表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虫と女神と異世界転生  作者: 木原 柳
8/9

嘘と勘違い

恵美の目が覚めるとベットの上だった。

服は真新しいものに代わりボサボサだった髪も纏っていて全体的に小綺麗になったように感じた。

「起きた?」

ビクッとして声が聞こえた方向を向くと街道で会った女性が椅子に座り優しそうな目で恵美を見ていた。

「貴方が寝ている時に新しい服に取り替えたの。どう?」

恵美が服を改めて見てみる。

上はグレーのチュニックのようで、下は黒のロングスカートで落ち着いたように感じた。

「…綺麗…だと思います。」

ようやく絞り出した言葉に女性は微笑んだ。

「そう良かった。」

そう言って満足そうに頷いた。

「そういえば名前言って無かったよね。

私の名前はエマ、このトマリの村の専属魔法使いよ。」

そう言って右手を差し出された。

「…よろしくです。」

差し出された手を握り返した。

「貴方の名前は?」

「…エミです。」

そう答えるとエマが微笑み満足そうに頷いた。

「エミちゃんね!

私と似ているなんて偶然ね、これも女神様の思し召しね。」

そう優しく笑うエマの顔に少し見惚れる恵美だった。


エマの表情が真剣になり恵美を見つめた。

「話しにくいとは思うんだけど…何があったか教えてくれないかな?」

そう恵美に尋ねた。

「…その…何も覚えて無いん…です。」

少し迷ったがそう答える。

「…そう。

覚えている範囲で良いの詳しく教えてくれないかな?」

少し間が空いたがエマがそう尋ねた。

恵美は困惑しながらも途切れ途切れに話し始めた。

「あの…気付いたら…街道の…森の近くの街道にいて…村が見えたから歩いて来ました…。」

前世から嘘をつくのが苦手で皆にからかわれていた恵美だったからこそ沈黙の間生きた心地がしなかった。

「…太古の蠱…。」

「…えっ?」

そうエマが呟いたのを聞くと驚きで一瞬固まるが直ぐに聞こえ無かったフリをした。

「…ああごめんなさい。

森の近くって言ったでしょう。

その森、巨獣の森って言われていてね。

昔からある噂があるのよ。」

「噂…ですか?」

「そう噂…。

その蟲を見るとまず正気を失う、見たものは生きて帰れない。」

眉間に皺を寄せて怪訝な表情でエマが説明し終える。

「まぁその噂通りなら誰が伝えたんだって笑い話で終わっちゃうんだけどね。」

恵美の表情が暗くなるのを見て勘違いしたのかエマが明るく話す。

長い沈黙の後エマが話出した。

「…ごめんなさいね。 

何か力になれたら良かったんだけどね…。」

エマの表情がみるみる暗くなるのを見て恵美は罪悪感を覚えた。

「いえ…ありがとうございます。

こんなに良くして頂けただけでも嬉しいです。」

エマに少し微笑みかけた。

エマが笑い返して食事を運んでくると言い立ち上がった。

ドアに手をかけ出て行こうとする。 

「あの…」

恵美がそれを引き止めた。

「ん?どうしたの?」

「何でこんなに優しくしてくれるんですか?」

恵美が疑問に思いそう口に出した。

「何でって言われてもねぇ、困ってる子を見捨てられる程子供じゃないだけよ。」

そうウィンクして出て行く。

扉が閉まる音が部屋に響くと恵美は脱力した。

ゆっくりベットに横になると睡魔がまた襲ってくる。

目を瞑り睡魔に身を任せ意識を手放した。


「様子はどうだ?」

男の声が部屋に響いた。

エマが男の方を見やりため息をつくと口を開いた。

「…何も覚えて無いんだってさ。」

男は顔をしかめるとエマに言葉をかけた。

「いつから覚えて無いのか聞いたのか?」

「ちゃんと聞いたわよ、気付いたら森近くの街道にいたんですって。」

そうエマが言うと男は考え込む。

長い沈黙の後一つ一つ確認するように口を開いた。

「森に入ったのは間違いないだろう。

だがあの娘には傷一つ無い、あれ程の血を浴びていたのにだ。

返り血だろうがあの森の魔物はどれもB+ランクを超えている。

一緒にいたのがB+パーティじゃああの森を抜けられない。

Aでもキツイだろう、A+以上なら森に入る際ギルドへの報告義務があるがそれもギルドに届けられていない。」

エマが男の言葉に頷く。

「ならばあの娘がどうやって抜けたのか?

あの森に子供一人入っても死ぬだけだ、ならばパーティーと一緒に入った。」

エマが黙って男が一人喋るのを聞いていた。

「パーティーメンバーはA以上だが大前提にこのパーティーは子供を連れて入らなければいけない理由が合った。」

「理由って?」

エマが男の言葉を遮り質問する。

「……おそらくだが囮もしくは慰み者この2つの中どちらかだ。

護衛依頼ならわざわざあの森を抜ける意味が無い。」

エマが怒りに肩を震わせた。

「続けるぞ、囮ならば血を浴びているのにも得心がいく。

血はあの森の魔物が引き寄せられる好物と言って良い。

あの娘を囮にしながら魔物を狩っていたパーティーが想像以上に強い魔物と出会いそして殺された。

パーティーが全滅しあの娘が残された、死にものぐるいで逃げ街道に出た。

もともと出口に近かった場所まで来ていたのかもしれない。

その時の悲惨な記憶に耐えきれず記憶まで消してしまった、もしくは覚えているが言うとまた同じ目に合うと思っている。」

そうエマに男が推理した内容を聞かせる。

「なんて悲惨な…」

エマは涙を浮かべ男を見ると、男も自分の話た内容に俯いていた。


部屋のドアがノックされると恵美は目を覚ました。

少し寝ぼけ呆然とした頭で返事をする。

エマが食事を運び男を連れ立って入ってきた。

街道で出会った男だった。

少しの沈黙の後エマが食事を恵美の前に置き話始めた。

「…エミちゃんもし良かったら私達と少しの間暮らしてみない?」

どういう話になったのか分からず首を捻った。

「その…何だ…俺達はこの村で衛兵のような事をしている。

良ければ一緒に行動してみないかと…。」

男が喋るのを聞いていたが最初にあった威圧感を思い出し顔が少し引きつる。

そんな様子を見てエマが急に涙を流し始めた。

「やっぱり…。

本当は覚えてるのね…。」

恵美が驚きエマを見て固まる。

「…エミちゃん辛かったでしょう。

魔物たちの餌のように扱われて…けどここには貴方をそんな風に扱う冒険者なんていないわ…!

私達を本当の両親と思って甘えて良いのよ。」

恵美はそう言われて混乱する。

エマを見るとハンカチで目を拭い、男を見ると上を向き大粒の涙が頬を伝っている。

訳が分からないが自分が悲劇の中心で二人が盛大な勘違いをしているのだけは分かった。

胸が罪悪感でキリキリ痛むが本当の事情など言えず、取り敢えずエマの腹辺りに抱き着き顔を埋めた。

その様子を見たエマも優しく抱きしめ、男は限界だったのか部屋から飛び出し泣いていた。

大声で泣いているのだろう部屋まで漏れていた。

混乱する頭で考えるがもう遅い、恵美は取り敢えず家族になったらしい。

男の泣き声だけが部屋に響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ