には、風呂は1つのみだが、男女の入浴時間は分けられている。
しかし、風呂場と言っても数人が同時に入れるほどの広さは備わっている。
だが、使い勝手は悪いため、クソ爆弾に爆破して壊してもらい、私が再建して風呂場を増やしてしまうのがいいかも知れない。
私はそんな、とりとめのないことを考えながら服を脱ぎ終えると、灯りのついた浴室の扉を──。
──灯りのついた?
疑問に思うも、私の手は止まることなく扉を開き──。
「む…………きゃあああああぁ……」
浴槽に浸かり、抑揚の無い声で叫ぶ真似をする女子が居た……。
彼女は仏頂面のまま、半眼の私と見つめ合い……。
「……きゃあああああ…………」
沈黙を貫く私に、再び棒読みで小さく叫んだ。
そうだ、思い出した。
彼女は、沖田総司だ。
銀髪のポニーテールで、おでこを出しており、つけていたはずの鉢金は、お風呂に入るからか外していた。
教室では浅葱色でだんだら模様の──いわゆる新撰組の隊服を着用しており、袴を履いていた沖田総司は。
風呂場で一糸まとわぬ姿になると、かなりの巨乳で──。
ちくしょう、また巨乳か。
これは私への当て付けか?
どうして巨乳なんかと一緒に風呂に入らなきゃならないんだ。
私が未だかつて無いほどに神を憎んでいると。
「お前がガウディだろう? 俺は沖田総司だ。わざわざ校舎に潜入してもらって悪かったな。それで、結果など諸々を聞きたいのだが」
湯船に浸かったま、先程までのふざけた様子は見当たらない真顔で、沖田が言ってきた。
ま、まあ、私の頑張りを認めて労ってくれたし、巨乳とはいえ話をするくらいはいいだろう。
私は体と頭を素早く洗い終えると、そこそこ広い湯船で沖田の隣に浸かり、これまでの事を全て話した。
いや、ひとつ訂正。
パンツを盗られてオカズにされたことだけは覗いたが。
私の話を全て聞き終えた沖田は、口を手で覆って考え込んだ。
「なるほど……1組にはワームホールを展開できるアインシュタインと、幻影使いが居るのか……。そして、盗むような才能を持った謎の男も居ると……。ガウディから聞いたアインシュタインの反応からして、その男は1組では無いようだな」
私に説明するように考察を進める沖田は、もしかしてもしかすると、頭が良いのかもしれない。
さらに、ここまでの感じ、かなりの常識人のようだ。
まぁ、私ほどでは無いが。
私たちのクラスには、クソ爆弾をはじめ、頭がおかしかったり変な性癖を持っていたりと、問題児が多いが……沖田と私だけが、真っ当な人間だろう。
「いや〜、私の他に常識人が居て助かったよ〜。正直私だけだったら、転校してたかもね」
苦笑しながら言った私に、沖田は不思議そうな顔を向け。
「ん……? あ、ああ。そうだな。問題児は自分のことを問題児だと認識できていないから、大変だよな」
どこか遠い目をしながら、沖田が言った。
それには激しく同意したい。
「まあ、それを置いておくとして。幻影使いと盗人が誰か見当をつけておかねばならないな」
そう言って再び考え込んだ沖田に、私は黄色いアヒルのオモチャを建築して湯船に浮かべながら。
「私はだいたい見当をつけたけどね。まず盗人の方は、和服だったから石川五右衛門かねずみ小僧。幻影使いの方は候補が多いんだけど、有名な奇術師と言えば、ロベール・ウーダン、果心居士、ジャスパー・マスケリン辺りが有力かな?」
日本だけでなく、世界の歴史にも興味がある私には、特定の事柄に関する偉人を列挙するなんて朝飯前だ。
私の考察が述べている間、静かに聞いていた沖田は。
「確かに、メジャーなところでいくとその変だろうな。盗人の方は、唐草文様と腰の大縄から察するに、石川五右衛門で間違いないだろう。そして才能の方だが、射程距離内なら手が届かなくとも、手中に納める事が出来るといったものだろうな」
私の考察をさらに発展させ、結論づけた。
むぅ……なんだが、私より頭が良さそうな気がしてきた……。
巨乳のクセに。気に食わん。
私が頬を膨らませてムスッとしていると。
「あぁ、そうだ、ガウディ。アインシュタインの才能を使って脱出したというのなら、状況推理で直ぐに犯人だとバレると思う。ガウディも才能を使ったみたいだし、アインシュタインが自供しなくとも、潜入したことがバレるかもしれない。まぁ、その、なんだ。……明日は先生に咎められるかもしれんが……がんばれ」
まじか……。
やはり私より頭が回る沖田に、明日の学校で起きこるであろうことを予言された私は。
明日休むために風邪をひこうと、冷水をシャワーで浴びることにした。
私は湯船から出て、桶いっぱいに冷水を貯めて、頭から被った。
続いて、お湯を同じように貯め、頭から被った。
うぅ……寒っ……熱っ……。
────沖田に半眼で見つめられながらも、それを繰り返した私は、風呂から上がる頃には風邪をひきかけていた──。
いたのだが…………。
「あ、ガウディ、どうしたの!? なんだか顔が赤いよ!? 風邪? のぼせた? ほら、治してあげるからこっち来て!」
あぁ、そうだった。
このクラスにはアンリが居るから病気はすぐに治されるんだった…………。
これじゃあ、明日怒られちゃうじゃん……。
「ね、ねぇ、なんで泣いてるの? 治療してもらえることが、泣くほど嬉しいの?」
泣きながら治してもらっている私に、アンリは疑問を抱え、沖田は溜め息をついていた。
【偉人紹介12 沖田総司】
〈作中〉
銀髪ポニーテールのデコ出し巨乳。
新撰組の隊服と鉢金を着用している。
クラスで1番頭が良くまじめ。
おっぱいはジャンヌといい勝負。
女の子だが、一人称は俺。
〈才能〉
危機的状況に陥った時、景色がスローに見えるタキサイキア現象を強制的に引き起こす才能。
常にスローを体験することで、圧倒的な見切りの力と速さを手に入れる。
スロー体験中も通常の速さで動けるため、相手の目には高速で動くように見える。
これを活かして史実の「三弾突き」を模倣する。
〈史実〉1842(?)~1868
新選組一番隊組長。
目にも止まらぬ早さで3回突く、「三弾突き」が得意技。
非常に明るい性格で色白の美青年だったが、病弱だった。
結核を患い、26際の若さでこの世を去った。




