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クロス・ノクターン ~Me against THE WORLD~  作者: JUNA
STORY.1 The white JACK-POT ~ラスベガス編~
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63 警官とカシャと

 一方で、リオとメイコを出迎えたのは、サブマシンガンの雨だ。

 連射の嵐が、ホテル入り口から浴びせられ、2人の乗ったマスタング コンバーチブルに穴をあける。

 相手は、ホテルの傭兵。乗り捨てられた高級車や、ホテルを照らすサーチライトを盾に、撃ってくる。


 「刺激的なウェルカム・ドリンクだ、全く!」


 ジョークを飛ばしながら、リオはハンドルを切り、車をエントランスへ一直線に伸びるコンコースから逸らした。

 等間隔に並ぶパームツリー。その間から芝生へとダイブしてスピン。


 ハンドガンとサブマシンガンの雨が、2人の方へと注がれる。

 幸いに、生い茂った緑と、放置している客のレクサスが盾になり、何とか無事。

 

 2人は乗ってきたマスタングのトランクから、銃器を引っ張り出し、レクサスやパームツリーの影に隠れて、相手に銃弾を浴びせていく。


 持ってきたのは、ありったけの銃器。

 ハンドガンから、サブマシンガン。グレネードランチャーまである。


 既に、弾丸の雨で、盾にしている車は穴だらけだ。

 いつ、貫通してもおかしくない状況。


 「メイコ、援護を!」

 「了解!」


 ショットガン、レミントンを手にしたメイコに叫んで、リオは愛銃 ジェリコ941を弾く。

 散弾で敵を引きつけながら、ハンドガンで一人ずつ、確実に敵を打ち抜いていく。


 しかし、どんな状況でも「生贄」というやつは、望んでなくても召還されるものだ。

 正門から、サイレンを鳴らして、ラスベガス市警のパトカーが何台も入ってくる。


 「警察?」と驚くメイコに、リオは言う。

 「誰かが通報したんだ。これだけのバンバン撃ってりゃあね!」



 ドアを開けるや否や、それを盾に保安官が銃撃。

 黒服たちは、そちらにも弾丸を惜しみなく打ち込む。

 両者の戦いは、確実に戦力を削っていた。

 パトカーの窓ガラスや赤色灯が吹き飛ぶたびに、どちらかの陣で人が崩れ落ちる。


 リオとメイコが手出しできる状況ではない。 


 「警察が来て、銃撃が一層ひどくなってます!」

 「クソッ! 外野がしゃしゃり出てきやがって……。

  お次は、パット・ギャレットでも呼んでくるってか? お巡りさんよ!」 


 リオが冗談交じりに唇を噛んだ、その時だ。


 ストリップ側にあるVIP専用レーンから、一台の中型トラックが入ってきた。

 いやに大きい2本の排気塔から黒煙を吐きながら。

 巨大な4WD仕様のタイヤを穿き、普通の車両より高すぎる車高。

 何より運転台の背後で光る銀色のコンテナ。


 「なんだ?」


 そんなトラックが三台、銃撃戦の現場に姿を見せて横一列に並ぶと、リオ達が入ってきた正面玄関へと、ゆっくりバック。

 幅50メートルはある正面コンコースに、壁を作る。

 何だ、と呆気にとられるホテルの兵士や警察官。

 直後! トラックが一斉に後輪から煙を立ち上げ、スキール音を響かせながら動き始めた!

 ロケットスタート。スピードを緩めずに突っ込んでくる!

 

 トラックに感じた気配。

 メイコは叫んだ!


 「逃げてリオ! カシャよ!」

 「えっ!?」


 困惑するリオの手を引いて、2人はレクサスの脇を離れ、芝生の中へ。

 トラックは、停車している高級車やパトカーに乗り上げ、押しつぶし、大型バンパーで弾き飛ばしながら迫ってくる。


 その無機質な恐怖に、屈強なポリスメンも、どうすることもできず。

 銃を捨て、脇の茂みに次々飛び込んでいく。


 ガッシャーン……!!


 地面を揺らす程の、凄まじい衝撃。


 中央のトラックが、逃げ惑う男たちをひき殺しながら、エントランスに乗り上げて、ホテル入り口を破壊。

 土煙が、瞬く間に立ち込めていく。

 残る二台も、建物の外壁に穴をあけて静止した。


 「……っ!」


 直後、更に一台のトラックが、正門を破壊して突っ込んでくる。

 破砕したレンガを纏いながら、車両はバランスを崩して横転。路肩のパームツリーに激突して停止する。

 その様子を、マスタング越しに見る2人。

 後輪が空転して止まる気配を見せない。

 横転した車両の後ろに、綺麗に3台が縦列停車。


 沈黙が、ホテルを包んだ。


 スクラップと死体の廃棄場と化した、高級ホテルの玄関。

 銃撃も止んで、建物からホテルの兵士が恐る恐る、トラックへ。


 「いったい…あの車は?」

 

 茂みの中で動揺する警官の1人に、リオは話しかけた。


 「無線で、このホテルから半径2キロを封鎖するように言って」

 「あ、あなたは?」

 「元FBI捜査官よ。こういうヤバイ時の動き方は、よく知ってる。

  とにかく、この場所は私たちに任せて――」

 「なに寝言いってやがる! コイツはバッジを付けた人間の仕事だ!

  一般市民はここから逃げろ。今すぐに!」


 至極全うな返しだが、リオは制服の肩を掴んで、警官に怒る。


 「いいか? お前たちが黒服どもと、ヒートごっこをしてた数秒前とは、完全に状況が違う!

  あのマシンのせいで、コイツはもう、お前たちに扱える事件じゃなくなったんだ!

  分かったら、私の言う通りに動いて!

  私はもう、同業者が死ぬところを見たくないんだっ!」

 「あのマシン、だと?」

 

 驚く警官に、ここからメイコが説明する。


 「そうよ。

  とある生命体を冬眠保存した状態で移送するために作られた、特殊ジェラルミン貨物の輸送車両。私たちの間では“カシャ”と呼んでいるわ。

  悪人の(むくろ)を攫う妖怪 “火車”と、運搬車を意味する“貨車”をもじってね」

 「生命体? 無欠兵士(ヴァン・ダム)でも乗せてるってか?」

 「いえ。もっとタチの悪い生き物よ」



 その言葉を待っていたかのように――


 ガンガンガンガン!


 正面玄関に突っ込んだカシャの荷台が、車もろども大きく揺れ始めたではないか!


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