第二話 手紙と女神と転生と
前回のあらすじ:死亡→森の中
「……はあ、パニックになっててもしょうがないしな。とりあえず状況確認」
そう言って、優人は周囲を確認した。相変わらず大自然の中なのだが、何か違和感を感じる。
「視点が低い?」
いつもよりも若干世界が大きく見える。更に、体のバランスも少し違っている気がする。それだけであれば、病み上がりの一言で済んだのだろうが、異常は他にもあった。
「一体どうして……え?」
原因を探るため、自分の体を見た瞬間、彼は驚きの声をあげた。服装が変わっていたのだ。
緑系のジャケットにジーパンだったのが、病衣ですらなく――ここは病院ではないのだから当然なのだが――革鎧と呼ばれるような物を着ている。勿論自分で着替えた記憶は無いので、誰かに着替えさせられたのだろうが、何故そんなことをされたのかは謎である。
そして、自分の体をじっくりと見てもう一つの事実に気が付く。
「体が縮んでるのか?」
鏡等は持っていないので正確なことは分からないのだが、顔と地面の距離が短くなり、体格も幼くなっているように感じる。
優人は混乱する頭で考える。
現実的にはあり得ないと自分でも思うのだが、一つの可能性に思い当たる。
「これは……まさか、転生?や、それはねえか」
最近愛読していた異世界転生系のライトノベルの主人公が、今の自分と似たような境遇だったのだ。だが、流石にそんなことが自分に起こるはずがないと、即座に否定する。
「他の可能性としては、誘拐?でもな。それだと着替えの必要は無いだろうし、体が縮んでる理由にもならない。まさか、かの有名な少年探偵のように薬を盛られた、なんてこともあり得ないだろうしな」
何らかの人体実験の結果と言う可能性は考えられたが、現代でもそこまでの技術は開発されていないはずだ。一般人には公表されていないだけかもしれないが、もしこんなことが出来るならノーベル賞ものなはずだから、公開しないメリットが無いと思ったので、一旦その考えを破棄する。
VRも同様だ。
「じゃあ、夢か?やけにリアルだけど、一番高い可能性としてはそれだよな。寧ろなぜ最初に思いつかなかったかが謎だ」
そう言って優人は確かめるためにある行動に出る。
「よし、頬をつねってみよう。………!痛ッ!なんだよ痛えじゃん。……そういえば、夢の中で頬をつねっても痛いって聞いたことがあるな。だとしたら、無駄に痛かっただけかよ」
結局判断は出来なかった。そもそも夢だったとしても判別が出来ないので、優人はその可能性は無視することにした。
◇◇◇
考えても仕方がない、ということで、とりあえず辺りを見て回ろうとした時、優人は頭に衝撃を受けた。
「ぐえ?何だ?」
何かが空から降ってきてそれが頭に衝突したようだ。ただ、そこまでの衝撃は無かったので、空高くから落ちてきた訳ではなさそうだ。
その落下物が落ちた方向を見てみると、そこには小さな袋があった。
「何だこれ?何でこんな物が。明らかに人口物じゃねえか。自然にこれが落ちてくるとは考えづらいし、俺をここに連れてきた奴の仕業か?」
不審に思いつつも、中を開けてみる。入っていたのは複数枚の金貨と銀貨と銅貨(らしき物)と、一枚の紙だった。
「……紙だけならともかく、こんな重そうな物まで一緒に落ちてきたのに、何で俺は無事なんだ?」
いつも通りなら、運悪く頭蓋骨が割れた上に、首の骨が折れていたかもしれないのだが。
だが、それは今はスルーしておこう。問題は紙の方だ。もしかしたら、今までの不思議な事態の理由が書かれているかもしれない。
紙には両面にびっしりと文字が書き込まれている。どちらが表なのかは分からなかったので、上になっていた方から先に読むことにした。
『呼ばれてなくても飛び出てじゃじゃじゃーんっ!!みんな、こっんにっちは~!!みんな大好き、女神お姉さんだよっ!!初めましての子も、久しぶりの子も、いつも通りの子も、みんなで迎えてくれてありがとうっ!!』
「……………………」
優人は、無言且つ無表情で紙を破り捨てる。
もしかしたら、破ったら拙かったのではないかとも思ったが、重要な事が書かれているならあんな冒頭にはならないだろうと思い、考えないことにした。
唯一の手掛かりらしき物も無くなってしまったので、優人は適当に歩き出すことにした。一応何かに使えるかもしれないので、袋は持って行く。
《まったく、酷いなぁ。つれないなぁ。無視して破り捨てるなんて、お姉さん怒っちゃうぞっ!!》
二十代ぐらいの女性の声が優人の頭に響く。だが、周囲を見ても人の姿は無い。
「幻聴?ヤバいな、俺。体調相当悪いんじゃないか?」
額に手を当てて熱があるか確認する優人。一応体温は平常のようだ。
《いや、無視しないでよ!幻聴じゃないよっ!!その場に居ないだけで私は存在するよっ!!》
再び頭の中に響く幻聴。少し、怒ったような響きがある。
「また幻聴が……これ幻聴なのか?いや、幻聴か」
あくまで存在を認めないスタンスのようだ。幻聴が幻聴ではないと言い張っても、説得力は皆無なのだから、仕方がないことではあるのだが。
《もういいもん。無視してもいいもん。勝手に話すもん》
声は拗ねたような独り言を話す。その現実味に、あれ?これもしかして幻聴じゃないんじゃね?と優人は思い始めてきた。
続けて頭の中の声は発言する。
《私は幸福の女神。君をこの世界に転生させたんだよ》
次回投稿は明日になります




