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朝から心臓に悪いです

お待たせしました!



チチュン チュン



鳥のさえずりにうっすら瞼に力を入れると、いつもと違う真っ白で高い天井が目に入ります。


「あら…?」


「あ、目を覚まされましたね!おはようございますお嬢様」


「んん?おはよう、ジェシカ。ここは…」


専属侍女のジェシカはいるものの、高そうな壺や絵画から彫像、大きな人形まで数々の調度品が目に入ったことで、明らかにココが家ではないことはわかります。



えーとわたくし確か昨日王宮の庭にいて、気を失って………どうやってここに来たのでしょう?



「ここは、お嬢様が滞在される間の客間だそうです。驚きましたよ〜昨夜到着したら、お嬢様を抱えて殿下が血相変えて部屋に飛び込んできたんですから」



「かっ⁉︎⁉︎」



か か え て ⁉︎



「殿下が…わたくしをここまで運んで下さったのね……?」


「そうですよ〜暫く心配されてましたけど、仕事に戻られました。業火の番人なんて呼ばれてるのでもっと怖い方かと思っていましたがそんなこともないんですね。」


「ごうかのばんにん?」


ジェシカは、あー、と失敗したという顔をしてから説明してくれました。


「人の噂話ですが……隣国や貴族の粛清、数々の闘いで相手を炎の魔法で闇に葬ってきたとか、戦う様が大変恐ろしいとかで、そう呼ばれ一部で畏れられておいでのようですね」


「へぇ、そうなの…」



時折お顔が怖かったことはあったものの、そんなこと強くは感じませんでしたが。


…って


「ハッ!こ、こんなことしている場合ではないわね、殿下に昨夜の非礼をお詫びしに行かなくては」



慌てて支度を整え、すぐそばだという殿下の私室へ。

部屋の前に立っていらっしゃる衛兵さんがわたくしが訪ねたら入れるようにと言われているそうで、ノックさえすればすぐに入れる状態。


でも「さすがに私が入るのは恐れ多すぎます。控えてますので入り用の際お呼びください」とジェシカが言うので1人でお邪魔することになってしまいました…。



未婚の男女が部屋にこもるのはもちろん良くないとされていますが、昨日の話だと、なるべく人目につかないようにしたほうがいいようでしたから…致し方ありません。



意を決して扉をノックすると

「…………ぁ」

中で何か仰ったようですが、内容は聞き取れませんでした。入れってことでしょうか?



「殿下、失礼いたします」


深々頭を下げて入室。

が、部屋に人影はありません。



あら?殿下はどこに………



もぞもぞと視界の端にベッドの上で芋虫のように蠢くものが入り込みました。


「⁉︎」


なんと殿下、まだ寝ていらっしゃいましたか!


返事をして下さったと思ったのですがひょっとして……寝言だったのですか?



「どうしましょうか…」


土が届いたらすぐに作業したいのでいつくる予定か伺いたいのもありますし、もうすぐ朝というにはおそい時間になってしまいます。


…大変心苦しいですが、ここは、お声をかけさせていただきましょう。


えーと、いつもジェシカやってくれているように…


「殿下、朝でございますよ。起きてくださいませ。でんかー」


ぽんぽんと眠る肩のあたりを優しく叩くと「んん…」と殿下は身じろぎをしてぼんやりと目を開かれます。



あ、起き「ふわ⁉︎」




肩を叩いていた手をグイッと引っ張られ、ベッドに引きずり込まれました。

わー手触りの良い寝間着から殿下の爽やかな香りが…



って違います、混乱しすぎてよくわからなくなってしまってます!



わ、こ、これは…!どどどどうしたらいいのでしょうか⁉︎だ、誰か助けて!いえでも、こんなところ見られたらわたくし令嬢として終わりです!!


まぁ、今も令嬢としては終わってるレベルですから、もう地に落ちる名誉も何もないといえばないです、はい。…言ってて悲しくなりました。



慌てすぎて冷静になるという異常事態がおこったところで、頭と背中に腕を回され厚い胸板に顔を押し付けられたものですから、たまったものではありません。

せ、背中を撫でないで下さい殿下!背筋をぞわぞわと何かが駆け抜けて変な感じがします!


精神的にも物理的にあの世にいきそうです。



苦しくてペチペチと殿下の胸板を叩くと「あ…?」と不機嫌そうな声が聞こえ、頭を押し付ける力が緩んだ隙に顔を離します。


ぷはぁー!危ない、息できなくて死ぬかと思いました!


いまだ背中に回された腕はほどけておらず体勢はそのまま涙目になりながら見上げると、パッチリと開いた深紅の瞳と目が合いました。


おぉ、殿下って、三重まぶただったのですか〜鼻筋が通って…改めて、本当にお美しいお顔ですね。

寝起きのぼんやりしたお顔はなんだか色気すら感じます。



「殿下、おはようございます。お目覚めのところ申し訳ありませんが、お離しいただけますか?」



しーん



動きません。


あら…?殿下、起きられたのですよね?

目は合っていますが…

パタパタと殿下に手を振ると、


「………!?」



唐突に目を見開き一気にベッドから飛び退かれました。体のバネがすごい…


急に熱が離れて寒さにぶるりと震えましたが、ようやく解放されたのでわたくしもベッドを降り、淑女の礼を取ります。



「改めまして、殿下、おはようございます。寝ていらっしゃるところをお邪魔して申し訳ありません」


「いや、それはいい、それはいいんだが…いやむしろ、こちらがすまなかった…。寝ぼけて、いたようだ」


頭をガシガシとかいて困惑していらっしゃるのがよくわかります。混乱しても憂いを帯びた表情でお美しいとは…美形はすごいです。それにしても少し耳がお赤いですが、寝起きでも体温がお高いのは羨ましいですね。



というか、殿下でしたらいつも綺麗な女性がたくさん周りにいらっしゃるのでしょうし、起きてすぐそこにわたくしなどの顔があったら、余計に驚かれますし不快ですよね。うんうん。



「逆にわたくしですみませんというか…」


「なに?」


「いえ。とにかく、わたくし昨夜のお礼を申し上げに参りました。ご迷惑をおかけして誠に申し訳ありませんでした」


「いや、貴方は羽根のように軽かったからそんなに手間ではなかった。というか軽すぎて心配になったほどだ。きちんと食べてるのか?」


羽根より軽いって実際に使う方いらっしゃるんですね…言っておきますが、わたくしはそこまで軽くありませんよ。平均よりは痩せ気味かと思いますが。

殿下、ひょっとしてご自分と比較してませんか?


「はぁ、朝はあまり…スープくらいで」


「それはダメだな。1日の活力は朝からだ。よし、朝食を食べるぞ」



…殿下、なんだか急にお父様みたいなことを言いだしましたね。



読んでくださりありがとうございます。

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