第四話『夜風の問答』
第五話です!プロローグからカウントするとですよ!いつもの投稿より少し遅れてしまった…
街の門前で、衛兵に下された二人は、夜風に髪をなびかせながら、そこで立ち尽くしていた。
「そうだな、取り敢えず何をするか」
正直、イクスはそれほど世界情勢に詳しい訳ではなく、寧ろ疎い部類に入るだろうが、それでも限られた知識を活かし、次の行動を取る。
「たぶん、ここの街は商業が盛んな筈だ。なら、万屋なんかもまだ空いてるだろう」
そうでなければ、二人が用意した炭を売れず、街の中で細々と野宿する羽目になる。
それだけは御免だ。
「えっと、万屋は何処かを探すぞ」
「万屋に行くの?」
「ああ。そこで炭を換金する。だけど、ちょっとでも稼ぎたいからな」
そう言って、イクスは目立ちにくい草叢にしゃがみ込み、炭の入った袋を開ける。
すると、大小様々な大きさの炭が、姿を見せる。
「思っていたより多いな。まあ多いに越した事は無いか」
「ひょっとして、『異能力』使うの?」
「お、その通りだ。それでコイツを変換してやるんだ。『構造変換』」
すると、炭達が異様な音を立てて、変形を始める。
ギリギリと擦れるような音が、微妙に鼓膜に刺さる。
「もう、ちょっとッ……!」
イクスが力を込めて、魔力を込めると、それが決定打になったのか、炭が割れたような音を立てて、異なる物質に変わっていた。
「ふう、出来た」
息を大きく吐いて、イクスは額を拭う。
今のような複雑かつ、細かい変化には体力を消耗する。
「わぁ、綺麗ね。光ってるわ」
「まあな、本当は磨いた状態まで持って来たかったが、原石でも十分な値になるだろう」
エルミナは、見慣れないその石を、細い指で摘んで、目を輝かせて見つめている。
「これ、カーボル鋼ってやつ?」
「そうそう。世界にある鉱石の中でも、かなり硬い部類に入るかな」
「へぇ、そうなのね。でも、何で炭だったの?」
興味深々な彼女の知識欲はかなりのもので、そこまで深い知識は、彼もそれほど無い。
聞き齧った話でしか知らないが、それでも話してやった方が喜ぶのだろう。
「ああ、俺もそんなに詳しく無いんだけど、炭とカーボル鋼の大元の物質が同じらしいんだ。構造が違うだけでね。俺の『異能力』も、変換する物質が、近似していれば負担が少ないから、これにしたんだよ」
「うわあ、流石、何でも出来るんだね!」
少女は無邪気な笑顔で、イクスに拍手を送る。
照れ臭いが、何処か嬉しいような気持ちもある。
「凄い、か。なんか、褒められて嬉しいって思えたのって初めてかもしれない」
これまで、『兵器』として暮らしてきた自分には、あまり縁のない経験だった。
これまでは楽しさとは殆ど無縁の日々。
散々、実験と戦闘の繰り返し、娯楽は同じ『混沌種』と話す事くらい。
一度は戦争で活躍したと、『英雄』のような待遇を受けた。
だが、戦争の傷跡が薄れゆくにつれ、人々の目は段々と冷たくなる。
いつしか『英雄』のメッキは剥がれ、『道具』としての肉体と、その変化についていけない自分があった。
その上、自分達を破棄とは、全く恐れ入る。
所詮、人間は都合の良い所しか受け入れず、都合の悪いものは徹底して、排除していく。
ここで、一つ彼女に問いを投げかけてみようと思い、イクスは口を開いた。
「なあ、エルミナ。戦争の事は知ってるか?」
「うん。知ってる」
「俺は、その戦争が許せない。自分達の都合だけで起きた、あの戦争が」
これがこの復讐の旅へと思い至ったきっかけである。
別に、同情して欲しい訳では無い。
ただ、イクス自身、歪んだ行為だとは自覚している。
ここで、彼女と意見を交換しておいたほうが、後々円滑だろう。
「そうなんだ。私もあんまり好きじゃないな」
この少女の声は、心からのものか、彼を思い遣ってのものか。
もしくは、その両方かもしれない。
「俺達は、人々に認められると信じて、戦ってきたのに、結局は見捨てられたんだ。それに、俺の数少ない大切なモノも奪われた。俺は、その種を蒔いた、奴らが憎い」
彼が、敵意を向ける事は珍しい。
本来、彼は心優しい少年だった。『混沌種』が一時期とはいえ、戦争後も外部で活動出来ていたのも、彼の人柄が認められていたのが大きな一つの理由に他ならない。
それ程、敵意とは無関係な心に宿った、憎しみ。
それは、純粋な心を持つからこそ、肥大化した、正当な敵意。
「じゃあ、貴方は……どうするの?」
先程とは声音が少し違う。
今までの無邪気さの中に、何か別の意図を感じさせる言葉。
無邪気だが、思考能力の高い彼女の在り方とはこういうものなのかもしれない。
「……俺は」
段々と、文字の圧縮に慣れてきた気がしないでもないでもないでも無いかもしれません笑
また来週辺りに投稿予定です。




