第五話 別れと遭遇と再会と
「お前のせいだろうがッ!!」
自らのステータスにさんざんツッコミさせられた優人。さらに、その魂の叫びを茶化されたことによって、女神への怒りが爆発する。
《心外だなぁ~。心外だよぉ~。確かに私も色々といじったけど、君が元々持ってたものもあるんだよ。『←NEW』って書いてあるところだけだよ、お姉さんが君にあげたのは》
《【???】のシリーズは、君が地球にいた頃に獲得した、私にもよく分からないものなんだ。経験値関連のスキルの相殺は、君が勝手に恐怖したり絶望したりしただけだしね。【神託】に【言語理解】、【神のお気に入り】と【幸福の加護】は勝手についちゃうものだから、お姉さんにもどうしようもないし……》
「ああ、そう。なんかごめん」
落胆したような女神の声に、流石に言い過ぎたかなと優人は反省する。
だが
《ううん、わかってくれたなら良いんだよ。実は【神のお気に入り】と【幸福の加護】の二つは、消そうと思えば消せるんだけどねっ!!》
「おい、お前今何て言った!!消せるなら消せよッ!!!俺、歩く災厄みたいになっちゃってるから!!!」
やはりこの女神、性格が悪い。明るい口調や、高いテンションに騙されそうだが、実は結構あくどいことをしていたりする。
「……まあ、いいか。災厄を呼び込むとは言っても、どうせ今までの俺よりはマシだろうし。それに、多分【幸運】シリーズで大体相殺されるだろうしな」
「そうだねっ!!ポジティブにいこう、ポジティブにっ!!」
女神は全く反省していないようだ。優人は盛大に溜息をつきながら、前向きに生きようと決意する。
「……そういえば、どうやったらステータスって消えるんだ?念じても全然効果なかったんだが」
先程から気になっていたのだ。どんなに念じても消えないステータスウィンドウ。目を瞑っても、目をそらしても視界に入ってくるため鬱陶しい。
《『ステータスクローズ』って叫べば消えるよ》
「なあ、本当に叫ばなきゃ駄目なのか?」
《善意で教えてくれている神の言葉を疑うなんて……信じらんないっ!!》
急に口調が変わる。怪しい。
だが、どんなに女神が悪で、どんなに怪しかったとしても従うほかないので、大声を出すために息を吸う。
「ッッスッテェェェェッェッェェェエエタッスックロッッォォォォォォォオオオオオズッッ!!!!!」
すると、見事にうざったらしい緑の表示が消える。
《 》
「……………」
小声で重要な事を呟く女神。優人は先に言えよと思ったが、あの女神がそんなことを言うはずがないので、諦める。
《それじゃ、私はもうそろそろ。これからの異世界生活頑張ってね、優人君っ!!》
「ああ、なんだかんだ助かったよ。ありがとな」
《私に感謝を示したいなら、神殿にでも行ってお祈りしてね。ああ、後、【神託】を使えば私と会話できるから、どうしても話したいことがあったら使えばいいよ》
――おい、ちょっとマテ。なんで俺がお前のことを信仰したことになってるんだよ!!
なんてツッコミが頭に浮かんだが、これでも一応世話になったので、優人はグッとこらえる。
優人は一度溜息をつき、照れ隠しに笑ってから別れの言葉を言う。
「じゃあな、幻聴」
《まだ存在を疑われてたっ!?……………。うん、また会えるといいね》
優人は軽く左手を上げ、「おう」と答える。
そして、一歩一歩森の中を歩きだした。
◇◇◇
女神と格好良く別れたはいいのだが。優人は大きな問題に直面していた。
「どっちに行けば人に会えるんだ?」
優人は盛大に迷っていた。地図をもらったりした訳ではないので、考えてみれば当然である。
とりあえず、勘で進んでみようかとも思ったが、下手に動くとマズいことになりかねない。だが、ずっと同じ場所にいても誰かが来てくれるとは限らない。
どうしようもないので、まっすぐ歩いてみることにした。
すると、前方数十メートル先に人影があることに気付く。
「あ、すいません!道に迷ってしま――」
途中で言葉を切る優人。
話しかけようとした対象が全身緑色なことに気が付いたからだ。
「まさか、ゴブリン?」
ゲームでおなじみの敵キャラを連想させるそのフォルム。
小柄で全身緑。腰には布を巻いていて、錆びた剣を持っている。
「ニンゲン、イタ。コロス。クウ」
実に頭の悪そうな言葉。
その人型生物がゴブリンなのかは優人には判断がつかなかったが、少なくとも友好的ではないようだ。
「くっそ、どうして武器も何も持ってない状態でエンカウントするんだよ……」
《多分、君が大声を出したせいで場所がばれたんじゃないかな?》
頭の中に響く声。優人は、一瞬確かにと納得してしまったが、明らかにおかしいことに気付く。
「おい、なんでお前はまだいるんだよッ!!!」
《一人で寂しいかなって思って》
茶化す女神。
優人は、お前のせいで窮地に陥ってるんだよと苦言を呈したくなったが、思いとどまる。この場で女神と争っても意味がないからだ。
「女神、武器をくれ!なんでもいいから早く!!」
《了解したよっ!!》
軽快な女神の声が優人の頭に響く。
次の瞬間、優人の目の前に細長い物体が落ちた。
木の棒だった。
「戦闘力皆無だよ!!」
――どうしてくれようか、この女神。
優人はそんなことを思ったが、もしかしたら『ユグドラシルの枝』等のレアアイテムかもしれないので、【真天眼】で見てみることにした。
『緋之樹ノ貌』 緋之樹の枝を加工したもの。攻撃力2。非売品。売値15G。
「名前かっこよさげだけど結局ただの『ひのきのぼう』じゃねえかッ!!!」




