第二話『叛逆』
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「おう、助かったよ。『人工聖霊』?さん」
かなりの距離を吹き飛ばした筈だが、『竜人族』の方は、そこから体勢を立て直し、突撃してくる。
一方、ローダインの方は、後方で瓦礫に隠れているようだが、放っておいて良いだろう。
「やはり、潜んでいたか!『人工聖霊』!」
その動きの鋭さ、殺気、共に年齢を感じさせない程の凄みがある。
『人工聖霊』と呼ばれる少女の正体は、全くイクスには見当も付かないが、人工と付くくらいだから、自分達と似た出自なのだろうか。
見た目は、銀髪に、水色の澄んだ瞳が特徴の、美しい少女だが、『竜人族』の突進に動じる様子もなく、立ち尽くしている。
「はっ!何の動きも無いとは!怖気付いて動く事もままならんか!」
そう言い放った直後、男は吹き飛ばされる。
一瞬だけしか見えなかったが、光の刃が、男を弾き飛ばしたのが見えた。
「ちっ!予備動作も無しに、『異能力』か!」
もう二発程、彼は攻撃を浴びているが、しぶとく、まだ闘志を絶やしてはいない。
これらの攻撃を『異能力』と断定したのか、今までの攻撃的な姿勢から、警戒しているのか、防御を固めている。
「来ないなら、私から行くよ?」
「来るが良いさ!返り討ちにしてやろう」
「そう。じゃあ遠慮なく。『魔力咆哮』」
直後、極太の閃光が、『竜人族』の男の身体を深々と貫く。
その神速の一撃を、彼は防げる訳もなく、吐血する。
「何ッ……!」
「貴方じゃ、私には勝てないよ」
勝負は決した。
紛れもなく、少女の勝利だ。既に、男も膝を付いており、戦える状態では無い。
「ギリエネス殿、ここは逃げましょう」
「ハァ……!そうですね。退却しましょう」
「逃がすかよ」
劣勢と見て、退却をしようとすると二人に、イクスは真っ先に否定する。
「『構造変換』」
魔力がある程度回復したので、それを消費し、イクスは『構造変換』を行使する。
幾らでも応用の効く能力とは、その工夫や、下準備次第で、幾らでも化ける。
「おいっ!?何故お前がそれを使えるッ!?確かに弱体化させた筈だぞ!」
「残念ながら、少し免疫が出来てたんだよね。まだフルパワーは無理だけど、このくらいはギリギリ出来るかな?」
「何だ、この揺れはッ!?」
イクスの仕掛けた大技、それは時間がかかるが、それだけの威力を発揮する。
瓦礫の山が揺れ動き、その場の二人も動揺を隠せない。
それに、その足場が揺れている所為で、逃げる事もままならない。
「『大地の突角』」
その二人を貫いたのは、巨大な角。
瓦礫の形状を変化させ、練り上げられた鋭利な角は、轟音と共に迫り出し、二人を打ち上げる。
「『構造変換』」
その言葉で、迫り出した巨大な突起は、分離する。
本来なら、自身の触れられる範囲でしか操作出来ないが、これはそれを利用した応用だ。
自身の身体の部分の形を変える事で、その物体に触れておけば、それを克服できる。
瓦礫を束ねたのも、分離させたのも、その中に自身の身体で変化させた糸のようなものを仕込んである為だ。
「ひぃッ!?もうやめ……」
「『氷の凍拳』」
この『構造変換』は、変化させる物体は触れてさえ居れば良い。
つまり、それは空気中の粒子にも同じ事が言える。
変化させる規模が大きかったり、細かいものであったり、つまりは苦労するもの程、必要な魔力は大きくはなるのだが。
「くたばれ、下郎」
ベキャッ!と生々しい音を立て、その氷で出来た拳は容赦無く二人の身体を地面へと叩きつける。
「フィナーレだ。『構造変換』」
「もッごご、やびぇじぇぇ…ッ、だじゅげぇじぇぎゅえッ」
「ん?聞こえないな。『氷塊爆散』」
その巨大な氷の拳は、その言葉に従い、爆散する。
其処で生まれたエネルギーは計り知れず、容赦無く二人の身体を肉塊へと変えていった。
「はぁ……やり過ぎたか」
『異能力』の使用には魔力を伴う。
非常に強力な能力だが、使い放題だなんて上手い話はない。
何かの強みには、何かの代償が付いて回る。
世の中の摂理に、人知を超えるような力も逆らえないらしい。
「なかなか惨い事するのね」
「ん?彼奴らに慈悲をかけるのか?」
「いいえ。だって、私達も殺されかけたもの」
「ああ、その通りだ。分かってるじゃんか。気が合うのかもしれないな」
ピクリとも動かなくなった、二人だったものは、瓦礫の一部を紅く染め上げている。
「そういえば、お互い自己紹介、まだだったな」
「あ、確かに。私は、エルミナ。貴方は?」
「ん、俺はイクスだ。俺はこれから追っ手が来る前に逃げようと思うけど、君は?」
「じゃあ、私も付いて行こうかな」
「よし、じゃ早速行くぞ」
ブクマしてくれた方もいますし、レビューも!こんなに嬉しい事はそうそう無いですよ!第四話も近日公開予定です!一週間くらいが目安だと思います!