第25話 最終的な現在の「四姉弟」と林忠崇の関係1
外伝等の小説で描く予定はないので、この際、5話程掛けて、最終的な「四姉弟」と林忠崇の関係について書いておきたいと思います。
本当に当初の予定では、全く血縁等は無い予定だったのに、大きく変わり過ぎました。
ついで、という訳でもないですが。
小説で描くことは無い予定なので、戊辰戦争の際に何が裏であり、野村家の藁の上の養子に、林忠崇の隠し子がなったのか。
そして、林忠崇が、何故に「四姉弟」以外の野村家に冷たいのか等々。
(少なくとも作中で、林忠崇が、「四姉弟」の野村家を気遣うシーンはありません)
それにつき、説明をしたいと思います。
作中でも述べましたが、林忠崇が、自分の隠し子の事を知ったのは、大正時代になってからです。
それまでは全く知らず、仙台まで随行した部下が亡くなる際に、ようやく教えられて、一応、仙台に行って調べてみましたが、50年近い歳月の流れの中で、自分の隠し子の母がいた、その店は潰れており、探すのを林忠崇は諦めました。
そして、林忠崇は第一次世界大戦勃発に伴って、欧州に出征します。
また、野村雄も欧州に赴き「四姉弟」の父となり、戦死します。
更に上官として、岸三郎提督の娘婿、野村雄が家庭内のゴタゴタを起こしたのを、林忠崇は欧州で把握しますが、その詳細を知り、更に村山幸恵の事を知ったのは、林忠崇が、日本に帰国してからのことです。
(岸三郎は、林忠崇にしてみれば、欧州時代、重要な部下でしたから、気に掛けていたのです)
少なからず、時を遡りますが。
戊辰戦争当時、野村雄の名義上の祖父は子どもがおらず、弟を養子にするように勧められていました。
仲の悪い弟に野村家を継がせたくなかった名義上の祖父は、林忠崇の隠し子の話を聞きつけ、仙台で作った愛人が自分の子を産んだ後に死んだ、という話をでっち上げ、妻との間の藁の上の養子にしたのです。
何となく怪しい、と周囲も想いましたが、その子が成長し、立派に育ったので、野村家の中での話だから、ということで、目を瞑っていました。
更に歳月が流れ、林忠崇の隠し子にして野村雄の父は、野村雄らを儲けます。
そして、野村雄は、同級生の幼馴染み、篠田りつと仲良くなり、海軍兵学校入学前に事実上の婚約を申し込み、篠田家もそれを受け入れます。
この時点では、野村家もこの縁談に、当人同士が好き合ってているのだから、と賛成していました。
とは言え、野村雄が海兵隊士官にもなる前です。
一応、正式な婚約は、野村雄が海兵隊士官に任官してから、ということになりました。
ところが。
野村雄が海軍兵学校在学中に、篠田りつの兄、篠田正が手張り相場で大失敗してしまいます。
後に大相場師となり、高額所得納税者として、貴族院議員にまでのし上がった、篠田正の生涯最大の失敗で、以前から苦しかった篠田家は、更なる借金を抱え込みました。
これを知った野村家は、博打打ちの兄のいる篠田りつと野村雄の結婚に難色を示すことになります。
(相場師といえば、立派に思えるでしょうが、傍から見れば、博打打ちには違いありません)
そこに、岸忠子との縁談が、柴五郎提督から、野村家に持ち込まれたのです。
野村家にしてみれば、願っても無い縁談で、篠田りつとの婚約は正式に交わしたものではない、との理屈をつけて、野村雄に圧力を掛け、篠田りつとのことを黙らせて、岸忠子との結婚にまい進します。
ですが。
野村雄にしてみれば、何となく気の進まない縁談でした。
下手に上官、それも将官の娘と結婚すると、それこそ財部彪のように、義父の引きで出世したように見られるし、篠田りつと岸忠子を比較したら、自分としては、篠田りつに未練を感じてしまうのです。
とは言え、時代が時代です。
戸主である父の反対があっては、篠田りつとの結婚はできません。
そうして悩んで、憂さを晴らそう、と野村雄は芸者遊びをして、村山キクと一夜の関係を持ち、村山幸恵を儲けるという事態が起きたのです。
実の兄弟なのだから、そこまで毛嫌いしなくても、と言われるでしょうが。
現実でも、下手に関係がこじれたら、何で弟に全財産をやらないといけないのだ、それくらいなら全額をどこかに寄付した方が遥かにマシだ、何だったらヤクザに渡してやる、等々という事態が起きる。
こじれたら、とことん親族間の関係がこじれてしまう、というのが、現実でもあるのです。
そんなことから、野村雄の名義上の祖父は、林忠崇の隠し子を藁の上の養子にしたのです。
(更に、このことについて、野村雄の名義上の祖父にはメリットがありました。
それは真実を明かす者が、まずいない、ということです。
林忠崇の周辺は、殿の隠し子であることを明かすことはないでしょうし、また、飯盛り女が、私の子だ、と言ってきても、金目当てだ、信憑性が無い、と周囲が一蹴するでしょう。
それもあって、藁の上の養子に迎えたのです)
つい、後書きが長くなりました。
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