違反者
「貴様ぁあああああああ!」
レミアが神器、レーヴァテインを現出させ・・・オセを斬りつける・・・
ギンッ
光速の動きで、万物を切り裂くそれを・・・オセは、右手に持った剣で受け止めた。
「ほう、ここまでの威力とは・・・そなたらの力は、此度の魔王すら凌駕しておるよ。素晴らしい」
淡々と告げる。
・・・予期はしていたが、まさかレーヴァテインを凌ぐとは・・・!
「馬鹿な・・・!」
レミアが呻く。
「お前・・・何をやってやがる・・・!」
受け入れがたい現実。
オセが無造作に放り出したマリン。
体が切り裂かれ、血の海が出来・・・あんなの・・・脈を取る必要すらない。
何でだよ。
何でこんな事になってるんだよ?!
さっきまで・・・さっきまでマリンは普通に話してたんだぞ?!
「何を、か。本当は勇者、お前を狙ったのだがな。お前が一番何かしそうであったのでな。真っ先に殺そうとしたのだが・・・まさか、この娘がそれに反応するとは思わなかった。そのゴミの山は固有能力であるか?得体の知れない存在を殺せたのだから、徒労では無かったな」
オセが淡々と告げる。
何だよ・・・
圧倒的、とか最早そんな存在じゃない。
奇襲をかけるはずが、逆にこちらが先手を取られた。
圧倒的強者に、微塵の油断も、慢心も無い。
ギッ・・・
レミアが押される。
そして・・・左手で何かの魔法行使を始めるオセ。
「オセ・・・貴方は許さない・・・!魔神獄炎龍!」
ヴァルナが叫び、魔法を行使。
神級魔法の火炎禁呪。
だが・・・
「護りよ」
オセが紅い光を放ち、ヴァルナが放った魔法を防ぐ。
そして、同時に、レミアが更に押される・・・火炎耐性が上がったのだろう。
出来れば火炎以外の属性で攻撃したいが、ヴァルナの神級魔法は基本的に高範囲。
火炎属性であれば、レミアは絶対耐性を持つが・・・それ以外の属性を撃てば、レミアを巻き込んでしまうのだ。
「強化、刺突!」
俺が放った魔法は、しかし・・・オセに当たって、落ちる。
上級魔法程度、防ぐ必要すらない、という事か。
「貴様あああああ!」
レミアが更に力を込める・・・が、オセが着実にレーヴァテインへの対抗を進めている。
このままでは・・・!
レミアにも、高威力の必殺技は有るが・・・今の膠着状態を解除してしまえば、オセはその機動力で、俺達を各個撃破するだろう。
ジリ貧の手詰まり・・・
マリンの虚ろな目。
俺は・・・マリンと約束をした・・・
代わりに戦う、と。
なのに・・・俺は・・・マリンに命を救って貰って・・・
そして・・・今、何も出来ていない・・・
レミアが、徐々に後ずさる。
このままでは・・・レミアが・・・両断される。
くそ・・・
これで良いのか、俺?
やれるかどうかじゃない、俺は・・・やるんだ!
考えろ・・・拡大解釈・・・?
いや、規則逸脱!
俺に、何が出来る・・・?
いや、俺に、何が出来ない、と規定されていない?
むしろ、出来ないと規定されていても良い。
そうだ。
「強化──強化!」
誰が・・・連続、2回、と言った?
誰も、言ってない。
頭が・・・真っ白になる・・・
頭痛・・・いや・・・世界からの拒絶。
違反者への・・・排斥。
だが・・・乗り越える。
「強化──強化──」
頭の中に、4個の概念・・・8個・・・16個・・・
自分が自分で無くなりそうだ。
自分の周囲の輪郭が分からなくなる。
だが・・・
「強化──」
32個もの概念・・・もう何が何だか分からない・・・
そして・・・
マリンの嬉しそうな顔が浮かぶ。
マリンの体温を感じる。
そう・・・俺は・・・オセを・・・倒す・・・!




