殿下の腕と花の種
ブクマ、評価、ありがとうございます!
嬉しいですが恐縮です…驚いております。
少しでも楽しんでいただけますと幸いです!
王妃様の部屋を辞した後、セイント・リリーフの種を見に、宝物庫までやってきました。
希少な種をどう保管すれば良いかわからず、とりあえず宝物庫に入れられたそうです。
宝物を守るため、劣化を防ぐ魔法がかけられているのだとか。
王家しか入ることが許されない場所であり、近衛隊ですら入れないのですが、花の育て主であるわたくしは特例ということで入室を許されました。
……畏れ多くて震えがきます。今直ぐ引き返したい。ぶるぶる
入り口から少し地下へと階段を降りるようです。暗くはありませんが、狭い通路を殿下と2人。
粗相を恐れるわたくしにとっては拷問に近いです。二割り増しで緊張感が高まります。
コツコツ靴音を鳴らしながら、暫し無言。
沈黙を破ったのは意外にも殿下でした。
「…そういえば、母上とは面識があったのだな。」
「はっ⁉︎はぃぃ!ゴホ、んん"ッ!…母の葬儀で一度お目にかかって以来です。母と仲が良かったと伺っております」
突然話しかけられたので驚いて声が裏返りました。ぼーっとしていたわけではありませんよ、決して。
「…そうだったか。すまない」
…母の話題を出したことに対してでしょうか?殿下に謝られると必要以上に焦ってしまいます。
「いえあの、えっと、お気になさら…ずぅっ⁉︎」
あわあわ手を振ったせいで足元を見ていませんでした。
階段を踏み外してしまい、目線が頭一つ下のところを歩く殿下に向かって激突!!!
ーーーーとはなりませんでした。
間一髪、振り返った殿下が突進するわたくしを受け止めてくださったのです。
細身の見た目より遥かにたくましい腕に支えられて、一瞬現状を忘れてドキッとしてしまいました。
が、我に帰った瞬間にサァッと血の気が引き。
デンカニモタレカカッテイル。
「ひぇぇっ⁉︎ももももも申し訳ありません!失礼致しました…!き、気を、つけます。」
今度こそ牢屋行きですか死罪ですか⁉︎
家族のみんなには迷惑をかけたくなかった…!
内心断頭台行きを覚悟しかけたところでしたが、「いや、考えればその格好では足捌きが悪いな。手を貸そう」と気にしてないような殿下。
ていうか、いま、手を貸そうって仰いました?
「へっ」
差し出された手と殿下の顔を交互に見てしまいます。言葉が脳に到達した時、わたくしは盛大に首を横に振らせていただきました。
「っいえいえいえ!畏れ多いです!!わたくしなら大丈夫ですのでッ!!」
「また転ばれて怪我でもされると困る」
あ、花の育て主が怪我をするといけないという気遣いでしたか!
そういうことでしたら断れませんね…
おずおずと手を乗せると、やんわりと握られました。剣ダコなのか、ゴツゴツとして骨ばった大きな手。当然ですがわたくしとは全然違います。
うぅ、緊張が4割り増しに…
早く宝物庫について欲しいです。
そんな心の願いが届けられたのか、ようやく重厚感のある扉の前まで来ました。
「ここだ」
重厚感のある扉に手をかざすと、ギギギ…とゆっくりと扉が開いていきます。
目に飛び込んできたのはキラキラした宝石の数々や、おそらくかなり歴史が深い逸品など様々な宝物。
「…あまりあちこち見るな。知らなくていいことまで知ってしまうかもしれないぞ」
「はい!見ません!!」
それは御免です!平和に土いじりして生きていきたいです!!
「…だからと言ってそんなに強く目を瞑られても困るんだが。ほら、これが種だ」
恐る恐る目をあけると
「ーーー!これが……」
伝説の花の種がケースに入れられていました。
許可をもらい少しだけ触れてみると…片手に乗せて余るくらい大きな楕円サイズ。見た目に比例して重さがありますね。
表面は硬く、金と茶が混じったような色合い、鈍い光沢を帯びていて、よくある花の種とは違いますが…
「……確かに、伝説で聞くセイント・リリーフの種のように見えますね」
「あぁ、シュレスタの発掘現場から宝物などに混ざって出てきた」
東側の遺跡ですか。
発掘されたということは、この種は土の中にあっても花開くことはなかったということですね。
これは、細やかに条件を整えなければ…手強そうです。
「…なるほど……わかりました。見せていただいてありがとうございます」
「すぐに取りかかれるか?」
ギョッとして殿下を凝視したのは許して頂きたいです。だって…とんでもないです!
「花を育てる前にやることがまだまだたくさんありまして…!い、急ぎますが!」
「あぁ、いや、すまない。植物に関してはまるでわからないのでな…では次は何をする?」
「実際育てる場所へ行ってもよろしいでしょうか?」
そう、現地調査です!
恋愛ジャンルなのに全然甘くならない
読んでくださりありがとうございます!




