プロローグ
どうも!オトモネコです!今回復讐モノを書いてみたいなと思い、執筆致しました!作者多忙により、スムーズな投稿とはいきませんが、何卒応援宜しくお願いします!
「………」
暗がりの中、青白く光る容器に入ってるのは、少年。
その中は液体で満たされてはいるが、息はできるようで、彼は、溺れている訳でも無く、物憂げに自身の目の前で、作業に勤しむ白衣の男を見つめていた。
「博士。まだですか?」
「ああ。ちょっと待ってくれ、久々に大きな作業だからな。もう少しの辛抱だ」
「分かりました」
眼鏡を掛け、機械に表示された液晶の画面を懸命に叩く男は、淡々と課せられた作業をこなしていく。
「これで、終わりだ。お疲れ様」
「ありがとう、博士」
作業を終え、額に溜まっていた汗を、男は拭う。本来ならタオルなどの布で、拭き取るべきだろうが、この大掛かりな作業は、彼にそんな余裕を残す余地は無かった。
「……まだ気になっているのか」
「いいえ……、と言えば嘘になります。僕が望んでいた些細な事、それをどうすれば掴み取る事が出来たのか、そんな事をどうしても考えてしまうんです」
相変わらず声音は暗い。
男も、作業が終わったので、少年を容器から解放する。
近くに畳んであった衣服を着込むと、少年は先程まで自分が入っていた、透明な容器に寄りかかる。
「それで、お前の中で答えは出たのか、イクス」
「……いえ。これは、博士には怒られます」
「復讐か?」
博士と呼ばれる男の返答に、イクスと呼ばれた少年は口をつぐむ。
良くも悪くも、正直者な彼は、こういった場面を上手くやり過ごす手立てを持っていなかった。
「……確かにな、お前たちがされてきた仕打ちは、そりゃあ私にも辛いものだったさ。止められるなら止めてやりたかった」
「……博士は味方ですよね?」
「勿論だ」
彼の縋るような問いかけに、白衣の男は、それを汲み取るように肯定する。
信じたものに悉く裏切られたイクスには、この博士が、最後の心の支えだった。
「さ、今日はお前たちの『異能力』の抑制作業も行った事だし、疲れているだろう。そろそろ寝ておくんだぞ」
「はい。博士、お休みなさい」
イクスの精神が落ち着いたのを見計らってか、博士が寝床に就くように促す。
先程終わったばかりの『異能力』抑制の作業は、イクス達『混沌種』が各自保有する特殊な能力の大半を摘出するものだ。
数日かけて、何度も薬を服用したり、特殊な刺激を与えて、ゆっくりと『異能力』を弱める。
何でも、この作業をしておかないと、人工で作られた合成皮膚や、組織の負担が大きいと、博士からは聞いている。
若干、身体に違和感は感じるが、支障が出る程ではない。寧ろ、微妙な疲労感が睡眠を手助けしてくれるだろう。
そう思い、彼は早々に寝床へ向かう。
「駄目だ。復讐だなんて。そんな事をしても意味が無い。それに他の奴らに面目が立たない」
最近、彼自身、研究所生活が再び身に馴染んだせいか、考え事が多くなった。
以前は、そんな事は無かったが、彼が物思いに耽るのは、度重なる迫害だ。
かつて、人間達の戦争の兵士として、出動した『混沌種』達は、なんとか異種族を抑え込み、戦争を収束へと導いた。
だが、その後待っていたのは、人ならざるモノを受け入れられない、『人間』の醜悪さだった。
最初は、『英雄』として伝わっていたが、『混沌種』に悪い噂が流れてからというもの、彼らに『英雄』としての居場所は無くなった。
確かに、彼らは強力な個体が多い異種族の軍隊を制圧出来るように、創り出されたいわば戦闘兵器。
少しでも危険の恐れがあると聞けば、即座に関わり合う事を嫌う。
さらに、迫害の風潮が出来上がった事で、人間達は完全に、彼らを奴隷も同然に扱うようになった。
それを見かねた博士が、各地の研究所に『混沌種』を呼び戻して、今に至る。
「ーークソ、寝付けないな」
就寝前に、思考の海に沈み込んだ事で、折角睡眠へと移ろうとしてた身体が再び稼働してしまった。
少し出歩けば、気分が落ち着くだろうか。
この際、少し施設内を歩き回るのも良いだろう。
「ん……?何でまだ灯が点いてるんだ?」
この時間帯は、皆就寝の時間になっている。
もし、そこに博士がいるのなら、堂々と姿を見せたら、お叱りを受ける事は分かりきっている。
「『構造変化』」
物陰に隠れ、自身の『異能力』を発動させる。彼の能力は、自身の身体、触れたものの形状、硬度を自在に変化させる事ができる。
非常に応用が効く能力で、実際、戦争中でも、敵の武器を無力化したりと、活躍を見せた能力だ。
今は、先程終えたばかりの摘出作業の影響もあり、その形状変化の力は落ちているが、隠れる事には、別に問題無い。
「ーーやっぱり博士か」
薄暗い中で見えるのは、二人の男。
一方は、見知った博士のものだが、もう一人は見た事が無い。
随分大柄で、所々から覗かせる尻尾や、角からすると、人間に酷似した異種族『竜人族』だろう。
「ーーローダイン博士、彼女の様子は如何ですか」
「そうですな。『天輪』の方は未だ起動には至っていません。魔力量は十二分にあるのですがね」
「そうですか、なら仕方が無い。なら彼女も廃棄という事で宜しいかな?」
「ええ。異論はありませんよ。もう次の世代の方は進んでいるのでしょう?なら、それで構わないのでは?」
「まあ御もっともな事なのですがね。プロトナンバーは魔力でいえば、突出しております。『天輪』さえ発現すれば、こちらとしても、そんな逸材をガラクタに変えたくはない」
彼が盗み聞きしているとは知らず、部屋の中で二人は、淡々と話を進める。
飛び交う単語は、思い当たる節が無いものばかりで、話が今ひとつ掴めてこないが、何処と無く不穏なモノばかり。
「そうですねぇ、ならまだ数日待ってみますか?」
「いや、ここで決するべきでしょう。政府の方からも廃棄の件は言い渡されているのでしょう?」
「まあ、確かにあまり期限までは残り少ないですがね。そのプロトナンバーも一斉に?」
「ええ、それでお願いします。それがトリガーとなってくれれば、幸いなのですがね。あと十分後に決行としましょう」
結論が出たようで、二人は互いに固く手を握る。
その直後、博士から放たれた言葉は、信じがたいものだった。
「『禁忌の遺産』を用い、さらなる権力を手にする。その為には、『混沌種』には消えてもらう。素晴らしい算段ですね」
「いえいえ、貴方の御協力があってこそです。では、御礼としてささやかながら、金貨百万と、話の続きを後程。一度失礼します」
『竜人族』の男は、そう告げて、部屋から立ち去る。
能力で擬態していたお陰で、看破されずに済んだが、依然として、イクスの肩は震えている。
「『言霊伝令』」
今やるべき事は決まっている。
イクスは残り少ない魔力を消費して、魔法を詠唱する。
ここにいる仲間達に、危機を知らせる事が最優先。
「皆、ここから早く逃げろ、ここは危険だ」
周囲には聞こえない言葉が、放たれ、対象になっている者全ての耳に届く。
今出来る事はそれしか無い。憎悪の念が今は、彼を動かす原動力になっている。
人を憎む事を必死に堪えていた自分は、結果、その憎しみに助けられているとは、皮肉な話だ。
「何処か、何処か出口はッ!」
あと概算で七分。
助けに向かう暇は無く、助けに向かったところで、彼らも高い身体能力を持つ為、ただのタイムロスになる。
施設内では、使用できる魔法は著しく制限される。
殺傷能力や、転移系の魔法の使用は出来ない。
「おや?何してるんだい」
「ッ!」
そこに、聞き慣れた声。
反射的に振り向くと、そこには白衣に大きめのバッグを背負ったローダインが立っていた。
「どうしたんだい。そんなに慌てて」
「……裏切り者」
「やはり、聞かれていたのか。しかも、よりによって君が聞いていたとはね。悪いが、時間が無いんだ。先に行かせてもらうよ」
博士は、少し痩せこけた右腕を挙げると、施設に取り付けられた捕縛用の魔法が作動する。
弱体化しているイクスには、それを防ぐ手立ても無く、身動きを封じられてしまう。
「悪いね。本当は君達を殺すつもりは無かったんだが、政府の取り決めた事だ。この後、『人工聖霊』の回収をするから、その時に君達も弔おう」
「黙れ、塵屑」
「これが、せめてもの慈悲だよ、イクス。君の思う不条理とはこういうものだ。君達は、もう現代の規格に合わない『道具』さ。必要が無くなった」
イクスの純粋な怒りに微動だにせず、彼は残酷に真実を語る。
その口元には笑みすら浮かべて。
「じゃあね。愛しい息子達」
そういって、後ろへと振り返ると、予め持っていたのであろう、魔法道具を使用し、暗がりの通路から姿を消した。
「『言霊伝令』」
その顔には、涙を流し、憤怒と恐怖と後悔と怨嗟を願い、彼は言葉を紡ぐ。
「同志達よ。この災禍をもし、生き延びたのなら、この言葉を覚えておいて欲しい」
滂沱の涙と、悲しみが声音を乱す。
施設内に警報の音が鳴り響く中、懸命に言葉を絞り出す。
「『我らを苦しめた邪悪共に、復讐を誓い、また会おう』。この言葉を」
「『アスライト』と」
「展開」
直後、爆炎と轟音が辺りを包み、同時に爆風が吹き荒れる。
ここに、『人間族』と『異種族』の盟約、『禁忌の遺産破棄計画』第一段階、『混沌種の殲滅』は完了された。
プロローグにしては、かなり長いですね、四千文字ですから……。段々二千文字辺りに抑えていく予定です!




