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虫と女神と異世界転生  作者: 木原 柳
2/9

説明

急にこんな場所へ連れて来られ次の瞬間に恵美に選択を詰め寄る。

あれよあれよという間に進み何をすれば良いのか分からない不安と恐怖で戸惑っていると上野が言った。

「転生者にはまず私が説明する事になっております。

何か質問がありましたら最後に少しだけ時間を取りましょう。よろしいですね?」

有無を言わせ無い迫力を感じた恵美は肯定する。

満足そうに頷き上野が話す。

「まずそうですね恵美さんには転生した際やって頂く事があります。決して難しい事ではありません。私も私の部下も力を貸しますので、やって頂く事は最後にお話ししましょうか。」

淡々と喋った上野が何処からかカップを取り出し口をつける。

そしてカップ片手に話を続ける。

「それでは王国での注意ですが…」

上野が口に出した言葉に驚く。


「日本じゃ無いんですか?」素っ頓狂な声とともに思わず口に出した。

その瞬間実体の無い身体に痛みが襲ってきた悲鳴をあげようにも声が出せない。それが数秒続いた。

上野は表情を変えず微笑んだままだが不機嫌そうに

「質問は私の話が終わってからです。」と冷たく言い放った。


少しも変わらない表情に身震いし押し黙る。それを確認して上野が喋りだした。

「では王国での注意事項説明させていただきます3点だけですが良く聞いて下さいね。 

1,私にあったと言わない事

2,女神を敬わない事

3,ペットを大事にする事

それさえ守れば自由にして頂いて構いません。」

ゆっくりと確認するように言った。


恵美は疑問に思うも押し黙った。

二度目は無いだろう、そう感じたからだ。


「では次に恵美さんが転生する状況を教えます。貴方は王国がある大陸の洞窟内で10歳くらいの見た目で産まれます。

種族は魔族になりますが見た目や機能は人間と変わりません。むしろ人より弱い。目立たないように生きて行かなければいけません。」

ただしと上野は言葉を続ける。

「恵美さんには多大なる才能とそれに伴う道具を授けましょう。もちろん使い方は教えますがまずは説明を終えてからになります。」

そこまで話終えるとカップを落とす。

カップが地面に到達するとそのままの勢いで吸い込まれていく。不思議な光景だった。


それから幾つか説明があった。恵美に余り質問して欲しくないのか詳しく説明していた。

分かった事はここは日本どころか地球ではない事、この世界には大陸が4つに別れている事、言語は分かるようになる事、人族、魔族、ゲームで言う魔物がいる事、それらは憎しみ合っている事、王国は人族領だという事、話の流れで王国の位置する大陸も分かった。

そして恵美が聞きたかった転生後の処遇だ。

上野のお願いを聞けば開放されるらしい。その時に与えられた才能と道具とやらも好きにして良いことが分かった。注意事項とやらも好きに破って良いというお墨付きだ。



「では最後に最初に言った恵美さんにやって頂く事お話しさせて頂きましょうか」

そう言うと上野が恵美に近づき地図を見せる。その中の恵美が転生する大陸とは違う大陸を一つを指し

「恵美さんにはこの大陸の王を殺していただきます。要は処分ですね。期限は5年です。」

一切表情を変えず事も無げに言う。

「これで説明は終わりです。それでは質問をどうぞ。ただ時間の都合上質問は3つまでとさせてもらいます。」

上野がそう言うと今まで見つめていた目を反らした。


3つまで恵美は考えるがどうしても目の前の男にふざけないでと叫びたかったが、それを言って何をされるか分からない。混乱した頭を必死にニュートラルに戻しながら口を開く、

「あ、あの…何で…どうして私何ですか?」

他に聞きたい事があったのに何故か口を開いた瞬間に飛び出た。


迷いもせずに上野は答えた

「私が王を処分しようと決めた時あなたが丁度死んだからですよ。」

成り行きですね上野が続けざまにそう答える。


理不尽な言葉に恵美は怒り出したかった、何も考えずに罵りたかった人の命を何だと思うのと喉まで出かかった言葉をグッと飲み込む。怒った所でさっきのように痛みを味あわせられるか、最悪殺されるそう感じたからだ。


改めて質問を考えるこの状況で聞くべき事は何だ、落ち着け。そう心の中で恵美は思う。


迷ったが残り少ない質問を決めた恵美は言葉を選びながら質問する。

「王を…処分すると言いましたよね?

処分って私が出来ない場合どうなるんですか?例えば諦めちゃったりもし…」

私が死んじゃったらと最後まで言えず途切れてしまう。恵美は死ぬと言う言葉に過敏に反応してしまう。


上野は静かに答える

「もしも恵美さんに不測の事態が起こった場合、死んでしまったり期限に間に合わないそんな時は転生させます。死んだ方がましと思う程の残酷な目に合ってもらいます私自ら行います。何回でも転生させ私の気が晴れるまで何度もそれを繰り返します。もちろん記憶は消しません。」

上野は表情を変えずにそう言い終えた。

「もし良ければ試してみて下さい。」

上野が言い終えたその言葉は恵美を服従させるには充分だった。


身震いしながらも最後の質問を恵美は投げかける

「ペ、ペットって…何ですか?

私は何か飼うんですか?」

恵美がそう問いかけると上野が一瞬考え答える

「はい、ただしいつも一緒にいる訳ではありませんので安心して下さい。後でご紹介しましょう。」


「それでは説明を終わりましょう。」 

上野がそう言うと部屋がまたしても形を変えた。

腑に落ち無いが恵美も気持ちを切り替える。

次は恵美が生き延びる為の手段だ話を聞き逃しても再度丁寧に教えてくれるなどこの男はしないだろう。


「そういえば恵美さんに形を渡しておりませんでした。少々失念しておりました。」

そう言うやいなや上野が恵美を掴んだ。

実体の無い身体にどうやって触れるのかと驚くも今までの事から上野が人のふりをした別の何かだと分かっていた。

上野と言う名前さえ偽物だろうなそう思った。


掴まれた箇所からどんどんと熱を帯びてくる。

少し痛いが我慢した。自分という存在が形づくられていく。時間はそれ程経ってないだろうが長く感じた。


「これで如何でしょうか?」

上野が手を離すと同時に喋りだし何処からか姿見まで出してくる。

「作り治せますのでおかしい場所等教えて下さい。」

恵美が改めて鏡を見る。美少女だと思った。

黒髪に黒色の瞳、目鼻立ちも悪く無い、いや美人の部類だろう。肌の色だけが変に青白い一瞬病人と思える程血色が悪かったが薄幸の美少女と言われれば納得出来なくは無い。

この姿だけ見れば転生も悪く無いと思える程の出来だった。


「どうやらお気に召したようで何よりです。」

上野にそう話しかけられる。

そして急に左手を掴まれ手の甲に指を押し当てられた。押し当てられた箇所が痛い、そして熱くもある。


徐々に手の甲に幾何学的な模様が浮かび上がる。

上野が指を離すと模様が消え元の肌に戻った。


恵美が手を見やると

「それが才能です。

召喚の魔法陣を描かせていただきました。

使い方ですが左手の甲に右手を置いて召喚と言って頂くだけです。」

上野がそう言うと恵美に早速使うようにと指示する。


恵美が言われた通りに手を重ねると

「召喚」

静かにだがハッキリと唱えた。


甲から幾何学的な模様が広がり、辺りには黒い靄が充満する。

突然靄が集まり黒い球体となった。

球体が音ともに割れた。

出てきた生物に恵美は息を飲む。


上野が言う

「そちらが私の部下兼恵美さんのペットになります。」

鋭く尖った牙と赤黒く光る外郭に無数の足を生やした5メートル程のムカデだった。

「可愛がって頂きますようよろしくお願いします。」

上野の表情が変わった。

とても愉快そうにこちらを見て笑った。

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