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虫と女神と異世界転生  作者: 木原 柳
3/9

虫と女

上野が笑った顔より目の前の虫に目が離せない。


幼い頃から虫だけは駄目だった。

恵美が動けずにいるとムカデがこちらに向かってくる。

「ヒッ」

短い悲鳴とともに思わず後退るが構わずムカデが近付いてくる。


上野が口を開く

「可愛がって頂くようにお願いしたはずですが…」

心底面白そうにこちらに向かって話かけてくる。


ムカデが足元に纏わりつく恵美は心底震えた。

逃げようにも恐怖で身体が硬直して動けない。

その時に上野から言葉が投げ掛けられる。


「ペットになるのですから名を付けてやって下さい。それが貴方と部下との絆になります。

召喚の際に名を呼ぶと召喚対象がやってきますので覚えておいて下さい。」

上野の言葉が聞こえたが足元の感触にそれどころでは無かった。


離れてお願い、心の中で恵美は叫ぶ。

何回も心の中で呪文のように唱える。

すると少ししてムカデが離れて恵美から距離をとった。

少しホッとした気持ちでムカデを見るがカチカチと牙を鳴らす音に寒気がした。


これを可愛がるなんて無理でしょう、恵美は思うが上野に抗議は出来なかった。

上野にでは虫にしますと言われたらそれまでだ、最悪死ぬより酷い目に合う。


「早く名を授けてやって下さい。」

上野に急かされる。少し声が不機嫌に感じた。

考える時間もほとんどなく急かされるようにして上ずった声で恵美が口を開く

「カ、カディで」

そう言った瞬間ムカデが光る恵美の手の甲も同様に光っていた。


上野がこちらを見て

「安直な…」

と言われたのは聴き逃さ無かった。





ムカデに名前を付けたあと少しして召喚には魔力が必要だと上野から教わった。

そして召喚後は必ず労いの言葉をかけなければいけないという事も教わった。


召喚した後撫でてやると帰るように設定したと上野が言う。

ペットなのだから一日一回は呼び出して可愛がって下さいと上野に言われた時は殴りたい衝動を抑えるのが大変だった。


しかしこれで上野と離れられると思うと少しは気が楽になる。

今後一切会いたくは無い恵美は思う。


上野が手を伸ばし恵美に触れた瞬間恵美は意識を手放した。

意識が沈む少し前に上野から

「それでは楽しい転生を

次に会う時はお願いを達成した時か達成出来なかった時です。」

その言葉は恵美を憂鬱にさせるのに充分だった。



恵美の意識が無くなるのを確認すると指を鳴らす。

底の見えない穴が恵美の隣に空いた。

恵美を抱き上げ上野が穴に向かって落とす。


「下等な女神に制裁を」

独り呟いた上野が振り返り歩きだす。

上野と呼ばれた人物から黒い靄に変わっていく。それが部屋に充満していった。

部屋からただの暗闇になった瞬間に靄が言葉を発した。

「期待していますよ。」

声が少し弾んでいた。

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