第六話 戦闘と転倒と決着と
「おぃいいいい、どうやって棒で戦えと!?」
困惑する優人。当然だろう。なにしろ武器をねだったら、新しい伝説が生まれようとしているシリーズのⅡ以降の最弱装備を渡されたのだから。
《まあ、何とかなるって。頑張ってっ!!》
無責任なことを言う女神。そもそもの原因が、自分が優人に大声を出させたことなのだが、もう覚えていないのだろう。
「くっそぉぉ、こうなりゃ当たって砕けろだッ!!」
優人はゴブリン(仮)に向かって駆け出す。
ゴブリン(仮)も錆びた剣を前に向けて、優人の方へ全力疾走を始める。
接触まで後三秒と言ったところで、優人は浮遊感に襲われる。そして、次の瞬間に体が後ろ向きに地面に叩きつけられていた。
ギャグ漫画みたいに派手に転倒していた。
優人は全身に痛みを感じながら
――どこが『運が良くなる』だよッ!!
と心の中で女神を罵る。
「う……ぐぅ……」
優人は意識が朦朧としてきている。どうやら、かなり強く頭をぶつけていたようだ。
《―――――》
女神が何か言ったような気がしたが、優人はそんなことを考えられる状態ではなく、そのまま気絶してしまった。
◇◇◇
「んん……」
優人は伸びをしながら起き上がる。
「えーと、ああ……」
優人はすぐに何故寝ていたかを思い出す。
と同時に、疑問に襲われる。
――何で食われてないんだ?
あんなに優人を食べる気満々だったゴブリン(笑)が、倒れている人間などという恰好の餌を見逃すはずがない。もしかしたら、実は体の一部が食べられているのかと思い、優人は慌てて自分の体を確認してみるが、まったく外傷は無い。
優人は安心したようで、ほっと胸をなでおろす。だが、その上でおかしいことに気付く。まったく外傷がないのだ。転んだ時にできたであろう傷も無いのである。
「って、ゴブリンはどうなったんだ?」
今、傷がなかったとはいえ、近くにゴブリン(仮)が居れば今度こそ食べられてしまうかもしれない。
周りを見てみると、倒れたゴブリン(仮)が目についた。目から血を流しており、全く動く様子がない。
「え……。これ……死んでるのか?」
優人は、ゴブリン(仮)はもしかしたら死んでいるのかもしれないと思ったが、死んだふり等の可能性も残っているので、近づいて確かめようとはしない。
《大丈夫。そのゴブリンはもう死んでるよ》
「……本当か?」
いろいろと前科があるため、女神を信じ切らない優人。 そんな優人をたしなめるように、女神は提案する。
《それなら【真天眼】で見ればいいよ。状態が『死亡』になっているはずだから》
成程確かにそのとおりである。優人は納得すると同時に、何故相手のステータスを見ないで特攻なんてしたんだろうと過去の自分に引いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
―――― ゴブリン 3歳 雄 状態:死亡
レベル:3/5
体力:12
筋力:12
魔力:12
知力:12
耐力:12
敏捷:12
アクティブスキル
【剣技〝スラッシュ〟】
パッシブスキル
【剣術:1】
【悪臭】
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どうやら、種族名はゴブリンで合っていたようだ。
状態を見ると確かに死亡となっている。
「何で死んでるんだ?」
《あぁ…………》
言葉を濁す女神。優人は追及する。
「答えろよ、女神!」
《……ねえ、聞いても後悔しない?》
「あ、ああ」
優人が肯定の意を示すと、女神はため息をついて語り始める。
《じゃあ、お姉さんが教えちゃうぞっ!!》
《君が転んだ理由覚えてる?石に躓いたんだよ。その時に蹴っ飛ばされた石がゴブリンの方に飛んで行ったんだ》
《その石は途中で少し砕けて、破片がまずゴブリンの両目に突き刺さったんだっ!!残りの本体はのどに詰まって、ゴブリンは窒息死したんだよっ!!》
「……要するに?」
《優人君は転んだだけでゴブリンを転んだんだよっ!!》
「ナニソレ怖い!?」
次回更新は明日です




