緩和
「──です」
・・・?
聞き逃した。
何を言ったのだろう?
「フィン、今何って?」
フィンを見ると──耳まで真っ赤になって、視線を逸らしている。
・・・何これ、可愛い。
「まだ・・・貴方の事が・・・好き・・・です」
それはつまり。
愛属が切れて、も?
「フィン・・・嬉しいよ」
「はう・・・」
軽く手を回すと、力が抜ける。
・・・さっきまでの冷静な雰囲気が・・・消えてきた。
「多分、一度恋心を経験した事で、呪いが緩和されたんだと思う・・・」
「フィン・・・」
愛属の影響じゃない。
そう言われて・・・凄く嬉しい。
そして、今まで以上に愛しく感じる。
「私・・・偽りの感情でも良いって思ってた・・・でも・・・本当に貴方が好きだって分かって、凄く嬉しいんです」
フィンが顔を、俺の胸に埋める。
「愛属がかかっている時は、苦しいくらいどきどきして・・・でも、今は貴方の温かさが心地良い。今は、このままでいたい」
愛属のかけ直しは、明日にしよう。
流石に、出発前にはやる必要があるけど。
「フィン・・・何時も以上に、愛しいよ。有難うな」
フィンを抱きしめる。
「やあ・・・うう・・・何時もと同じくらいどきどきしてきたよ・・・でも、心地良い」
恐らく、手を出すならチャンスなのだろうけど。
今はただ、フィンの温もりを感じていたかった。
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魔王領、最近接都市。
此処から先は、都市機能が機能していない。
また、街に上位魔族がいる。
その為、必要な物はなるべく多く買い揃える必要が有る。
魔王領への最終防衛線。
様々な物資が集まり、贅を尽くした建物も多い。
最後の晩餐、とばかりに、散財する者が多いのだ。
俺も、高価な魔法の武具を買い揃えて貰っている。
「・・・やはりエイコク殿には安物は似合わない。領主が龍銀の鎧を所持していた筈だから、徴収しようか」
「色々と待て」
フィンがぽつりと漏らした言葉に、レミアがツッコミを入れる。
「領主の家宝を奪うな、それに、黒獅子の武具なんて着けていたら目立ちすぎるだろう。そもそも、魔術師が装備して軽快に動ける物ではあるまい」
「似合うと思ったのだけど・・・」
「フィン、冗談だとは思うが、ちょっと分かりにくいぞ」
フィンにレミアが、苦々しい口調で言う。
冗談だよな?
俺達には、隠蔽と、認識齟齬の魔法がかかっている。
魔導具の効果だ。
目立たなくする、誰か分かりにくい、程度であるが。
外側も、なるべく一般的な服装。
中にミスリルの鎖帷子を着ている。
・・・オリハルコンの方が丈夫なのだけど、ミスリルの方が軽いのだ。
後はアミュレットやら何やら。
つまり、派手な外見の装備をしていたり、更には有名な装備だったり、不釣り合いな強い装備をつけていたり・・・そういった事は避ける必要が有る。




