禁忌
「絶対に目を開けちゃ駄目だからな・・・?」
熱っぽい、レミアの声。
レミアに背中を流して貰う、というミラクルが起きている。
・・・ちょっと街でその手の宿を見つけ。
冗談で行ってみたいと言ったら、あれやこれやで。
いつの間にか。
「もう少し強く・・・思いっきりこすって欲しいな」
レミアに注文をつける。
「・・・良いんだな?」
「冗談だ」
声を低め、尋ねるレミアに。
俺が否定する。
レミアが本気で背中をこすったら、俺の貧弱な背中は流血沙汰だ。
「もっと柔らかい方が有り難いかな」
十分加減はしてくれているのだが。
それでもやはり、ちょっと痛い。
我慢できるレベルではあるが。
「・・・もっと、か・・・」
レミアが思案気にそう言うと。
やわ
非常に柔らかい物が背中にあたる。
おお・・・?
「・・・これなら柔らかい・・・だろ?」
「おおお・・・これは・・・」
「絶対に目を開けちゃ駄目だからな」
レミアのその強さは本物。
本当に格好良いし、頼りになるのだが。
こうやって夜になると、時々大胆になる。
一線を越えることは無いし、お預け状態ではあるのだが・・・
そのギャップは非常にどきどきするし。
手を出して、レミアを裏切る事になるのも、流石に気が引ける。
だから、我慢する。
・・・最初に魔法でどうこうしようとした俺が言える事では無いが・・・でも、俺と同じ魔法を異世界転生で手に入れて、凄い上玉を手に入れる最後のチャンスってなったら・・・みんなやるだろ?
「絶対に、絶対に開けちゃだめだからな。駄目だからな」
やわやわ
結局、かなり丁寧に洗って貰った。
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「危ない!」
レミアが俺を庇って、突き飛ばす。
毒蜂の針嵐。
「レミア・・・癒しの御手よ!」
解毒の魔法を発動。
下級なので瞬間的な完全解毒など望めないが・・・マシにはなる。
「炎の刃よ!」
レミアの放った魔法が、毒蜂を焼失させた。
・・・明らかに俺が足手纏いになっている。
傷口を縛るレミアを見ていて思う。
「ごめん、レミア・・・俺が足手まといになっていて・・・」
「何を言っているのだ、エイコク殿に無理を言っているのは我々。感謝こそすれ、足手まといなどとは」
「でも・・・この先、魔族領に入れば・・・俺を護りながら戦うのは難しいだろう?」
そう。
まだ魔族領に入ってすらいないのに、この体たらく。
ようやく俺の治癒魔法が効果を完了し、変色していたレミアの肌の色が戻っていく。
「うむ・・・それは事実だな」
レミアが認める。
「なら、俺は一旦どこかの街で留まり、レミア1人で行った方が良いんじゃ無いのか?愛属は続いているんだろ?」
レミアは、目を下に向けると、
「ああ、愛属はちゃんと効果を発揮している・・・むしろ、日に日に効果を増しているようだ・・・本当に恐ろしい魔法だな、お前の愛属は」
効果を増しているのか。
夜も少しずつ大胆になってるもんな。
俺としては一線を越えてくれた方が嬉しいんだが。
確定した寝取られの未来とか勘弁して欲しい。
「・・・だから、私がお前に傍にいて欲しいのだ。お前が私から離れた場所にいるとは・・・考えたくない。お前の事が好きで好きで・・・我慢できないのだ」
我慢しなくて良いのに。
「俺も・・・レミアの事が好きだよ。可愛くて、綺麗で、えっちで」
「なっ?!」
「何時も護ってくれて、感謝している。みんなに見捨てられた俺を1人見捨てず、色々教えてくれて」
「な・・・」
ぷしゅう
効果音すら聞こえるくらい、顔を真っ赤にすると、俺の体に顔を埋め。
「やめて・・・下さい・・・今後・・・そういうのは禁止・・・です・・・私が・・・自分を抑えられません・・・」
禁止事項が増えました。