第19話 半ば余談ですが。宇垣一成と立憲民政党について
米内光政内閣の事を描いたついで、というか半ば余談になりますが。
作中で、私の当初の予定では、ここまで叩く、というか、そんなに悪い描写をするつもりはなかったのに、いつの間にか、叩く、悪い描写になってしまった方というのが、それなりにおられます。
宇垣一成と立憲民政党は、そんな感じになってしまった方の一人(?)です。
史実の宇垣一成は、陸軍大臣を長年にわたって務められ、陸軍内の大実力者でも一時はありました。
陸軍を退かれた後も、宇垣一成首相待望論が、何度も出てくる程の人物でした。
実際、史実で、宇垣一成内閣が、組閣寸前にまで至ったことがありますが、陸軍内の反発が強く、いわゆる陸軍三長官合意により、陸軍大臣が得られず、宇垣一成内閣は流産することになります。
(更なる余談をすれば、谷甲州氏の「覇者の戦塵」シリーズでは、宇垣一成内閣成立により、日中戦争への本格突入が回避されていますし、他にも、かつての商業仮想戦記の中には、宇垣一成の行動で歴史が変わる、というのがそれなりにあった、と私は覚えています)
そんなことから、「サムライー日本海兵隊史」本編において、私自身迷った末に、宇垣一成内閣は誕生して、作中で登場していますが。
「覇者の戦塵」と異なり、「サムライー日本海兵隊史」(本編)における中国内戦介入阻止に失敗して、宇垣一成内閣は総辞職するという羽目になりました。
(この辺り、第7部の描写と第8部の描写が、結果的に食い違っています。
きちんと整合性を保つべきだったのですが、筆が奔り過ぎて、食い違う羽目になりました。
その反省から、第9部以降の第二次世界大戦の描写について、欧州戦線と極東戦線の描写について、ほぼ並行的な時間で描かれる、ということにもなったのです)
何でこうなったのか、というと。
史実では朝鮮総督を宇垣一成は務めていますが、この世界では韓国は独立国なので、宇垣一成が朝鮮総督を務める訳がありません。
また、血盟団事件が史実と異なったこと等から、史実と異なり、井上準之助が健在で、それもあって、宇垣一成は史実より早く立憲民政党総裁に迎えられました。
更に、軍部大臣現役武官制が大正時代に廃止されたままだったので、宇垣一成が、自分が陸相兼務という裏技、剛腕を揮うぞ、と組閣時に陸軍を半ば恫喝できた、というのもあります。
もっとも、史実における立憲民政党や宇垣一成の外交政策を調べる限り、私の目からは、宇垣一成内閣が中国内戦再開阻止(史実の日中戦争開戦)を阻止できないとしか見えなかったので、そのように作中では描写をしています。
もっとも、結果的にそれが功を奏したことから、更に言えば。
外伝等によれば、第二次世界大戦の大被害で戦争に倦んだ日本の国民は、第二次世界大戦終結後の衆議院選挙で、立憲民政党を勝たせます。
そして、片山哲が立憲民政党総裁となっていて、数年に渡り、小泉又次郎幹事長の下、片山内閣が史実と異なり、存続したというのが暗示されています。
ということは、「サムライー日本海兵隊史」世界では、昭和の末頃には、土井たか子と安倍晋太郎が手を組んで、小泉純一郎を衆議院議員に、と応援演説を繰り広げている世界になっている可能性が高いわけで。
つまり、史実の保守合同ならぬ、史実の社会党と日本民主党(改進党)の合同が成って存続してしまったようなカオス政治世界に、「サムライー日本海兵隊史」世界は、第二次世界大戦後になっているという。
政権交代を度々している、ある意味、健全極まりない二大政党制に、第二次世界大戦後の日本政治はあるようですが、史実とは余りにも違い過ぎるよ、というツッコミの嵐が起きる世界になっています。
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