第五話『内に秘めた思い』
第六話です!話の貯蔵もドンドン増えてく一方なので、投稿ペース上げようかと思ってますぅ
「奴らに復讐する」
これが今の彼に出せる答え。
彼が内に秘めている、黒の部分だ。
「そっか。じゃあさっきのおじさんも?」
彼女は、先ほど自分達を助けてくれた衛兵の事を言っているのだろう。
彼女は、少し不安そうな目で、彼の顔を見る。
「……場合による。敵対行為さえしなければ、無闇に報復はしないさ。でも、政府にいる、俺達を弄んだ奴らは」
少女の不安を払拭しつつも、これだけは、彼にとって変えることの出来ない、確固たる意志。
それだけは、彼女にも知ってもらわねばならない。
それを知った上で彼女はどう行動するのかという興味もあったが、それ以上に、これを説明しないで連れまわすのは、彼の道理に反する。
「徹底的に、その罪を分からせてやる」
並みの人間なら、その殺気を帯びた眼光に忽ち、逃げるか、竦んでしまうだろう。
だが、その威圧にも等しい彼の言葉に少女は怯える様子もない。
「そうなんだ。私は、あまり記憶も無いから、人間に対して恨みとかはそんなに無いけど」
だが、少女は彼の醸し出す殺伐とした怒気とは全く違う、朗らかな笑みで言葉を紡ぐ。
「君がそう思う理由を知りたいな。だから、君について行って、私も確かめたい」
「……本気で言ってるのか?これはそんな甘ったれた旅じゃない。お前が想像してるような楽しさだなんて、無いんだぞ?」
「楽しいとか辛いとか、それは私が決める事だよ?私も、もう行く宛も無いし、君しか頼れないんだもん」
「はあ、拒否権無しかよ……」
彼女の前向きさを通り越した、その無謀にも思えるような行動力は、まだ付き合いが浅いながらも、ヒヤヒヤさせられる。
彼の旅に同行するには、余りに場違いな理由であり、彼女に、彼の復讐を見届ける覚悟があるのかも分からない。
とても曖昧な形で、彼女の同行を許してしまった訳だが、案外、悪くないとも彼は思う。
(やっぱ、孤独に極端に弱かったりするのかな、俺って)
一人、そんな事を思いながらも、夜の街並みを楽しそうに見る彼女を見ると、そんな下らない考えも吹き飛んだ。
「ほおお、こりゃ、凄い量のカーボル鋼だ。どれも多少ばらつきはあるが、純度も高い、こりゃあ良いな」
「そう言ってくれるとありがたい。済まないが、これから宿を取る身でね。早い所換金したいんだが」
「おうおう、ちょっと待ってな。計算してくっからよ」
二人が訪れたのは万屋だ。
基本的に、戦闘用の道具や、雑貨など様々なものを取り揃えており、どの時間帯でも、客層が広い為に開店している事が多い。
道具の売買も取り扱っているので、早速、創り出したカーボル鋼を金に変えることしたのだ。
「今の相場だと、この量だと四百万ネイドだな。でもお客さんそんなに纏まった額持ってると危ないし、何しろ嵩張るね。ネイド紙幣の方が良いかな?」
「ああ。そっちで頼むよ。呉々も掠めたりはしないでくれよ?」
「へへ、何言ってんです。こんな大層なカーボル鋼を持ってくる方だ。なんかの恨み買ったら、俺が大変になっちまうよ」
疑心暗鬼な彼は、店主に金を盗まないように釘を刺すが、店主は、このカーボル鋼の量を見て、イクスが相当な商人と思って、慎重に対応している。
一応、エルミナに監視させてはいるが、この様子なら大丈夫だろう。
「はい、じゃ四百万ネイドね。百万が二枚と、十万ネイド札が二十枚だ。後、面白いモン見せてくれたお礼だ」
すると、店主が何かしらの魔法を唱えると、イクスとエルミナを淡い光が包み込む。
突然の事に、イクスは飛び退くが、店主は慌てて、それを止める。
「ああ、お客さん、そんな驚かないでくれ。今掛けたのは『防盗の光』だ。ここらじゃ人の行き交いが盛んな所為か、金盗む輩もいるにはいるんだ。衛兵の見張りを掻い潜る奴もいるから、うちでこういうサービスしてるのさ」
イクスはその言葉に、エルミナに目配せすると、彼女は首を横に振る。
人を疑い過ぎるのは彼の悪い癖だが、彼はこれを直そうとは思わない。
寧ろ、これは彼自身の戒めの一つと考えている。
「ああ、悪かった。つい仕事柄、警戒心が強くてね」
「へへへ、確かにそうだ。じゃあ、その金も次の商売に使うのかい」
「まあね。そうだ、訊いておきたい事があった。実は次の行き先として、最寄りの都市を探してるんだが、良い所はあるかな?」
この街は、衛兵の監視も徹底しており、この店主や、衛兵も人柄が良い。
この街の治安に文句は無い。
だが、研究所に近いというのは大きなウィークポイントだ。
「最寄り、ね。ガタープの街なんかどうだ?ここから北にずっと進めばある中々デカイ街だ。地続きだから、馬なんかでも買えば行けるぞ」
ガタープの街。
確かヴェントリスという一族が仕切っていた街と聞いた事がある。
もしかすると、政府の上層部に繋がるかもしれない。もしも、接触することが出来れば、一気に復讐への手掛かりを掴めるかもしれない。
「確か、ヴェントリス一族の街だったか?最近訪れていないな」
「おお、そうそう。それだよ。住む分には良い所だけど、あんまり彼らと関わらん方が良いぞ。良くない噂も立っとる事だしな」
「噂?」
「あら、アンタ商人なのに知らんのかい。何でも色んな魔獣とか、とにかく屈強な生き物を集めて、研究しとるって話だよ」
「そんな事態が、噂で収まっているのか」
「まあ、『冒険者』達がそいつらの掃討作業をしてるって話もある。何にしろ物騒だから、用が済んだら立ち去る事だね」
「ふむ、そこからは何かいい場所は?」
「うーん、悪りぃけどそっからは俺も良く知らねぇんだ。そっちの方で調べとくれ」
「分かった。世話になった」
イクス達は、簡素な礼と、僅かなネイド札を木製のカウンターに置き去り、店を後にした。
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月猫舞@オトモネコから、近況のご報告を致します!




