★9話 長い長い一日が終わり
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あの後、散々ドMのアンリに邪魔されながらも体力測定を終えた私は、夕食を食べて寮のリビングで寛いでいた。
この学校には、クラスごとに寮が建っており、一階部分にはかなり広いリビングスペースが設けられている。
グラウンドで寝ていたヒトラーや、先生に怒られていたノーベルも戻ってきて、クラス全員がリビングで寛いでいた。
私はヒトラーやアンリとともに、ソファで寛ぎながら話をしていた。
「そういえばアンリはさ、その……Mなの?」
「Mだよ? ガウディはもしかしてS? だったら三角木馬とか建築してくんない?」
唐突に、ど真ん中ストレートに聞いた私に、アンリが女の子として有るまじき発言をしてきた。
「い、いや、私はノーマルだけどさ……。このクラスにSっ気のある人なんて……あ、ジャンヌはSじゃないのかな? 本人は自覚してないみたいだけど……」
私がアンリの矛先をジャンヌに向けてあげると。
「ジャンヌかぁ……痛いのは好きだけど、罵られるのは好きじゃないんだよねぇ……。頼んだら縛ってくれるかな……」
自身のことをMであると、はっきり理解していらっしゃる風のアンリが、再び女の子として有るまじき発言をかましてきた。
「そうだ、ガウディかヒトラーのどっちかでいいからさ、私を縛ってくれない?」
「断る」
アンリのくだらない頼みに私が即断すると、アンリが頬を膨らませて不貞腐れた。
返事のないヒトラーの方をちらりと見てみると……。
「すかー」
おい。
軍服からパジャマに着替えたヒトラーは、気持ちよさそうな顔でヨダレを垂らして寝ていた。
どこでも直ぐに寝るのは構わないが……いや、構うけど。
それより、ヨダレを垂らしながら寝るのは、偉人としてカッコ悪いのでやめて欲しい。
「あー、誰か私を縛ってくれる優しい人は居ないかなぁ……」
アンリが溜息をつきながら、縛ってくれる優しい人(?)が居ないことを嘆いた。
「そんなアンリの性癖に付き合ってくれる人なんて……あ」
……そういえば、アンリが縛る、と言ったことで思い出したが、このクラスには糸に関する偉人のアークライトが居るんだった。
アークライトは、水力紡績機を発明したことで有名な偉人だが、彼の偉業からすると、綿糸の生成じゃないだろうか。
「……あそこにいるアークライトなら、才能でアンリを縛ってくれるかもしれないよ」
私は面識もないアークライトをアンリに売り、ドMのお守りを任せることにした。
今日一日でかなり疲れたので、ドMに絡まれるのはごめんだ。
「ほんとに!? わかった、イってくる!」
アンリはソファから飛び降りると、ダッシュでアークライトの元に駆けていった。
“行ってくる”のイントネーションが若干違う気がしたが、気のせいだろう。
私は落ち着いたからか安堵の溜息をつくと、暇になったため隣のヒトラーを起こした。
「ヒトラー、寮に戻ってからずっとここで寝てるし、まだ夜ご飯食べてないでしょ? ほら、起きて」
すると、遠くから……
「私を縛ってくれるってホント、アークライト!?」
「誰だテメェは……確かアンリ・デュナンだったか? なんだ? 俺様に縛って欲しいのか? いいぜ、俺の太くて固いアレをお見舞してやるぜ」
訳の分からない掛け合いを始めたアホ2人は放っておき、私はヒトラーの肩を揺すって起こした。
「んんぅ……まだ眠いのですが……」
ヒトラーは寝起きで薄い目を擦りながら、私によりかかって再び眠りについた。
何この子、可愛い!
「ヒトラー、起きてよー」
私はヒトラーの頭を撫で撫でしながら、もうちょっとこのままでいいと思いつつも、起こすことにした。
「オラッ、喰らえ!! 俺の渾身の白い糸だッ!」
「ぁはぁぁあん! いいよ! これ、凄くいいよ! 何がいいって、固くてキツく縛られてるのがいいね!」
学のある私でも、全くもって理解できない……いや、理解したくもないことを言い合う2人は放っておき。
眠るヒトラーを見ていると、何だかウトウトしてきたため、私もヒトラーと同じく眠りにつこうとして……。
「へいへい、ガウディ! そんな所でお寝んねしてたらこのノーベルさんが襲っちゃうぞ? あ、ちょっと今いいかい?」
「よくない、寝る。アンタも寝なよ、永遠に」
要件の前にセクハラを放つクソ爆弾に中指を突き立て、私は目を閉じた。
「あぁんっ!! はぁぁっ! これ、すごいよっ!? すごい所に喰いこんでるよッ!?」
「はは、そうだろう? 俺様の綿糸は最高だろう どうだ、これから毎日縛ってやろうか?」
「お願いします!!」
相変わらず馬鹿なことを叫び続ける2人を無視し、クソ爆弾が告げてくる。
「そんな俺のティンコみたいに硬いこと言うなよな。……お、おい、その目はやめてくれよ……」
最低のクソ発言をかましてくるクソ爆弾に、純度100%の殺気をあてると、ビビって萎縮しだした。
「そ、それより、要件があるんだよ。聞いてくれるかい?」
クソ爆弾が若干脅えながらも、そう言ってくるが……。
要件を一番に言え、バカヤロウ。
「私に聞けるものならいいけどさ……セクハラだったら今度は先生に言いつけるからね」
「まじかよ、おかしいだろ!? ッじゃなくて、クラスとして頼み事があるんだよ」
若干おかしな反応を見せたクソ爆弾が、彼の隣に居た男の肩に手を置き。
「こいつは伊能忠敬。こいつが代表してお願いするからさ、聞いてくれね? な?」
そう言って紹介された伊能忠敬が。
「どうも、我は伊能忠敬なり」
…………なり……。
【偉人紹介9 リチャード・アークライト】
〈作中〉
金髪ツンツンヘアーの、脳筋男。
才能を用いて、様々なものを縛る癖がある。
本人は雑誌類を縛らせられることに不満を感じている。
アンリの被束縛欲求と利害が一致しているので、よく一緒にいる。
〈才能〉
両腕についた小さな水力紡績機から、様々な強度、太さの綿糸を生成できる。
生成した綿糸は、自由に誘導でき、形も変えられる。
まさにスパイ〇ーマン。
〈史実〉1732~1792
イギリスの発明家で、水力紡績機を発明した人物。
その発明が、産業革命をもたらした。
産業革命期に力織機を発明したエモンド・カートライトとよく似ているので、受験生は注意が必要。




