第三話『森を駆け抜けて』
少々予告から遅れたかもしれません!第四話になります!タイトル上は第三話ですが、プロローグは第零話としてカウントしてます!
「おっと」
森の中を移動していると、イクスは慌てて、陰に隠れる。
それに続いて、隣を歩く少女、エルミナもしゃがむ。
「あれが追っ手だな」
「情報が早いわね……」
「変装はしてはいるが、ここは研究所に近い。怪しまれるのは確実だ。出来るだけ、隠れて進むぞ」
「分かったわ」
大規模な計画だけあって、追っ手と見られる衛兵の数も多い。
周りだけでも、四人くらいは確認出来た。
いずれも、武装しており、不意打ちを仕掛けても、効果は薄いだろう。
「もしバレたら、恋人という設定で切り抜けるぞ」
「えっ、わ、分かった」
この状況で、それを切り抜ける方法はそれしかないだろう。
彼女には、少々荷が重い役かもしれないが、そこは我慢してもらおう。
「追っ手が多いな……」
「これじゃ動けないわ……」
時間経過と共に、状況は悪化し、段々と追っ手の兵士は増えていく。
一向に減らない事から、ここに潜んでいると断定しているのだろう。
「仕方ないな。『隠密の煙幕』」
あまり使った覚えは無いが、イクスはこの状況で、効き目が見込める魔法を詠唱する。
すると、黒い煙幕が立ち込め、追っ手達の視界を遮り、しかもこちらが立てる音も遮断する効果がある。
隠密にはうってつけの魔法だ。
「今のうちに一気に抜けるぞ」
「うん。分かった」
ただでさえ、人の寄り付かないこの森で、こういった魔法を使っても、知識のない兵士達は、誰の仕業とは考えない。
これは自然現象であり、ここでは良くある事と、誤認してしまうのだ。
ここ一帯に、知識のある者には看破されてしまうだろうが、時間稼ぎにはなるだろう。
「クソ、周りが見えないぞ!」
「おい、下手に動くな!ここは何が出るか分からん!」
突然の事態に、追っ手の兵士達の脆い統率はあっさりと崩れ去る。
急造の集団など、所詮この程度で封じ込める事ができる。
さらに、そこにおまけを一つ。
「念には念をってヤツだ。『召喚・煙猿』」
その混乱をさらに増長する為の一手。
低ランクの召喚魔法も習得しているので、ここで状況に合った『魔獣』を召喚する。
『煙猿』は、『魔獣』の中では大分低位に属するが、性質として集団で行動し、獲物の身動きを封じる為に、体毛から煙幕を撒き散らす。
この性質を利用して、数匹の『煙猿』を呼び出し、兵士達の妨害を行ってもらう為だ。
さらに、彼らの出す『煙幕』を改良し、魔法化したものが、『隠密の煙幕』。
兵士達には、どう見ても、この森に住んでいる『煙猿』の気に障り、煙幕を撒かれたとしか思えない。
「凄いわね!これなら逃げられそう」
「あれで、ここら辺の兵士達は封じ込めた。だけど、油断はするなよ」
イクスの策略により、殆ど見つかる心配もなく、この森を駆け抜け、ついに夜空の下へと出た。
「ふぅ、長かったな」
「そうね。なんだかちょっと疲れちゃった」
「そこで何をしている?」
二人の会話に、一つ疑問符を投げかけてきた声に、思わず二人は、その声の方へと振り向く。
流石に、安心した矢先に飛び込んできた声なので、一瞬で彼の心は警戒へと引き戻される。
「こんな時間帯に、この森の近くで何をしてるんだ。ここは迂闊に近付くものじゃないよ。それに、研究所で爆発があって、今兵士達が調査へ向かっているとこだ。早く街へ戻ってくれぃ」
どうやら、こちらの正体を看破していた訳でなく、ただの街の衛兵か何かのようだ。
二人は内心、胸をホッと撫で下ろしながら、街に向かっていこうとした所、その衛兵は、金属音を立てながら、肩に手を置いた。
「ちょっと待った」
「まだ何か御用ですか?」
「いやね、この近隣は夜になると時折『魔獣』が出て危ないんだ。丁度見廻り用の『駆蜥蜴』を連れてきているが、乗っていくかい?」
この街に溶け込むには、願っても無い好機だ。これを逃さない手は無い。
下手に侵入しようとして、それこそ衛兵に怪しまれると厄介だ。ここは、旅人として街へ送ってもらう事にしよう。
「じゃあ、頼もうかな」
「あいよ、分かった。コイツは街の中には入れないから、街の門の所で降ろす事になるけど」
「ああ、それで良い」
「おし、んじゃ、乗ってくれい」
この街は親切な人が多いのだろうか。
この衛兵も気さくで、久々に落ち着いた時間となる。
「アンタ達は、あの街出身じゃないよね、宿は取ってあんのかい?」
「いや、これからです。ちょっと売るものがありましてね。その儲けの一部で宿を取るつもりです」
「おお、そうかいそうかい。その袋の中のものかい?」
「ええ、まあそうですね」
「まった、分かりやすい袋だよ、全く。ここの街は警備がキツイから、治安は良い方だが、資源が豊富で、富裕層もそこそこに居るからね。時々居るんだよ、金目のモンを掻っ攫うような悪党がさ」
「そうなんですか。ありがとう、気をつけます」
そんな他愛無い会話が、幾つが繰り返されている内に、目的の場所へ辿り着いた。
「俺が送れるのはここまでだ。今度からは気をつけてな!」
そう言って、衛兵の男は、その『駆蜥蜴』に乗って、引き返していく。
持ち物を念のため確認したが、盗まれている様子も無い。
親切心を疑ぐるのは、あまり宜しい事では無いが、彼はそれほどに、人の言葉を信じられなくなっていた。
「じゃ、この街で一先ず休むとしよう」
二千文字くらいに収めるのが結構苦労しますね、なにぶん、現代文を何文字以内で要約せよと言われれば、その文字数ギリギリになってしまう人種です笑




